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Team申 第5回本公演『君子無朋(くんしにともなし) ~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』を見て

自分が人生を歩んでいくなかで、『どうしてもこの人には勝てないなぁ』『この人どうやったらこうなったんだ?』『この人はどうしてこんなことができるんだ!?』と思う方が何人かいらっしゃる。

そのうちの一人に、「ズームバック×オチアイ」をともに制作させていただいた阿部修英さんがいる。阿部さんは「ズームバック×オチアイ」の時は、総合演出。自分は、ADであった。(のちに「朗読LIVEショー 140字のキセキ」もともに担当させていただきます。)

その阿部さんが初めて戯曲を書き、それを佐々木蔵之介さんが主宰する演劇ユニット『Team申』が11年ぶりとなる公演した、それが『君子無朋(くんしにともなし)~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』である。

2021年7月25日 13時。私は、この公演を見に行った。


阿部さんという人

「近年の目まぐるしい変化で、中国に戸惑う人も多い日本。 しかし、中華はいつもそばにある。たとえば漢字。“君子無朋”と4文字書くだけでドラマが立ち上がるのは、深い縁の証だ。“君子無朋”は雍正帝が即位初年度に掲げた強烈な宣言。億の民と広大な地を背負い、失敗すれば革命で首が飛ぶ。究極のタイトロープに立ちながら、“ともなどいらない”と宣言した彼。それは昨今のポピュリズムへの問いとしても響く。そう、雍正帝は極めて現代的な人物だ。舞台は270年前、徳川吉宗の時代。暴れん坊将軍も真っ青の「暴君」を演じる佐々木さん。旅をご一緒し雍正帝と「重なる」姿を見た。そう、ただの暴君では終わらない。現代性そして中華との深い縁を感じながらぜひご覧下さい」(阿部修英さんのコメント引用【https://news.yahoo.co.jp/articles/2e6c52578be13bf26450398e18600b52bbc563ab】)

「ズームバック×オチアイ」の仕上げ作業。自分は最強オペレーターさんの技に見入って、ただただ画面を茫然と眺めていた。その横を見ると、何やら分厚い冊子を阿部さんが何度も読み返しては書きをしている。そう、この分厚い冊子こそ「君子朋無」の台本。仕上げ作業をワーッと追い詰めてるなか、同時並行で阿部さんは台本作業をこなしていたのだ。

阿部さんのすごいところ「① 文章を作り上げていくスピード」。阿部さんはマジで構成したり文章作ったりするのが早い。この舞台関係の文章も色々見てると、すごい量が出てくる。日々の制作業務傍ら、なぜここまで色々なものが書けてかつ発信できるのか私は知りたい。

阿部さんのすごいところ「② めっちゃ早い判断力・処理能力」。これは①に通じるところもあるのかもしれないが、判断スピードが早い。困ってることを阿部さんに伝えにいくと、こうした方がいいのでは?と案をくださったり、一緒に調べて別案を提示してくださる。自分自身がけっこうとろくて、かつマイペース、アンド自分がわりと納得しないと次に進めない性分なので、足引っ張ってないかなぁとどこか不安になりつつ、一方どこかで気持ちは安堵している。

阿部さんのすごいところ「③ (プロデューサーだけど)けっこう現場にコミットしてるところ」。今まで何人かのプロデューサーさんとお仕事してきましたが、阿部さんはけっこう現場を助けてくださる。自分が幾度かADの仕事をしていて、「終わった...。これ以上無理だ...。」と思った時も、阿部さんがこうしたら?と具体的な提案を提示してくださる。それADの仕事だから...と介入されない方もいらっしゃいますが、阿部さんには幾度か助けていただいたことがあり、自分はなんとか仕事ができた。

阿部さんのすごいところ「④ 仲間を大事にする」。阿部さんと前に仕事をしていたという元ADさんから「阿部さんって全然怒らないでしょ?」って言われたことがある。そう、こんなにとろい自分にも一切怒らず、ふとした時に褒めてくださります。すごい人にはちゃんと面と向かってすごいっていいます。そこにたぶん嘘偽りはなくて、本当にすごいって思っているからこそ、素直にすごいとちゃんと言えるんだろうなと思っています。本当にすごいです。


終始ドキドキの公演 【ネタバレしないように頑張ります】

さてさて長くなりましたが、今回の公演について。。。

そもそも、劇場で公演を見たのは何年ぶりのことだっただろうか...。そもそもプロの公演を劇場で私は見たことあるのか...。

昨今コロナの影響で、『リアル』がかなり枯渇している。ライブもイベントもできなかったり、縮小したりだった。本当にすごい『リアル』はドキドキする。そんなドキドキを私は最後にいつ体験したのだろうか...。

この公演は『終始ドキドキ』していた。次が見たいと引っ張られ続けていた。美しいものを見ると、心が浄化されるというが「浄化された」。

細部まで美しい装飾。引き込まれる照明と音。(実は愛ある)辛辣さ、笑い、涙。この気持ちと場面の落差がとても心地よかった。

私的には雍正帝を演じた佐々木蔵之介さんの演技に魅入ってしまった。「えっ、美しすぎませんか?」心の中で何回叫んだだろうか。気がついたら、雍正帝の(実は愛ある)辛辣さ・笑い・涙に完全に巻き込まれていた。孤高の上に纏う色気がなんだかやばかった。

中国関係の話は(ましてや歴史)私はあまり接してこなかった分野だ。地理的には近いようでどこか遠い印象だった。国や時代、皇帝の名前も超危ういなかで、私は本当に楽しめるのだろうかというのが見る前の本音だった。

でも、全くその気持ちは関係なかった。歴史番組やってても思ったが、歴史が苦手でも解釈し気持ちを入れて演出した作品は心に残る。どこか時代の1点でもいい。それを丁寧に見て理解し覚えれば、歴史の世界は自ずと広がる。私も学生時代にこれに気がつけていれば、また違った人生だっただろうなと思う。この日から中国の歴史の扉が少し開いたように感じた。


リーダーというのは難しい。公演終わりにたまたまお世話になっているAPさんと同じ回を見ていたことがわかり、合流をしてお茶をしに行ったのだが、そのAPさんから一言。「阿部さんが描く雍正帝がどことなく落合陽一さんの感じもした!」と話していた。

もしかすると原稿を書いていた時期もあるから?とか思ったりもしていたわけだが、阿部さんの下記のツイートに答えがあるような気がしていた。

私には現場にコミットする阿部さんの姿こそ、どこか雍正帝のように見えた部分もあったのかもしれない。

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