15:ノビルを干して保存してみる
先日、佐渡島で山菜採りに連れていってくれた方から興味深い話を聞いた。昔はその辺で抜いたノビルやアサツキなど干しておき、冬の間に食べたのだそうだ。
そのときは立ち話程度だったので詳しいことは聞かなかったのだが、おそらく雪に覆われてしまう前に収穫して、葉っぱの部分を軒下などに縛っておいたのだろう。
よくタマネギやニンニクでやる保存方法だが、それをノビルやアサツキといった野草でやるという発想はなかった。
これは秋から冬にかけての話なのでかなり時期が違うのだが、ノビルで忘れる前にやってみようと、五月上旬にすでに葉部分が固くなってきているノビルを抜いてきた。
それを洗濯物を干す場所にぶら下げる。ポールに縛ってもいいのだが、面倒なので二つ折りにして洗濯ばさみで止めた。
そして冬まで待たずに二十日後、カラカラに乾いたノビルを剥いてみると、パチンコ玉のように渋く輝いていた。
これは硬くて食べられないかなと思ったが、皮を剥いてみるとどうにかなりそうな感じ。茎部分はさすがに硬いので廃棄。
おそらくこれを野菜が収穫できない冬の間に、薬味やつまみとして利用したのだろう。冬の佐渡ならブリやタラと合わせたのだろうが、この時期なので旬のカツオと合わせてみたのだが、これが抜群だった。
刻めば硬さはそんなに気にならず、ニンニクほど刺激が支配的でもなく、まさに薬味の王道といった存在なのである。
玉のままかじると、ガリっという気持ちの良い歯ごたえと共に、口の中一杯にノビル独特の鮮烈な風味が広がり、これもまた堪らない。日本酒や焼酎と相性ぴったり。
ノビルは春先の柔らかい時期が旬だとばかり思っていたが、玉が固くなってからもこんな利用方法があったとは。
秋になったらまたノビルを掘ってきて、今度こそ冬になるのを待ち、雪が降った日にでも、佐渡のブリと日本酒を用意して、一緒に食べてみたいと思う。タラチリなどに入れても良さそうだ。