![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41967286/rectangle_large_type_2_ffe176ba35de614b68d02199bde89fcb.jpg?width=1200)
12人の自宅に並べた24000個のドミノをリモートで全部倒す
今年はリモートのイベントが増えた。自宅から参加できるのは便利で、お酒がむしろ進んで。案外悪くないかもなんて。
でもなんか....
リアルでイベントを行った時に身体が震える高揚感、一体感、バイブス。そういった身体感覚が、どうしてもオンラインだと欠けてしまう。うちの会社のイベントでもテレビみたいな演出を入れてみたり、双方向の仕掛けを凝らしてみたり、いろいろやってみるけど、やっぱりなにかが足りない気がする。
そんなことを思いながらぼうっとYoutubeを眺めていると、とある動画が流れてきた。それを見て脊髄に稲妻が走った。それが、
である。
ドミノが倒れる爽快感。倒れないかもしれない緊張感。倒れた時の歓喜。倒れなかった時の悲鳴。膨大な時間と汗が注ぎ込まれた造形物が一瞬にして崩れゆく儚さ。見ているこっちまで手に汗握ってしまう。
これ、やりたい。ドミノ、やりたい。
だから会社のリモート忘年会で、リモートでドミノ倒しをすることにした。
1. リモートでドミノを倒す
リモートでドミノを倒すとはどういうことか。まずある地点Aにドミノを並べる。その場所で最後のドミノが倒れ終わったら、異なる地点Bで最初のドミノが倒れ始める。これにより、遠隔でもドミノ倒しが実現する。この仕組みを以降「リモートドミノ」と呼ぶことにしよう。今回、リモートドミノの開発には社内のエンジニア3名が力を貸してくれた。
リモートドミノの鍵は2つある。1つは「スイッチボット」というIoT機器だ。遠隔操作で家電のスイッチを入れたり、カーテンを開閉したりするための装置である。
スイッチボットWebサイトより
このウニョっとした動きを、ドミノを倒すのに利用するのだ。
スイッチボットでドミノを倒すイメージ
2.会計ソフトでドミノを倒す
もう1つの鍵は、「スイッチボットの起動順をどうやって制御するのか?」という点だ。地点Aが終了したらB、Bが終了したらC..のように、その順番を思い通りに操りたい。
ところでうちの会社は「freee」という会計ソフトを提供している。どうせなら自社製品も活用したい。会計ソフトでドミノを倒すのだ。会計ソフトは仕訳や決算をするだけでなく、ドミノ倒しにも使えるのである。
今回、「会計freee」に付属している「ワークフロー」という機能を活用する。
ワークフローとは申請・承認のための機能だ。例えば経費やりん議などを、現場から上長に承認してもらうために使う。
ポイントはこの時に「承認経路」という順番を自由に設定できることだ。上司が承認したら次は経理が承認、最後は社長が承認...といった風に、承認者の順番をカスタマイズして設定できるのだ。あ、これドミノに使える。
つまり地点A,B,Cを、承認者A,B,Cとして設定すればいい。これにより地点Aでドミノが倒れ終わったら裏側でワークフローが走り、次の承認地点Bのスイッチボットが倒れ始める。承認地点Bが終わったら、承認地点C。
freeeのワークフローは15段階まで承認経路が組めるので、最大15箇所をつなぐことができる。なんてドミノ向きの機能なんだ。
参考:裏側の仕組みとして、会計freeeのPublic APIとして公開されているワークフローのWebhookを利用している。Webhookを設定することで、申請を外部のAPI(今回であればスイッチボットのAPI)に通知することができる。
また各拠点でドミノが倒れ終わったという合図は、ドミノで物理的にPCのエンターキーを押すことで実現した。ここだけめっちゃアナログだ。
3. 全12拠点から生中継する
さて、肝心のどういうドミノを作るか?については、忘年会ということで、ドミノで1月〜12月までの各月を振り返ることにした。そのために12人の有志をつのり、各月を割り振り、自宅で思い思いのドミノを並べてもらうことになった。
合計24000個のドミノをレンタルして、各自宅で色々な仕掛けを凝らしていく。途中で「日本ドミノ協会」からドミノに関するレクチャーを受けて、その奥深さに感銘を受けたりした。テレビのドミノ企画には全てこの協会が関わっているらしい。
ドミノ協会の講習を受ける様子。ドミノの間隔は1cmがベストらしい
さらに今回、この企画を全社に向けて生中継することにした。リモートイベントに足りない一体感を補うためには、やはり生中継に限る。などと思いつきで決めたところこれが非常に複雑で、中継は困難を極めた。なんせ12拠点をまたぐ生中継である。東京だけではなく北陸や鹿児島など、その拠点は全国に広がっている。
各メンバーにスマホからオンライン会議ツールのGoogle Meetsへ入ってもらい、自宅の様子を中継してもらう。中継センターではOBS(ライブ配信ツール)を駆使しながら各中継をドミノが倒れる順番に切り替えていく。中継がフリーズしたり、スイッチボットが動かなかったり、部屋の猫がドミノを倒したりなど、10回以上重ねたリハーサルでは結局一度も成功することはなかった。
リハで猫がドミノを倒して頭を抱える筆者
4. そして当日...
当日、リモートで始まった忘年会を楽しむ余裕などなく、酒を飲んでも緊張で酔いが回らず、何度も流れの確認をする。直前で地震が起こってドミノが倒れてしまうなどのトラブルに逢いながらも、ついにそのときが来た。
リモートドミノの開発リーダーが、ワークフローから申請を出す。申請のタイトルは「2020年終了申請」だ。
いろいろなことがあった1年だったけど、この申請を12人のドミノが承認することで、無事今年を納められる気がする。
申請、スタート。
最初の地点である「1月」のメンバーの自宅では...
ドミノが倒れ始めた...!
リモートドミノの始まりだ!
ドミノはすごい勢いで倒れていく。「部門」という文字が見えるが、freeeでは1月に「部門別仕訳連携」という名前の機能がリリースされたので、それを表現したドミノである。
そして1月が終わり、2月担当者の自宅のドミノが....
また倒れ始めた。いける。リモートドミノ、いけるよ!
2月が終わったら3月、4月へと次々ドミノが倒れ、裏側でワークフロー機能が作動していく。各月、個性溢れるドミノが倒れる。
今年の流行語大賞はこれでしたね...
キャッシュレス化が進んだ年なので逆にATMがドミノを倒したり...
ハンコが話題になった年でもありました....
そして12月のドミノが倒れ終わった...。
承認経路通りに、全てのドミノが倒れ終わった。仕組みは全てうまく起動し、見事12ヶ月を順番につなげた。オンラインではコメントの嵐が飛び交い、聞こえないはずの歓声が爆発する。2020年にずっと足りないと思っていた「なにか」が、リモート上に確かに充満していた。
そして僕たちをつなぐドミノは、最後に本社のオフィスへと向かう。
いけええええええええええ
2020年...
おらああああああああああああ
2020年、完!!!
良いお年を!!!!!
------------ おまけ ------------
12人の自宅をリモートドミノでつないだ様子をまとめました pic.twitter.com/wZclcd6URr
— 岡田 悠 『0メートルの旅』発売開始 (@YuuuO) December 31, 2020
いいなと思ったら応援しよう!
![岡田 悠](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/19347939/profile_99feed108b74db351f84176085b9e2f0.jpg?width=600&crop=1:1,smart)