外房で手巻きリールのマルイカ釣りチャレンジ/太海 聡丸
※掲載終了の「@niftyつり」から2014年春の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。東京湾や相模湾のイメージがあるマルイカを外房で釣ってきました。
あえて外房、鴨川のマルイカ釣りという選択肢
春になると狙える釣りものが増えてくるし、なんといっても船の上が寒くないのでウキウキしてくるわけですが、今回狙うのはマルイカでございます。前回がヤリイカで、今回がマルイカ。イカの連発です。イカ釣りの楽しさに開眼してしまったので、今後はイカしか釣りません。タイトルもイカっぽく、ゆるゆる釣り部から、ゆらゆら釣り部に改名します。いやうそです。マルイカ釣りは本当です。
そんな訳でやってきたのが、千葉の外房に位置する太海の聡丸さん。関東のマルイカ狙いといえば、相模湾とか内房あたりが定番というイメージだったのだが、外房でもマルイカって釣れるんですね。外房でヤリイカ狙いじゃなくて、あえてマルイカ狙いっていうのが、なんとなく通っぽくていいんじゃないでしょうか。まあ、好きなところにいけばいいと思いますが。
マルイカ釣りの仕掛けについて
同じイカの仲間でも、前回釣ったヤリイカと今回狙うマルイカでは、タックルがノーマルビシアジとライトビシアジくらい違ったりする。プロレスでいったらヘビーとジュニア。オールでいったら巨人と阪神。船の客層は若い人が多いみたい。
何年振りだか忘れたけれど2度目となるマルイカ釣り、前回はカワハギ用の竿を使ってアタリをとるのに苦労した覚えがあったので、思い切って某キャスティング草加店の某アリタ店長が熱く勧めるマルイカ専用竿を購入してみた。ダイワのアナリスター 73 M-150。メーカー希望価格22,400円也。早くも今年二本目の竿購入である。しかも値下げ幅の少ないニューモデル。あー。
ついでに小型電動リールも買ってしまいたいところだが、さすがにそこまで予算が回らず、手持ちの小型両軸リールでのチャレンジ。PE1号が確か200メートルくらい巻いてあるはず。いつ巻いたのかまるっきり覚えていないぜ。あー、水深が浅いといいなー。
いつぞやのワラサのジギングのときにも同行していただいたWさんは、増税前の駆け込みでシマノの小型電動を購入済み。PE1号を200メートル巻いてあるそうで、竿もマルイカ専用である。早朝(というか夜中だ)移動の睡眠不足による体力の低下を電動リールで補うという作戦だろうか(手巻きリールの私は車の中で寝ていた)。
仕掛けは幹糸とスッテが一直線になる直結仕掛けにするか、幹糸から「ト」のようにスッテを横に出す直ブラ仕掛けにするか、あるいは幹糸から数センチのエダスを出してスッテを繋ぐブランコ仕掛けにするか迷うところ。アタリのわかりやすさをとるか、バレにくさをとるかが問題だ。
久しぶりのマルイカ釣りということでいろいろ悩んだのだが、今回はアタリがわかりやすいけれどバレやすいことでおなじみの、直結仕掛けに挑戦してみることにした。せっかく外房まで来たのだから、ここは熟練のイカおやじに一歩でも近づくべく、直結で手際よくビッシビッシと決めてみたんですよ。ちなみに直結は仕掛けを作るのが簡単なので自作である。
手巻きでマルイカ、釣れるかな?
外房は現地にたどり着くまでが少し遠いけれど、ポイントは港から近いのがいいですね。数分ばかり走ったところで船は止まり、お待ちかねの釣り開始。
「水深は106メートル!」
おっと、まさかの100メートル越えである。若船長の話だと、なんでも一時期はだいぶ浅場まで上がってきたマルイカだが、最近は機嫌が悪いのか潮が悪いのか、また深場に落ちてしまったらしい。まるでヤリイカ釣りのような水深である。
この2014年に手巻きで戦うべき深さではないような気がするが、私の手にあるのは2007年に買ってからオーバーホールすらしていない手巻きリール。とりあえずオモリ50号で挑戦してみよう。
ちなみに船上で電動リールを使っているのは、半分くらいという感じなので、自分だけが不利っていう訳でもないんだよね。
さてマルイカの釣り方だが、基本的には底付近にいるはずなので、まずはオモリを着底させ、根掛かりを避けて少しだけ巻いて待つ感じだろうか。一番アタリがでるのは着底直後。このあたりはヤリイカ釣りと同じである。違うのは使っている竿の性質だ。
ヤリイカ釣りでは極先調子の竿を使っていたのだが、この日のために購入したマルイカ釣り用は、7:3調子のフニャフニャした竿。しかも適正オモリ負荷いっぱいいっぱいの50号を使っている上に、波はないけどうねりが結構あるので、竿先が常にフワンフワンと揺れている。
