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誰がオーガニックマッシュルームやねん

1ヶ月ぶりの丹波篠山。
高速代500円ケチったことでまさかの山道を通る羽目になったのだけど、それはそれでよかったのだと木陰のクネクネ道をゆっくりと走りながら思った。

ほぼアスファルトの上で育ったわたしにとって山道も木陰の涼しさも特別なのだ。

こんもりと小さなまあるい山が連なる丹波篠山市。

山梨とか富山とかに遊びに行った時「なんや!この山脈っぽい山々は!」と言い放って「いや、山脈ですからね」とつっこまれた浅薄なわたし。
たぶんですけど、こういうこんもりした山しか見て育ってないので、あのとんがったアルプス山脈的なやつを見ると全部パタゴニアのTシャツのプリントに見えてちょっとテンションあがっちゃうんですよね。

ちょっと調べて見ると、兵庫県の最高峰は氷ノ山で標高1510m。
山梨県は当然日本一の富士山標高3776m。
続いて北岳標高3193mと3000mオーバーの山がずらりなのです。

遠足で登った再度山は470m。(いやきいてない)
映画ラストサムライの撮影の舞台となった姫路の書写山は371m。
わが家の裏山登山ルートである保久良山にいたっては185mですと。
そりゃ、山脈見たら感動もしますって。

いやいや山脈の話がしたいんじゃなかった。

もとい。丹波篠山の山はまあるい。
日本昔話の挿絵のような、のどかで、どこか平和に見える。

神戸から1時間程度でたどり着く、超お便利な田舎町。

そこで株式会社やがての黒瀬啓介さんにはじめてお会いしました。

蛇口からじょうろに水を汲んでいて
「こんにちは、用務員のおじさんです」と言ってサンダル姿の黒瀬さんはまず笑わせてくれました。

解説すると、関西では挨拶のような光景です。
そろそろ他府県の方々も慣れてください。
(20人にひとりくらいこんな感じです)

株式会社やがて 代表 黒瀬 啓介さん

パッと名刺を差し出して
唐突に、間髪入れず
「オーガニックに対してどんな印象をもっていますか?」と質問が飛んだ。

「ああ、、このパターンか」と瞬間で身構えたのです。

それは、オーガニックやナチュラルに対してほぼ無知な自分に哲学的な話など響くわけがないし、それを取材するための材料すらないのですから、やばいよやばいよ〜な気持ちになり身構える。

「ワインが好きなんですけど、ナチュールとかオーガニックとかで美味しかった記憶があって、そういうものをまた飲みたいなと思ったときの探し方がわからずつい〈オーガニックのワインが飲みたい〉と言ってしまう。そんなレベルの解釈度合いです」

ここは素直に、知識浅いことを包まずオープンにしてみたのだけど、想像を上いく怒涛の黒瀬砲がバシバシと飛んできた。

土が悪いといい野菜はできない。いい土がある土地に流れる川は美しい。いい土はいい山をつくっていていい土地があって、いい水を流す。

上で危険な農薬を撒けば、下にはそれが流れ着く。

黒瀬さんが住む丹波篠山は瀬戸内海に流れ出す加古川、武庫川。日本海に流れる由良川の3つの河川の源流を有する稀有な場所。
自分たちの土地から流れるものは、日本海へも瀬戸内海にもつながるというのです。

「わたしたちに責任がないわけがない」と言いながら、早口なのだけどとてもゆるく穏やかな言葉で、受け取りやすいオーガニック思想を語ってくれました。

意識低めのアスファルト族には耳の痛い話が多い環境問題も、まったく無関心なわけではない。それらを見極めて暮らすには骨を折ることもたくさんあるのです。

そんなわたしの気持ちを察してなのか黒瀬さんが

満員電車で毎日同じ時間に揺られて、残業しまくって、接待で飲みまくってた広告屋だった僕と、そんな髪型して、好きなことして、こうやって田舎町で僕らの話聞いてる浅野さんだったら、浅野さんがオーガニックですよね。と言った。

なんか?めちゃくちゃディスられた気もしたのだけど、なぜか変な例えでものすごく大きな腹落ちをして、「オーガニックじゃないとダメ!じゃなくて、美味しいもの食べたらそれがオーガニックだった!がいいよね」と最後は抱き合う勢いで同意した。

未来を生きる子どもたちに負担を残したくない。
このすばらしい町を残したい。
そういう想いの人たちとつながっていたい。

そして美味しいは正義!(まちがいない!)

黒瀬さんは例に漏れず、丹波篠山の〈あの〉黒豆を食べて、この地に移住することを決めました。

わたしの知る限り「黒豆食べて移住」、これで3人目です(怖)

まだまだ神戸で仕事をしなきゃいけないわたしは「〈あの〉黒豆にはまだまだ手を出さないでおこう」と強く心に誓った暑い暑い夏の日でした。