650年の歴史を持つウィーン大学今昔
今年はウィーン旧市街を囲むリンク大通り開通150周年の記念の年です。そのリンク大通り沿いに聳え立つウィーン大学は、今年で創立650年を迎えます。この建物の図書館などは、今年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートのバレエの会場にも選ばれましたね。今日はそんなウィーン大学の歴史と今をお届けします。
創立650年記念の旗がはためくウィーン大学
1365年にルドルフ4世によって創立された、ドイツ語圏最古のウィーン大学。創立当時は学部ごとに、ウィーン旧市街に分散していたウィーン大学ですが、18世紀の中ごろにマリア・テレジアによってノイエ・アウラと呼ばれる主校舎が旧市街に建てられました。
旧市街にある旧ノイエ・アウラ(現科学アカデミー)の建造物
その後、フランツ・ヨーゼフ皇帝時代の大事業であるリンク大通り建設と共に、この通りに面する位置に大学が移設されました。ハインリヒ・フォン・フェルステルによる建築で、今も大学の主要機能はこの建物に集約されています。
ウィーン大学正面玄関
ウィーン市庁舎のような他のリンク大通りに面した他の建造物と異なり、大学の前に広場がないのは、学生がバリケードを築きにくいように、また、警察が大学内に突入しやすいようにとのことです。歴史が感じられる作りになっていますね。
現在はウィーン大学には15の学部と180の学科があり、9万人以上の学生、1万人近いスタッフ、7千人近い学者が在籍しています。経済大学、工業大学、農業大学、医学大学などの専門学部は独立した別の大学となっています。
ウィーン大学の美しい中庭
ウィーン大学は一般にも公開されています。中庭に足を踏み入れると、歴史を感じる開放的な雰囲気の中、勉強している学生の姿が見られます。また、この中庭を囲む回廊には、154にものぼる大学関係者の胸像が立ち並び、壮観です。中にはフロイトやシュレーディンガー、ドップラーなどの姿もあります。
ウィーン大学の歴史を担う教授たちの胸像が並ぶ回廊
ウィーン大学はシュレーディンガーを始めとする9人のノーベル賞受賞者を、主に医学、物理学の分野で輩出しています。
また、ウィーン大学で教鞭をとった著名な学者や、この大学で学んだ著名人の中には、ジグムント・フロイト(精神分析学者)、テオドール・ビルロート(外科医)、アントン・ブルックナー(作曲家)、グスタフ・マーラー(作曲家・指揮者)、グレゴール・ヨハン・メンデル(遺伝学)等が含まれます。
大学内部の優美な階段は、学生や教授が日常的に利用します。
また講堂には、世紀末の画家グスタフ・クリムトが描いた天井画がありました。ウィーン大学に依頼されて描かれた「哲学」「医学」「法学」の三枚の絵は大論争を引き起こした末、クリムトはこの三枚の絵画を買い戻しました。現在はこの三枚の絵画は焼失してしまったので、所定の場所には白黒の絵がはめ込まれています。
ハプスブルク帝国の首都に位置する大学として、学問、文化、芸術に大きな貢献を果たしたウィーン大学。現在でもヨーロッパ各地から学生が集まり、様々な機能を提供しています。
観光でウィーン大学を訪れる方は、今回写真でご紹介した、リンク大通り沿いのウィーン大学本校舎の中庭と回廊が必見ですが、もう一つ見どころがあります。大学本校舎から歩いて10分ほどのところにある旧総合病院(Altes AKH)校舎の中庭は、街中とは思われないほど緑が多く、ビアレストランや公園なども豊富で、学生気分でゆっくり散策を楽しむのに最適です。ぜひ観光の合間に訪れ、ウィーン市民の憩いの場としての大学を感じてみてくださいね。
(2015年4月執筆)