機械兵団の進軍 構築済み統率者デッキ 看板統率者雑感
はじめに
2023年4月21日発売の新エキスパンション「機械兵団の進軍」では、最近おなじみになりつつある構築済みの統率者デッキが5つも発売されます。
デッキの内容などは4月3日現在では公開されていないため、とりあえず現在公開されている5枚の新統率者カードの雑感を綴っていきたいと思います。
No.1 オレスコスの破滅、ブリマーズ
機械兵団の進軍で新たに追加されたキーワード能力「培養」と「増殖」をテーマにした統率者となっています。
1つ目の能力は、アーティファクト・クリーチャー呪文やファイレクシアン・クリーチャー呪文を唱えると、マナ総量に等しい大きさの培養を行うというもの。
マナレシオ1.0のトークンがおまけでついてくるのは中々お得であり、ビートダウンでの勝利が十分に狙える打点があります。
問題点は培養器トークンはクリーチャー化するのに2マナも追加で必要であるということ。
固有色が白黒ということもあり、トークンをクリーチャー化するのに一生懸命になってしまうと他の動きがおろそかになりがちです。
逐一クリーチャー化して動きを悪くするよりは一気にビートダウンで攻め込むタイミングまでは置物として放置しておくのも良いかもしれません。
置物として見ても「甦りし悪夢、ブレイズ」や「クラーク族の鉄工所」、「命取りの論争」、「カルドーサの鍛冶場主」、「オズワルド・フィドルベンダー」などで生贄のコストに充てたり
「鼓舞する彫像」で即席のタネにしたり…
「からみつく鉄線」や「煙突」の維持コストにしたりと持てる役割は意外と多かったりします。
また、培養器生成能力は親和と相性が良いという特徴があります。
培養の値はマナ総量に等しいので、親和でコスト軽減しても大型の培養器が出てくる上、培養器自体もアーティファクトであるため後続の親和のコスト軽減に充てられるのがうれしいです。
2つ目の能力はファイレクシアンが死亡すると終了ステップ開始時に増殖を行う効果。
各終了ステップなので対戦相手のターンにサクリ台を使って、用済みになったファイレクシアンやクリーチャー化した培養器をサクることで効率よく増殖を行えます。
ただし、特に工夫をせずにデッキを組んでいた場合、増殖できるカウンターはせいぜい培養器の+1/+1カウンターぐらいになってしまいます。
増殖を効果的に使うにはPW等、増殖して嬉しいカウンターを持つカードを採用する必要が出てくるため、構築の難易度はより高くなります。
総じて、ファイレクシアン・クリーチャー、アーティファクト・クリーチャーによる部族デッキ的要素と培養、増殖という2つのテーマが絡み合った、やや構築難易度高めの統率者に見えます。
その分うまく組めればオリジナリティに溢れた面白いデッキになるでしょう。
No.2 魂を呼び覚ます者、煌拳
ナヤカラ―らしい武闘派の統率者で、新キーワード能力の賛助に加え、+1/+1カウンターを倍にして小型クリーチャーのブロックをすり抜けさせる攻撃誘発能力を持っています。
攻撃誘発で+1/+1カウンター倍はかなりの高効率で、単純に+1/+1カウンターをたくさん乗せられるカードと組み合わせることで強力なビートダウンを実現できるでしょう。
「結ばれた者、ハラナとアレイナ」、「ラムホルトの勇者」、「マナ喰らいのハイドラ」などと組み合わせることで大量の+1/+1カウンターを置けます。
また、「歩行バリスタ」、「トリスケリオン」、「水晶の這行器」、「刻まれた巫女」等の+1/+1カウンターを他の用途に使えるカードとは非常に相性が良く、単純なスタッツ向上以外にも+1/+1カウンターを生かすことができるでしょう。
また、攻撃誘発であるため、「アヴェルヌスの憤怒、カーラック」、「アクームの怒り、モラウグ」、「戦導者オレリア」などの戦闘フェイズを追加できるカードとも噛み合いが良く、カウンターを2倍、4倍と雪だるま式に増やしていくことができます。
パッと思いついた無限コンボとしては、煌拳か賛助したクリーチャーが殴れる状況で、「追い討ち」、+1/+1カウンターが6個以上置かれた「水晶の這行器」を組み合わせることで無限戦闘、無限マナに入ることができます。
やり方は単純で
1:煌拳か賛助したクリーチャーで攻撃して+1/+1カウンターが6個以上置かれた「水晶の這行器」の+1/+1カウンターを倍にする
