手ぶら&電車でいける船からのマダコ釣り/新明丸
※掲載終了の「@niftyつり」から2011年6月6日の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。今回は東京湾伝統のテンヤを使ったタコ釣りです。最近はエギばっかりですが、テンヤの釣りもいいですよ。
防波堤で釣れなかったので、船でリベンジします
先日、房総半島の南の方で、防波堤から餌木でタコを釣るべく一日がんばったのだが、釣れたのは同行者だけで私の釣果はゼロ。久しぶりの本命不発という緊急事態に、これはすぐにリベンジせねばと向かった先は、横浜の鶴見にある新明丸だった。
はいそこ、「えー」とかいわない。だってほら、何度かチャレンジすれば防波堤からでも絶対に釣れると思うのだけれど、埼玉から海にいくのってなかなか大変なんだよね。また釣れなかったら悲しいじゃない。そこでタコが釣れる可能性をグーンとアップさせるために、とりあえず乗合船での再挑戦となったのである。
二回目のタコ釣り、TAKE 2ならぬTAKO 2ということで二匹釣らなきゃ。陸からでも船からでも、釣れるタコに貴賎ナシ。恋愛結婚じゃなきゃイヤだといっていた友人も、先日婚活合コンに参加したみたいだしね。
JR鶴見駅・京急鶴見駅から歩いてこれる場所にある。埼玉の我が家からでも電車で来られる貴重な船宿だ。もちろん駐車場もあるよ。
船長とおかみさん。
さて一言でタコ釣りにといっても、船でのタコ釣りは防波堤から餌木で狙う方法とはまるっきり違う釣り。というか、他の釣り全般と比べても、共通する道具がほとんどないという独特の釣り。さっきタコ釣りリベンジとかいったけど、目的こそ同じだけど、もはや別の競技なのだ。
そんな特殊な釣りだけに、船宿側でレンタル道具を用意しているそうなので、自前の竿やリールをなにも持ってこなかった。タコは沖上がりまで活かしておけるので、クーラーもボックスではなく100円ショップで買ったクーラーバッグ。荷物が少なくて済むので、タコは電車釣行に最適の釣りなのである。
また普通の釣りとあまりにも違うので、釣りをやったことがない人でもベテランと対等に戦える釣りなのかもしれない。運命のいたずらでどうしても強敵(ライバル)と釣り対決をしなくてはならなくなった場合、タコ釣りという手段があることを覚えておくといいだろう。
受付で50号のテンヤというものを買います。必要な仕掛けはこれだけ。
船は近くの運河にあるよ。
たこ!
タコ釣りの仕掛けはシンプル
イイダコを釣るエサはラッキョウだが、マダコを狙う場合はイシガニとなる。干潟で遊んでいるとたまに見かける大きめのカニだ。これを先ほど購入したテンヤに輪ゴムでしばりつけ、タコ釣りというより凧揚げで使いそうな糸巻きに巻かれた太い糸(無料で貸してもらえる)に結んだら準備完了。
このザリガニ釣りみたいシンプルな仕掛けを使って、竿を使わずに手で釣るのである。
イシガニは小ぶりなものがいいそうです。でも大きいのを選びたくなる。
お前に決めた!
カニの付け方なんて当然知らないのでベテラン客に教わる。
腹側を上にすることと、カニの位置を針から少し離すことがポイントだそうだ。詳しくは船長や常連さんに聞いて。
これが基本のセット。ザ・シンプル。
基本的にはこれだけで十分なのだが、テンヤの30~100センチ上に、なにかビラビラしたものをつけて、タコにアピールするのが最近のトレンドとの情報を某釣り具屋の店員さんから事前に聞いていたので、ダメになったクーラーバックを切って糸で縛っただけという廃物利用のビラビラをセッティングしてみようか。廃物利用なのでエコだ。エギならぬエコでタコを釣る訳だ。
宇宙タコ襲来のイメージ。どちらかというとタコがびっくりして逃げそうな気もするな。
乗船している常連さん達も「気持ちの問題だよー」とか「お守りだよねー」と、その効果については半信半疑のようだが、各自お手製のビラビラをつけている。他の人が付けていたら、自分も付けたくなっちゃうよね。