例えるならば、ヤリイカ用が必要なことしかしゃべらない寡黙な竿で、マルイカ用は何でもかんでも伝えてくるおしゃべりな竿という感じだろうか。雑談が多すぎて、どれが本当に必要な情報(アタリ)なのかがよくわからないよ。これで100メートル下から伝わってくるマルイカの繊細な「おさわり」を感じろと。まあ、慣れの問題なんだろうけれど。うーん。
わからないけれど、あきらめない。わからないなりにも竿先に集中していると、なんとなく船の揺れとは違う竿先の動きを感じた気がする。アタリと呼ぶには小さすぎる、いわゆる「違和感」というやつだ。フイっという感じで軽く竿先を上げて合わせると、イカの重さが加わったような、オモリの重さだけのような、うーん、微妙な重さ。いやでもやっぱり乗っているか。
直結仕掛けは糸がゆるんだり巻き上げが止まったりすると、すぐにイカがばれてしまうので、うねりに負けず、それでいて身切れを起こさない適当な一定速度でリールを巻かなくてはならない。電動リールならレバー操作ひとつでウィーンウィーンだが、手巻きでこれはなかなか厳しい。
50号のオモリを100メートル巻くというちょっとした筋トレを一日に何セットやることになるんだろうと考えながら、肩のジョイントをヒーヒー言わせつつ巻き上げる。これ明日の筋肉痛確定だわ。
これでイカが乗っていなかったらかわいそうだと思うでしょ。これが乗っていないんですよ。途中で軽くなったような気がしたので、一瞬腕の回転数が落ちた時に逃げられちゃったんだね。あー、手巻き+深場の組み合わせだと、やっぱり直結は難しいかも。
そんな私の隣では、おニューの電動リールをウィンウィンいわせているWさんが、早々に本命のマルイカをゲット。仕掛けは船の上で購入した直ブラである。やっぱり電動+直ブラが楽かねー。ちくしょう、今この場に電動リールの出張販売が来たら、迷わず買ってやるのだが。って財布にそんなお金は入っていないか。
やっぱり水深があるときは直結よりも直ブラ、あるいはブランコがいいのだろうかと悩んでいたら、お隣さんが直結仕掛けでドドーンと弁慶サイズと呼ばれるビール瓶のような大物マルイカをゲット。使っている竿は私と同じアナリスターだ。
な、なるほど、直結でもやっぱり釣れる人は釣れるみたいね。さてどうしたものか。
直結から直ブラに速攻チェンジ!
今日の目標は、マルイカを直結仕掛けで格好よく釣ることだったのだが、100メートル前後の水深、高めのうねり、手巻きリールという組み合わせでは、素人には少々難しそうである。そして私は直結素人。
そこでわざわざ夜なべして手作りしてきた直結仕掛けを猫避けのトゲトゲマットに巻き取って、2009年限定のシールが張られた年代ものの直ブラ仕掛けにチェンジ。2007年のリールに2009年の仕掛けである。パソコンだったらとっくに買い替え時だが、ワインだったらたぶん飲みごろ。ハリスが弱っていないといいけれど。
そしてやってきたファーストマルイカ!
オモリをポーンと投げたら、少しでも早く着底するように竿先を下に向けつつ、10メートルごとに色が変わるPEラインが何メートル出たのかを数え、水深と同じくらい糸が出たところで親指でブレーキを軽くかけて、糸が弛まないようにそっと底をとる。
そして素早くちょこっとだけオモリを浮かせたら、ちょっと止めて様子を見て、そこからなるべくスローモーションで竿先を上げていく。止める時間や上げる速度など、誘い方は人それぞれだけど、なにはともあれ一番集中すべきはこの着底直後のサービスタイムなのである。
食べ放題のレストランで、運ばれてきたばかりのアツアツの料理にお客が群がるのとたぶん一緒だ。冷めてしまったらお客はこない。
穂先のガイドに穴が開くほど(開いてるか)集中して竿先を見ていると、モヤモヤっとした乗りを確認。スッと合わせるとはっきりとした乗りを確認。巻きあげるといい感じの重さを確認。よし、よし、よし。
さすがは直結よりもバレにくい直ブラ仕掛けだけあって、モタモタとした不安定な手巻きでも、無事に海面までイカが上がってきてくれた。一瞬どうやってとりこんだらいいのかわからなくなってパニックになったが、なんとか仕掛けを絡ませながらもキャッチ。あー、あせった。そして疲れた。
うん、マルイカ釣り、水深100メートルでも手巻きでいけるじゃないですか。快適なのかと言われると、正直肩と腕が痛いけれど、それでも新しい竿のおかげでアタリもなんとなくわかるし、直ブラだったらバレも少ない。
電動リールでグウィーンと巻き上げるヤリイカも楽しいけれど、手巻きのマルイカもやっぱり楽しい。これで水深とオモリの重さが半分ずつになってくれたら完璧なのだが、まあこれはこれでいい意味で修行っぽくて嫌いではない。いい意味で!