2:「水晶の這行器」から+1/+1カウンターを5個取り除き「追い討ち」の効果を起動
3:戦闘フェイズ追加で1に戻る
の繰り返しです。
とはいえこのコンボに頼らずとも+1/+1カウンターを倍々にしていけば十分に人を殴り倒せるくらいの打点は捻出できるので、「可能なら狙う」くらいの認識でよさそうな気がします。
欠点として煌拳自体は単なる4/3バニラでしかないので、周りのプレイヤーが高スタッツなクリーチャーをコントロールしていると殴れなくなり、効果が発動できなくなってしまいます。
そういった時は、あえて自分を賛助したり、他の+1/+1カウンターを置けるカードで煌拳の上に+1/+1カウンターを置き、煌拳自体を強化して統率者ダメージでの勝利を狙う…というのも一興かもしれません。
総じて+1/+1カウンターをテーマにシンプルに纏まっており、パワフルなビートダウンデッキを使いたい人におすすめの統率者と言えるでしょう。
No.3 グレムリンの神童、ジンバル
アーティファクト・クリーチャーにトランプルを与える常在型能力とターン終了時にアーティファクト・クリーチャートークンを生成する能力を持つ伝説のグレムリンですが、個人的な評価はあまり高くありません。
最大の問題点はトークンのサイズが「名前の異なるアーティファクト・トークン」の数に依存する点でしょう。
有名どころのアーティファクト・トークンといえば「宝物」、「手掛かり」、「血」、「食物」、「パワーストーン」あたりでしょうか。
これらをすべて出したところで、出てくる「グレムリン」と合わせて6種類なのでスタッツは6/6程度にしかなりません。
より巨大なトークンを出す場合は様々な種類のアーティファクト・クリーチャー・トークンを生み出すカードをデッキに組み込む必要があります。
トランプル付与能力から察するに、色々なアーティファクト・クリーチャートークンを採用してトランプルを付与して殴れというコンセプトなのでしょう。
問題はトークンを生成するカードを1枚デッキに加えたとしても、基本的にトークンの種類は1種類しか増えないことです。
EDHは100枚デッキですが、土地+汎用カードで大体デッキの半分ちょっとくらいは埋まってしまいます。
そのため残りの40~50枚前後にデッキのコンセプトを決めるカードを入れていくことになるわけですが「名称が特殊なアーティファクト・クリーチャートークンを出すカード」というカードパワー低めのカードで貴重な枠を食われてしまうのがかなり致命的です。
また、そこまで苦労したところで少し大型のトークンがターン1で出てくる程度なのでリターンが見合っていない感じがあります。
さらに痛いのが競合する統率者が存在することです。
固有色こそ違いますが、半年ほど前に発売された非常によく似た能力をもつ「工匠の主任、ウルザ」と比較してみましょう。
回避能力の付与は「トランプル」と「威迫」、どちらが有用かは時と場合によるので単純な比較は難しいですが、出てくるトークンの性能はかなり大きな差と言えます。
特にトークンのサイズ参照先が致命的でジンバルが「名称違い」でなおかつ「アーティファクト・トークン」が指定されているのに対し、ウルザはアーティファクトならなんでもOKとなっています。
また、統率者のマナコストはジンバルの方が1マナ軽くなっていますが、ウルザには親和(アーティファクト・クリーチャー)が付いているため、実質的なマナコストはウルザの方が軽いと言って差し支えないでしょう。
このように競合となる統率者が存在し、デッキにカードパワーの低い専用カードを何枚も入れなければならないことを考えると、独自の強みを出すための構築の難易度はかなり高いと言えます。
固有色にパワー参照が得意な緑が入っている点とトークンのサイズが+1/+1カウンターで決定する点をうまく生かさなければ差別化を図る事すら難しいかもしれません。
「倍増の季節」や「よりよい品物」等、このデッキ独自の相性の良いカードもあるので何とか差別化を図っていきたいところではあります。
No.4 壊れた光輪、カスラ
今まで出そうで出なかった召集特化の統率者。
召集カードを唱えると「定業」がおまけでくっついてくるような能力を持っています。
