HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【7〜8月】
HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。
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今月、国内では空飛ぶクルマの実装に向けた自治体の取り組みが目立ちました。いち早く空飛ぶクルマに注目し、エアモビリティを活用した都市交通・観光の可能性を広げてきた企業とともに活動を進めています。
また海外では、機体の開発を進める企業の試験飛行に関するニュースが引き続き見られます。飛行試験に留まらず、飛行に伴うオペレーションを一連の流れでテストするような取り組みもあり「空飛ぶタクシー」のようなサービス化も視野に入ってきました。
今月も国内と海外に分けて、空飛ぶクルマに関する最新情報をお届けします。
【国内の空飛ぶクルマニュース】
1.静岡県、空飛ぶクルマ推進に向けた特別チームを始動。会合を実施(7/22)
全国各地の自治体がそれぞれの地域課題の解決に向けて空飛ぶクルマの実装を進める中、これまでの空飛ぶクルマニュースでは名前があがらなかった都道府県が、新たな動きを見せました。
静岡県内の「静岡県次世代エアモビリティ導入促進プロジェクトチーム」らは22日、「空飛ぶクルマ」の導入や普及に向けた会議を開きました。静岡県次世代エアモビリティ導入促進プロジェクトチームは5月に立ち上がった団体であり、今回の会合が初の開催となります。
会合では、空飛ぶクルマの市場規模や国・自治体の動向などについて関係者同士で共有を行いました。
今後は、25年度の当初予算案に関連事業費を計上することを目指して8月に中間報告を出すほか、年内には27年度の商用運航開始を想定したロードマップを作るとのこと。30年代前半には拠点間の移動や、観光・防災といった公共交通以外の利用も見込み、空飛ぶクルマの先進地となれるよう導入を目指す方針です。
静岡県は、スズキなどの自動車産業が集積することでも知られています。静岡県の増井副知事が「(導入に)優位性のある地域。予算の策定まで時間は限られるが頑張りたい」と意気込むように、静岡県が今後日本の空飛ぶクルマ実装にどのような影響を与えるのか楽しみですね!
2.和歌山県、IHIら4者が「第1回 和歌山 次世代エアモビリティワーキング」を開催(8/13)
和歌山県、南海電気鉄道株式会社、株式会社長大、株式会社IHIの4者は9日、和歌山県内の自治体・事業者に向けた「和歌山 次世代エアモビリティワーキング」を設置し、1回目の会合を県内の公共施設にて開催しました。
4者は24年2月に、空飛ぶクルマなどの次世代エアモビリティを和歌山県内で実用化させ、和歌山県への誘客促進や地域活性化などを推進するための連携協定を締結しています。
会合では、日本政策投資銀行の岩本学氏による基調講演が行われたほか、各団体の代表者4名によるトークセッションも開催されました。
今後「和歌山 次世代エアモビリティワーキング」では、和歌山県内の自治体・事業者などが次世代エアモビリティの社会実装に向けた取組を推進するのを後押しするとともに、ネットワークを構築する機会を提供するとのこと。
エアモビリティ産業を盛り上げるため、全国の各自治体や空飛ぶクルマ先進企業がまわりを巻き込み、スムーズな社会実装をサポートするこのような事例も、今後多く見られそうです。
【海外の空飛ぶクルマニュース】
3.Eve Air Mobility「空飛ぶタクシー」のプロトタイプを公開(7/21)
ブラジルの航空宇宙企業『EMBRAER』の電気航空機子会社『Eve Air Mobility』は21日、ブラジル国内の自社施設で開催されたイベントにて、新しい「空飛ぶタクシー」の実物大プロトタイプを公開したと明らかにしました。
Eve Air Mobilityは2026年の認証取得と運航開始を目指して開発を進めており、今回公開されたプロトタイプは、同社にとって重要なマイルストーンであるといいます。
