オーストリア/ウィーン街中のユーゲントシュティル様式住宅、マジョリカハウスとメダイヨン・マンション
ウィーンは建築的に見ても非常に多彩で見所が多い町ですが、今日はそんなウィーンの建築士でもおそらく最も有名な一人、オットー・ワーグナーの建築のご紹介です。
以前の記事でも何度か紹介しましたが、オットー・ワーグナーは、クリムトなどと同世代の、ユーゲントシュティル様式(アールヌーボー様式のドイツ語名)の建築家です。
今日ご紹介する、マジョリカハウスの他にも、ウィーン郵便貯金局、カールスプラッツ駅舎、セッセシオン、シュタインホフ教会など、金色をモチーフにした装飾的なデザインが特徴的な建築家です。
そんな、ウィーンの建築を語る上で欠かせないオットー・ワーグナーですが、今日ご紹介するのは、現在でも住宅として使用され、内部見学はできない建物です。ナッシュマルクトという、ウィーン最大の市場に面した、リンケ・ヴィーンツァイレと言う通りには、華やかな装飾でひときわ目立つ住宅が2棟並んで建てられています。
向かって左側にある、赤い装飾が特徴的な建造物が、マジョリカハウスと呼ばれる、オットー・ワーグナーのデザインによる住宅棟です。
正面から見ても、なかなか立派な建物です。
この、赤い花のようなデザインは、マジョリカ焼きと呼ばれるタイルでできていて、それがこの建物の名前の由来となっています。
この建物は、歴史的な建造物ではありますが、今でも住民が住んでいるため、内部の見学はできません。別のウィーンの有名な建築家、フンデルトヴァッサーのデザインした住宅と同様、内装を楽しむのは、住民だけの特権なんですね。
さて、このマジョリカハウスの右隣には、もう一棟華やかな住宅が建っています。
こちらは、メダイヨン・マンションと呼ばれ、マジョリカハウスと同じユーゲントシュティル様式の建造物です。
デザインは、クリムトの芸術運動、ウィーン分離派に参加したり、ヨーゼフ・ホフマン等とウィーン工房を設立したり、オットー・ワーグナーが建築したシュタインホフ教会のステンドグラスなどを制作したりと、ユーゲントシュティル様式の重鎮とは切っても切れない関係の、コロマン・モーザーによるものです。
建物の上の方に黄金のメダルの装飾があるため、メダイヨン・マンションと呼ばれています。このメダル、よく見るとそれぞれ違う横顔のデザインとなっていますね。
メダイヨン・マンションの角の部分には、装飾的なバルコニーがありますが、こちらも個人の住宅です。
こんな歴史的で素敵なデザインの建物に住んでいる人がとってもうらやましくなってしまいますが、観光客でも外側から眺めることは簡単にできます。街歩きをしながら、こんな歴史的な建物とふと出会えるウィーン。知れば知るほど奥が深いですね。
(2014年3月執筆)