【続編】寿司クーポンの3年間について本物の担当者に真実を聞いた
先日、noteで記事を書いた。
近所の寿司屋「魚がし日本一」のLINEクーポンを3年間記録するという内容で、お陰様で多くの方々に読んで頂き、オモコロ杯という記事コンテストでも優勝してしまった。全ては寿司の力であり、僕は寿司に生かされている。
様々な反響があった中で、特に驚いたのは魚がし日本一の公式アカウントから連絡がきて、
お礼として「食べ放題」の特別クーポンを頂いてしまったことだ。
元記事ではオチにスシローを使っていたのに、なんて懐の深い寿司屋なんだ。
そんなわけで既にこの研究は十分報われたわけだが、一方で僕の中の好奇心が、またゆっくりと頭をもたげた。
「自分の分析が合っていたのか、答え合わせをしたい...!」
3年間に及ぶ記録はクーポンのサイクルを「王朝」に見立て、それぞれの特徴や背景を分析した。
その時、実際にはどのような意思決定が行われていたのか?
どうやってサイクルが変化していったのか?
そして僕にとって衝撃の結末となった「最後の日」は何故起こったのか?
「もし可能なら、クーポン担当のお話を聞いてみたいです。」
公式アカウントにダメもとでそうお願いしてみたところ、「もちろんOKです!」とザ・快諾がきてびっくりした。
というわけで、
魚がし日本一を運営する「株式会社にっぱん」に行ってきました。
そしてこの方が、
LINEクーポンを担当している、商品販売企画部の河上さん (以下敬称略)です。ついに会えた...!
筆者:お会いできて光栄です。
河上:実は私、以前は五反田店でお寿司を握ってたんですよ。
筆者:本当ですか!僕が行くのも五反田店なので、お会いしたかもしれませんね。
河上:お久しぶりです。
筆者:お久しぶりです。
(左は筆者。中央奥は河上さんを見守る上司の方)
筆者:では早速クーポンについてお聞きします。ここでちょっとおさらいをしましょう。
筆者:まずは年表を上から追っていきたいと思います。最初はクーポンに規則性が無い、いわゆる「戦国時代」が続いていた。その後2016年3月22日に、サーモンを起点とする最初のサイクル、「サーモン朝」が誕生しました。
河上:あ、ちょうどその時に、私が今のLINEクーポン担当になったんです。
筆者:え…!それまでランダムだったクーポンに規則性が現れたのは、担当者が変わったからなんですか?
河上:そうですね。これまでランダムだったクーポンに、もう少し人気のネタをバランスよく配置しようと思って。それでサイクルを作りました。
筆者:あなたが王朝の創始者か...
筆者:ちなみにそれまでクーポンがランダムだったのは、何か選び方があったんですか?
河上:まあ、その日の気分だと思います。
筆者:気分。
河上:はい、気分。
筆者:サーモンのサイクルはその後約1年続いていきます。で、それが崩壊して生まれたのが、焼きゲソを起点としたサイクル「焼きゲソ朝」ですね。
筆者:この時代、あまりに頻繁に焼きゲソが登場するので、記事では「暴君」と呼んでました。
河上:確かに頻繁でした。
筆者:実際のところ、なぜ焼きゲソの頻度がこんなに上がったんですか?
河上:まず、同じサイクルを1年間も続けてると、やっぱり徐々に利用率が落ちてきたんですね。マンネリ化するというか。だから次はちょっと変化を持たせたくて、焼きゲソを入れました。
筆者:焼きゲソって人気なんですか?
河上:人気です。今では他店さんでもメニューにあったりしますが、元々は魚がしの料理人が考案したメニューで。うちオリジナルだからっていうのもあって、ご好評頂いてます。あとは焼きゲソの香ばしい匂いが食欲をそそって他のメニューも注文したくなる、と言う狙いもあったりしますね。
筆者:そんなに深い背景があったのか…
河上:ちなみにこれ、当時一緒にクーポンを考えていた上司のメモです。
筆者:古文書だ。確かに焼きゲソが2回出てきますね。
河上:ちょっとやりすぎました。
筆者:そういえば、プレミアムフライデーのクーポンもありましたね。
河上:ありましたね。すぐ終わりました。
筆者:やっぱり、制度自体が根付かなかったからですか?
河上:はい。なんなんでしょうねあれ。
筆者:なんなんでしょうね。ちなみに時事ネタをとり入れるのは意識されてるんですか?
河上:そうですね。去年だと築地市場の閉場、今年だと新元号を意識した施策も考えています。あと6月に魚がしが30周年を迎えるので、そこでも何かできないかなと。
筆者:めでたい。
筆者:そろそろ年表も後半に入ってきます。2017年7月25日に、「ミル貝刻み軍艦」という謎のネタが唐突に誕生するんですが...
河上:唐突ですね。
筆者:これなんですか?
河上:いわゆる「出物」と呼ばれるネタで。たまたま仕入れることができたので、クーポンに出してみたんです。
筆者:ミル貝はレアなんですね。
河上:レアです。サイクルにちょくちょく単発のネタが挟まるのは、そういう仕入れ事情も関係しています。
筆者:続いて2017年9月26日。出た...煮あさりのサイクル...。
河上:好きじゃないんですか?
筆者:あさりが得意じゃなくて。実際人気はあるんですか?
河上:サーモンとかに比べちゃうと、正直低いです(笑)
筆者:やっぱり!!
河上:でも、結構ファンの方もいらっしゃるんですよ。「煮詰め」と呼ばれるタレを使ってるんですが、このタレを使ってるネタが煮あさりとアナゴしかなくて。なのでこの味をアクセントとして定期的に入れるため、煮あさりベースのサイクルを作ったという感じですね。
筆者:味変(あじへん)みたいなもんか。
筆者:さあ、ラストはいよいよ「あの日」について聞きたいんですが...
河上:「あの日」ですね...
筆者:2018年12月31日。僕の3年間の記録の最終日、通称「Xデー」と呼んでます。
河上:はあ。
筆者:あの日だけ、3年間で唯一クーポンが配信されなかったですよね。僕の記録の最終日に。
河上:ええ、確かに。
筆者:僕はその理由を「働き方改革」の影響だと分析しました。働き方改革によって、様々な飲食店が年末年始に休業した。魚がしも同様だったんじゃないかと。
河上:はい、読みました。
筆者:実際のところ、どうだったんですか!?
河上:実際のところは...
河上:忘れてました(笑)
筆者:え?
上司:え?
河上:実は年末って会社としてはおせち料理のシーズンで、むしろ繁忙期なんですよ。で、うっかり配信するのを忘れてました。
筆者:忘れてただと...
上司:あ、しかしですね。実際に働き方改革で魚がしの店舗は正月はお休みだったりしたので、働き方改革の影響だとも言える...言えるよな?
筆者:でもどちらかと言うと?
河上:忘れてました。
筆者:最後に、今後の抱負を教えてください。
河上:お陰様でご利用もどんどん増えているので、新しい施策も試していきたいです。あとは、忘れないようにします。
筆者:お願いします。
全部ぶっちゃけてくださった河上さん、見守って頂いた上司の方、ありがとうございました!
ちなみにその後、頂いた特別クーポンで年表にあるネタ全部食べてきました。ご馳走様でした。
これからも寿司を愛し続けます。
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