Eveのヨハン・ボーデ最高経営責任者(CEO)はこの機体について、現在は陸地での走行試験を進めており、24年末から25年初頭までに飛行試験を開始する予定だと明らかにしています。
飛行試験では航空機の性能を確かめるとともに、空中に浮かび上がる垂直飛行から真っ直ぐと飛行する水平飛行への移行をテストするために使用されるとのことです。26年の機体完成を目指して開発を進める、Eveの今後に注目が集まります。
4.EHang、KC Smart MobilityからeVTOL「EH216-S」を30機受注。香港の低高度経済を活性化(7/21)
中国の旅客ドローンメーカー『EHang』は、香港で旅行ソリューション開発を推進するKCBHの子会社『KC Smart Mobility』と機体の購入ならびに運用協力契約を締結したことを発表しました。
香港とマカオ、そして中国湖北省の襄陽市と十堰市での展開・運用促進を目的に、KC Smart MobilityはEHangからeVTOL「EH216-S」を合計30台購入します。
香港は現在、積極的に低高度経済戦略を進めています。香港の強力な研究能力を活用して、低高度経済産業を含むイノベーションを促進することで、国内で新たな生産力を育成する狙いです。
また、香港でのeVTOL活用は、観光分野での活用も期待されています。
香港特別行政区イノベーション・テクノロジー・産業局長の孫東教授は「政府はeVTOL分野の進歩と発展に細心の注意を払い、香港の地域性や市場ニーズなどに応じて、観光体験を向上させるプロジェクトを推進する」と、行政をあげて取り組みを進める方針を示しました。
地元の観光と航空モビリティ市場に、新たな活力を吹き込む取り組み。香港では今後どのように空飛ぶクルマが活用されるのか気になりますね!
5.AutoFlight、eVTOL機が初の長江横断飛行を完了(8/1)
中国の航空開発企業「AutoFlight」は1日、自社で開発中のeVTOLが初の長江横断飛行に成功したと発表しました。長江は中国最大の河川であり、世界第3位の長さを誇る長江の横断成功に世界からも注目が集まっています。
試験飛行は南京市浦口区にある基地から始まり、長江周辺を飛行した後に再び基地へ。飛行距離約25kmを、約10分で結びました。
この取り組みが注目される背景には、長江周辺地域の交通問題があげられます。
例えば今回の試験飛行が行われた南京は中国の重要都市である一方、他の地域と行き来するには、離れた場所にある橋から長江を渡る必要があります。直線距離で5.5kmのところを20kmもまわり道しなければなりません。
これは地域住民にとって大きな課題であるとともに、観光の面でも悪影響を及ぼしています。休日には観光客で大渋滞し、身動きが取れなくなることもあるそうです。
しかしeVTOLを利用すれば、長江の上空をショートカットし、これまで自動車で40分ほどかかっていた道のりをわずか5分で移動することが可能です。eVTOLの導入により、町の交通と観光はどのように変わるのでしょうか。中国の空飛ぶクルマ開発から、目が離せません。
6.AutoFlight、CATL(寧徳時代)から数億ドルの戦略投資。eVTOL用バッテリーのさらなる改良を目指して(8/16)
そんな長江での飛行を成功させたAutoFlightに、追い風が吹いています。
AutoFlightは、中国で車載電池を開発する最大手メーカー・CATL(寧徳時代)と提携協定を締結し、数億ドル(数百億円超)の戦略投資を受けたことを発表しました。
2社は今後、協業してeVTOL用バッテリーの研究開発を進めていきます。航続距離を伸ばし、より多くの積載量に対応できるよう、バッテリーのエネルギー密度と性能の向上に重点的に取り組み、安全性や安定性の面でも大幅な改良を行う方針です。
ちなみに今回AutoFlightに出資したCATLは、自社でも機体の研究開発を進めています。CATLの創業者・曽毓群氏は今年6月に、同社が8トン級の電動飛行機の開発を積極的に進めており、27〜28年に発表する予定であることを明らかにしました。
ここ数年で急激に開発や実装に向けた整備が進み、今や空飛ぶクルマの一大開発国となっている中国。現在トップを走るAutoFlightと、それを追いかけるCATLの今後に注目です。