付け方は、道糸の先にあるスナップにビラビラをつけて、そこから持参した8号(もっと太い方がいいかな)のハリスをつなげて、そこにテンヤをぶら下げるだけ。結び方はタコだけにエイトノットがいいでしょう(適当)。
今回のカメラマンは初登場の坂祐次さん。元バスプロのプロカメラマン。
こちらはビラビラなしのシンプル仕掛けで挑戦。
手釣りなのでドッヂボールで骨を折るような人(私)は、なにか指をカバーするものがあるといいですよ。
いきなりタコが釣れてしまった
タコ釣りのシーズンは夏。六月上旬なのでまだまだシーズン序盤ということもあってか、釣り場までの移動時間は1時間とちょっと長め。まずは水深20~30メートルの千葉寄りのポイントでのスタートとなった。ハイシーズンになるにつれて、どんどんポイントが近く、浅くなっていくものらしい。
釣り方は仕掛け同様にシンプルで、まず海底までテンヤを落としたら、道糸を効き腕の親指と人差し指でつまんでチョコチョコと動かして、底にあるテンヤを動かし続ける。動かすテンポは人それぞれだが、リズムでいうと「あなたのお名前なんてーのー」くらいと、想像していたよりもちょっと早めの人が多いようだ。あるいは木魚。
テンヤが常に底に付いた状態でパタパタと誘うのが基本のようだが、たまに大きくカラあわせをして、フワフワと落としなおすのも有効だとか。
タコがテンヤに乗るモタっとした感覚があったら、完全に乗るまで一呼吸置き(具体的にいうと2~5秒くらいで活性にあわせる)、大きくアワセを入れて一気に手繰る。このとき、手繰った糸は糸巻きに巻かないで、どんどん足元に落としていく。これはポイント移動するときなども同じ。この糸はかなり太いので、そうそうはオマツリしないようだ。抜き上げるときは、タコが船にへばりつかないように注意すること。
この、誘う、合わせる、手繰るという独特の動作を、前から一度やってみたかったのだ。
「タコはけっこう初心者の方が釣るんだよねー」という常連さんの言葉にちょっと浮かれながらのスタート。
クイクイっと誘う。誘う手の位置は低くないと、大きな合わせができない。
適当な音楽を頭の中で再生させながら、ヒョンヒョンと浮き上がらない程度の強さで小突き続ける。
なるほど、こういう釣りなのか。っと思ったらテンヤが重くなった。一瞬溜めてから、エイホ!エイホ!
どうせまた海藻だろうな……
と思ったら、まさかの船中一杯目!
みんなの視線を集めちゃうぜ!
びっくりした。一投目でいきなりのタコゲット。防波堤で一日投げて叶わなかった夢が、ものの数分で達成されてしまった。
船、すげえ。いや、もしかしたら俺がモテ期に突入したのかもしれない。タコの。今なら防波堤からでも釣れるような気がするよね。
釣れたタコは洗濯用ネットに入れるのがオススメです。
船中でポツポツと釣れるタコ
いきなり一投目から本命のタコが釣れてしまった。俺って実はタコ釣りの天才なのでは。ジーニアス。ということは次に釣れるのは沈没船の中で宝箱を守っているクラスの大物。このままいったらクーラーバッグに入りきらないぜよ。なんて心配をしたのだが、タコなんて一日にそう何杯も釣れる獲物ではないですよねー。
一杯釣って安心してしまったということはないのだけれど、その後はしばらく釣果なし。たまに重くなったかなと思っても、巻き上げている途中で軽くなってしまうというが数回。すごく絶望するやつ。これってやっぱり途中でタコが外れてしまっているということだよね。合わせのタイミングがあっていないのかな。
エサをとられるとか、外道が釣れるということがまずない釣りなので、根掛かりに注意しながらヒョコヒョコと誘い続けるだけという、若干修行の匂いがする釣りである。誘う手つきがだんだん木魚を叩いているみたいになってきた。ポクポクポク。
この日はタコの活性が低いようだが、それでもポツリポツリと周りで釣れている。今シーズンは小型が多く、たまに大型が混ざってくるのが特徴で、そういう年は長く釣り続く傾向にあるらしいぞ。
この日は片舷に集まっての釣りとなった。みんな並んでポクポクポク。
お隣さんが食べごろサイズを引っこ抜く。チーン。
こちらの方に「イシナギ釣りで一緒になったよね」といわれてびっくり。確かに!