アタリをとるのがとても楽しい
しばらく夢中になってマルイカ釣りをやっていると、この買ったばかりのアナリスターマルイカという竿の特徴というか使い方が、なんとなくわかってきた気がする。この竿、いいな。
感度が良すぎておしゃべりが多すぎるなんて思ったのだが、よーく話を聞いてあげれば、ちゃんと必要な情報を伝えてくれる素直な竿だ。竿と言葉が通じるようになってきた気がする。この船だけでも4人くらいが使っており、値段の割りには感度がいいと評判なのもよくわかる(私にしてはまあまあ高いが)。
竿の特徴さえつかむことができれば、あとはマルイカのアタリに慣れるだけ。まあこれが一番大変なんだけど。イカ釣り独特のモヤモヤしたアタリに慣れるためには、何度も乗船して数をこなすしかないのだけれど、数時間でもそこそこであれば成長できる。そしてその成長がうれしいんだよね。
イカが小さい場合、合わせた時に乗ったのか、乗っていないのかが分かりにくいが、竿を持ち上げたときの曲がりを見ていれば、柔らかい竿なので答えははっきりと出てくれる。うん、いい竿だ。多少のうねりなら吸収してくれるのもナイスポイント。今度はこの竿でライトアジかイシモチでもやってみようかな。たぶん最強。いっそライトマダイでもいいかもね。
まあアタリがとれれば順調に釣れるというものでもなく、スッテに墨を吐いて逃げられたり、巻き上げ中に切れてゲソだけが釣れたりもしてしまうのだが、このあたりも修行次第ですかね。マルイカはスルメイカやヤリイカに比べて身が柔らかいみたい。この柔らかさが、食べた時のうまさにつながるんだろうけどさ。
船長に言わせると、「アタリがある前に合わせる」くらいじゃないと、マルイカを攻略するのは難しいようだ。なんだそれは、超能力か。いやイカがスッテを放すときの大きなアタリではなく、触った瞬間の小さなアタリをとれっていうことなんだろうけれど、これがなかなか難しいのよ。まあ、だからこそおもしろいんだけどさ。
そして取り込みの際に、体が自然と動くようになると、これもまた気持ちがいい。なんだかダンスの振り付けを覚えた気分だ。コツは左手で幹糸を掴んだら、右手でスッテを掴むことかな。レッツ、ステップ!
やっぱり直結仕掛けで釣ってみたい
おニューの竿の扱いにもどうにか慣れて、お土産用の釣果を確保したところで油断をしたのか、根掛かりした仕掛けを強引に引っ張ったら、まさかの高切れで仕掛け一式サヨウナラ。きゃー。
うーん、いつ巻きなおしたのかまったく覚えていないPE1号の道糸は、2009年のフロロカーボン5号よりも弱かったか。幸い200メートル巻いてあったので、どうにか道糸は足りるようだけど。
さてせっかくなので、ここで仕掛けを直結に戻してみようかな。やっぱり一杯くらいは直結仕掛けで引っ掛けたい。一杯引っ掛けるって、なんだかいい響きだしね。
気合を入れなおして直結仕掛けを海に投入。しかしあれだ、あれあれ、あれれのれ。ちょうどイカの乗りが悪くなったタイミングということもあって、これが全然釣れてくれない。そしてたまに掛かったかなと思っても、巻いているうちにいつの間にか軽くなって、がんばって上げてもなにも付いてこなくて疲労倍増。二倍!二倍!(高見山のモノマネで)
仕掛けを5回上げ下ろししたところで、直結を諦めて直ブラ仕掛けを付け直す。うん、直結仕掛けはもうちょっと水深が浅くなったときに、再チャレンジといたしましょうかね。臨機応変ということで。
本日の結果発表
釣りにおける個人的な目標は、初めての釣りものなら竿頭の半分の半分(竿頭半々と呼ぶ)、そして二回目以降は竿頭の半分(竿頭半)を合格ラインとしている。私はマルイカ釣りが二回目で、前回の釣りはヤリイカ釣り。これはぜひとも夢の竿頭半を達成せねばいけないところ。
前日は好調で50杯以上釣れていたようだが、この日はうねりの影響もありイカの機嫌が悪かったようで、竿頭の方で20杯とあまり伸びなかった。それに対して私の釣果はというと、ムギイカが1杯混ざってのトータル10杯。ギリギリ合格というところだろうか。
手巻きリールのイカ釣り初心者でも、竿がいいやつだと十分戦えることが証明できたかな。マルイカ用の竿がない場合は、カワハギ用よりもキス竿みたいな竿の方が、フワッとしたアタリはとりやすいかもしれない。
そんな感じで条件があまり良くない中でも楽しめたマルイカ釣りだが、今シーズン中にまた竿を出して、今度こそは直結仕掛けでバシバシっとマルイカを仕留めてやりたいかな。
マルイカ釣りに限った話ではないけれど、釣りって行けばいくほど課題が見つかって面白いですね。100回いったら100通りのドラマがあるなあと、今更ながらに思う訳ですよ。
さて次の釣りはなんですかねー。