7.Volocopter、パリでeVTOL運用検証フェーズが開始へ(8/8)
この夏、日本を盛り上げたパリオリンピックの開催地でも、空飛ぶクルマ実装に向けた動きが進んでいます。
ドイツのVolocopter社は8日、パリのVolocopter承認飛行ルートに統合された特注商用バーティポート「サン・シル・レコール飛行場」での有人テスト飛行を実施し、成功しました。
このテスト飛行は、eVTOL運用にあたる一連の流れを確認するもの。
先月のニュースではパリ・オーステルリッツに位置する飛行場での運行についてお伝えしましたが、サン・シル・レコール飛行場では空中飛行だけでなく、地上での取り扱いや航空管制との通信、垂直離着陸場でのバッテリーの充電と管理についてもテストを行います。
VolocopterのCEO・ディルク・ホーク氏は年内にオーステルリッツ飛行場での飛行を行った上で、2025年にはドイツで救急医療サービス(EMS)のテストフェーズを開始する予定であることを明らかにしています。
来年には急病人が空飛ぶクルマで搬送されたり、空飛ぶクルマ内で治療を行なったりするような事例も発生するかもしれません!
8.ASKA社の公道走行可能なeVTOL「ASKA A5」、350回の無人係留飛行テストに成功(8/16)
米国カリフォルニアに本社を置く、日本人経営者の企業からも、嬉しいニュースが飛び込んできました。
名古屋出身の日本人・カプリンスキー真紀氏が代表を務めるASKA社は、公道での走行が可能な4人乗りeVTOL「ASKA™A5」フルスケール機が、350回の無人係留飛行テストに成功したことを発表しました。
※係留飛行:ケーブルで地面と機体を繋いだ状態で飛行を行うこと。
テストはカリフォルニア州にあるプライベート飛行場で実施されており、同社は今年7月に特別耐空証明が更新されて以来、低高度での無人係留飛行や垂直離着陸、ホバリングテストを続けてきました。
このテストを終えると、ASKA™A5は本来の航空機のような滑走路を用いての離着陸や、垂直離着陸と巡航飛行との遷移飛行試験を行うこととなります。
ASKAの開発するeVTOLは翼を格納すると自動車とほぼ同様の大きさとなり、公道を走れることから、本当の「空飛ぶクルマ」として業界からも一目を置かれてきました。街中で日常的にASKA™A5を見るのはまだもう少し先となりそうですが、さっきまで道を走っていた車があっという間に航空機へと移り変わる姿を思うと、ワクワクしますね!
9.Archer Aviation、米空軍にeVTOL「Midnight」を初納入(8/16)
アメリカの宇宙航空企業・Archer Aviation Inc. は16日、米空軍に対してeVTOL機Midnightを納入したことを発表しました。
Archerは昨年8月に、米空軍に対してeVTOL機「Midnight」最大6機を納入する他、追加の飛行試験データや認証関連の試験報告書を共有すること、パイロット訓練を実施すること、保守・修理業務を開発することなどが含まれた契約を締結しています。
これまではパイロットの訓練や、飛行制御の運用に関する米空軍職員の理解を向上させるために使用する「移動式フライトシミュレータ」などで取り組みを進めていましたが、機体が実際に納入されるのは今回が初のことです。
両者は米空軍に空飛ぶクルマが導入されることについて「軍用航空の将来にとって極めて重要な瞬間」とした上で、既存のものと比べてはるかに安全かつ静かなエンジンを持つMidnightは、幅広いミッションに対して機敏に動き、運用効率を向上させるだろうと期待を寄せました。
取り決めが全て履行されれば、総額は最大1億4,200万ドルにもなる今回の契約。Archerと米空軍の取り組みは、まだまだ続いていくことでしょう。
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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。
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