しかしながら召集というキーワード能力の初出がラヴニカ:ギルドの都のセレズニアなので、歴代の召集カードが白と緑に偏っているという大問題があります。
どれくらい問題なのかというと、2023年4月3日現在、青・赤・白の召集カードを検索してみるとわずか25種類しかありません。
(下はWisdom Guildで検索したリンクとなります)
ただ、次回エキスパンションの「機械兵団の進軍」で召集カードがいくつか追加されることが確定しており、「壊れた光輪、カスラ」デッキにも専用の強力な新規召集カードが封入される可能性が高いです。
そのため、どれだけ強力な新規召集カードが追加されるかで大きく評価が変わってくる統率者であると思います。
また、統率者の能力をフルに生かす場合「召集カード」に加え「召集のタネとなる小型クリーチャーを並べるカード」の2種類のカードを多めに入れる必要があるため、うまくバランスをとってデッキを構築するセンスが必要となります。
パッと思いつく固有コンボとしては「雲石の工芸品」、「侵入警報」、「戦場に出ているクリーチャーで召集コストがすべて支払えるクリーチャー2体(片方はカスラでも可)」で無限ドローになります。
手順は以下
①:召集でマナを支払い召集クリーチャーAをプレイ
②:カスラの能力で占術とドロー
③:侵入警報の効果でクリーチャーが全てアンタップ
④:雲石の工芸品効果誘発で召集クリーチャーBを手札に戻す
⑤:召集でマナを支払い④で手札に戻した召集クリーチャーBをプレイ
で、④の時に召集クリーチャーAとBを交互に戻すだけで無限ドローになります。
必要パーツは少し多いですが1枚1枚がカスラと相性が良いので、普段は単体で運用しても十分強力な動きができるのが強みと言えます。
総じて今後の召集カード次第と言えますが、召集をテーマとした統率者デッキを作ってみたかった人にはもってこいの統率者と言えます。
No.5 ザルファーのシダー・ジャバーリー
統率者2017で登場した部族特化の人気キーワード能力「威光」の新カードがついに新登場。
今回は騎士をテーマとした統率者となっています。
威光能力は騎士が攻撃するとルーティングが誘発するというもの。
ただし、「一体以上の騎士で攻撃」であるため、複数の騎士で攻撃しても一回しかルーティングは誘発しません。
威光能力が実質無料のおまけ能力とは言え、歴代の威光能力と比べるとやや寂しいところがあります。
その代わり、ジャバーリー自体の能力が威光能力と噛み合っており
①:威光能力でドローして騎士を捨てる
②:ジャバーリーで殴って騎士をリアニメイト
と自己完結した動きが可能となっています。
ジャバーリー自体が飛行と先制攻撃を持つためブロックされにくいのも評価できるポイントでしょう。
問題点として、騎士は小型かつコストパフォーマンスが優秀という特徴を持つため、リアニメイトで踏み倒して盤面を制圧できるほどの重コスト・高性能な騎士はそう多くない点が挙げられます。
(下はWisdom Guildで青・白・黒の騎士を検索したリンクとなります)
「暁の騎兵」、「夜の騎兵」など強力な騎士もいますが、二線級の騎士を無理に入れてまで統率者のリアニメイト能力に頼るよりも、自前のリアニメイト手段と強力なフィニッシャーをデッキに入れておくと攻め手が増えるかもしれません。
嬉しい点として2023年度秋には「エルドレインの森」の発売が控えており、「騎士」部族の強化が予想されることが挙げられます。騎士はそれなりにメジャーな部族であるため「エルドレインの森」以降の強化も期待できるため、新弾が出るたびにアップデートが楽しめるデッキになりそうです。
終わりに
デッキ内の新規カードがまだ公開されていない状態での見切り発車記事でしたが、いかがでしたでしょうか。
2023年度は現段階で既に、「指輪物語」で4デッキ「統率者マスターズ」で4デッキの構築済み統率者デッキの発売が予定されており、公式の統率者というフォーマットの推し方もかなり露骨になってきている感じがあります。
統率者というフォーマットは問題点もいくつかありますが、それを上回る魅力に溢れたフォーマットだと思っているので、公式に便乗して私も統率者の人口増加に貢献できるような記事を書いていきたいです。
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