「もっと大きいのが釣れた時に撮ってよ~」
ビラビラなしのカメラマン坂さんもゲット。
飽きた……訳じゃないですよ。景色を楽しんでいるだけですよ。よそ見をしてもできる釣りなのさ。
いろいろと工夫をしてみる
このタコ釣り、仕掛けがシンプルなだけに工夫の余地があまりない。だからこそ初心者でもベテランと変わらぬ釣果を得られる可能性があるのだが、やはり少しはオリジナルの要素を入れて違いを出したいというのが釣り人の人情。仕掛けに差がなからこそ出る性(さが)。
そこでみんなテンヤの上に付けるビラビラにこだわりだすのだが、カラス避けみたいなギラギラした紐だったり、鯉のぼりに付ける吹き流し風だったり、ビニール紐を束ねて細く裂いたものだったり。
私は壊れたクーラーバッグを使って「宇宙タコ襲来」をイメージしたビラビラを使っていたのだが、ここで「幸せの黄色いビラビラ」にビラビラチェンジ。荷造り用のビニール紐を束ねただけだが、きっと今日のラッキーカラーはビラビライエロー。BGMはビランビラン(デュランデュラン)。
タコにとって、これが何に見えるのかが謎ですがね。
さらにカニ本体も輝いてもらおうと、ギンギラギンにさりげなく着飾ってもらった。
これで効果があれば有益な記事となったのだが、残念ながら効果はまったく認められず。でかいビラビラは潮の抵抗が大きくてアタリがわかりにくくなるのでよくないね(ある意味有益な情報だ)。カニにつけた銀色の飾りも、やっぱり不自然過ぎたかな。
こんな試行錯誤を繰り返している横で、なにも飾りをつけていない一番シンプルな仕掛けの坂さんがポンポンと連続ヒット。しかも小突くのを数秒に一回だけにして、タコがやってくるのを待つという戦法だそうだ。
タコの活性が低いときは地味な仕掛けを使って、誘いも少なめにするのが効果的な場合もあるようである。タコ釣り、シンプルなだけに奥が深い。
いいなー。
そして私のテンヤには、得体のしれない生物X。
根掛かりがとれない場合は、糸を張って船にある木に巻きつける。船の動きでテンヤが外れるか糸が切れるよ。
使っているうちに針先が甘くなってしまうので、シャープナーを持っていくといいかも。
餌木で誘うというのはどうだろう
誘い方を変えてみたり、ビラビラの色や付ける位置、大きさを変えてみたりするものの、時間だけが過ぎていく。野球でいったらスミイチ(一回に1点だけしか入らない試合)の展開である。いや、対戦相手が坂さんだとすると、普通に逆転されているか。いや、釣りは誰かと競うのではなく、自分との闘いだからいいんだよ。って一人で何をブツブツいっているんだ俺。
よし、わかった。タコを誘うのだったら手作りのビラビラよりも、いっそ餌木を使ってしまうというのはどうだろう。ちょうど前回のタコ釣りで海藻しか釣れなかった餌木が手元にあるし。若干縁起が悪いけど。これで餌木とテンヤにダブルヒットとかしちゃうんじゃないの。アオリイカでもどんとこいだ。でも本当は餌木じゃなくて浮力のなるスッテのほうがいいかも。
ハリス部分もエギにタコが届くように、ちょっと短めにしてみた。
「そんなのなくても釣れるよー」と語るタコ仮面。
エギ with テンヤという、タコ釣りというよりはスミイカ釣りみたいな仕掛けでがんばること30分、ようやく本日二杯目を無事ゲット。実は友人たちにタコ刺しパーティー(タコ焼きではない)をしようと誘ってしまっていたので、釣れなかったらどうしようと焦っていたところなのだ。
しかし、この仕掛けに変えてから30分掛かってから釣れたので、餌木に効果があるのかないのかよくわからんね。まあやっぱり、「お守り」っていうことなのかな。でもどうせお守りを付けるのなら、自分が信じられるお守りが欲しいよねー。
餌木のほうに掛かってくれたら効果がわかりやすいのだが。
やっぱり30分掛かったとしても、釣れたことには変わりないのだがら餌木に効果があったんじゃないかなと思いながらの次の投入、ぐっと感じる重量感が到来。これは一番の大物と手繰り寄せるも、途中でフワッと軽くなった。ひゃー。
天を仰ぐと自衛隊のヘリコプターがパタパタと飛んでいた。お疲れ様でございます。
一応餌の状態をチェックしようかとテンヤをあげてみると、なんとタコの足が一本引っ掛かっていた。あー、惜しい。って思ったけどよくみたらアカクラゲの触手だった。全然惜しくないし。そうか、エギみたいにハリのあるものだと、こういうリスクがあるのね。いやでもタコもいたと思うんだよな。
餌木の針にアカクラゲの触手がしっかりと絡まってしまった。これが目に入ると痛いのよ。素手で触っちゃだめよ。
後半戦は、積極的に誘った人にアタリが多かったみたい。ナイスタコ!
その後は仕掛けを最初のものに戻して、沖上がり直前に一杯追加で合計3杯。ちなみに最後までビラビラをつけなかった坂さんは4杯。この日の釣果は3~6杯なので、私が裾でございます。あー、大ダコ釣りたかったなー。
タコがテンヤに乗った感触自体は10回近くあったので(気のせいを含む)、次にやったらもうちょっと釣れそうな気もする。でも次もどんなビラビラを使うかで、また延々迷うんだろうな。まあ、こうやって悩むのも楽しいんだけれどね。
タコ釣りは単調な作業の連続なので好き嫌いが分かれそうな釣りだけれど、海底からタコを引きはがす感覚、糸から直接手に伝わってくる重量感、活きたタコの吸盤が手に吸いついてくる感覚は、他の釣りにはない大きな魅力。一度は経験することをおすすめしますよ。
どうせならスミを吐いてほしかったぜ。
飲み会にタコを持ちこむと人気者になれるかも。この夏のモテアイテムです。
小さめのタコが多かったけれど、その分柔らかくておいしかった!