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文化経済学で読み解くeVTOL
=生成AIと空飛ぶクルマの未来を考える=
HAAM公式noteのコラムシリーズ。
代表のPRODUCER江藤誠晃がAAMの未来を独自アプローチで構想します。
▪️イントロダクション
空飛ぶクルマ産業の未来を「SDGs ウェディングケーキモデル」の3層構造(経済・社会・環境)で探究していくコラム。
環境(BIOSPHERE)と社会(SOCIETY)の上層に位置する経済(ECONOMY)へのアプローチで考えていきましょう。
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17のゴールのうち、この層に位置付けられるのは
(8)働きがいも経済成長も
(9)産業と技術革新の基盤をつくろう
(10)人や国の不平等をなくそう
(12)つくる責任つかう責任
の4つで、SDGsが目指す各種課題の解決は経済活動によって可能であるという位置付けになっているといえます。
その中から(8)と(12)内のターゲット文章に注目します。
▪️持続可能な観光業
SDGsは17の目標の中に169のターゲット文が紐付けられていますが、(8)と(12)の中から2文を紹介します。
8.9:2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
12.b:雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
微妙に表現は違うものの、ほぼ同様の文章となっているのがわかります。
違いは何かというと(8)は政策立案と実施をうたい(12)はその影響測定の必要性をうたっているところです。
仮に「空飛ぶクルマ」産業が持続可能な観光業を担う存在になると仮定したら、これらの文章をバラして確認していくのが良いでしょう。
即ち、「空飛ぶクルマは雇用を創出するか?」と「空飛ぶクルマは地方の文化振興・産品販促につながるか?」という問いかけです。
「2030年までに」というのがSDGsのミッションですから、空飛ぶクルマ産業のロードマップと密接に関わってくるのがわかります。
▪️空飛ぶクルマのお仕事
空飛ぶクルマの3大ポイントは
1)電動
2)自動操縦
3)垂直離着陸
です。
この中の「自動操縦」はパイロットが存在しないことを意味しているので、空を飛ぶeVTOLの数だけ雇用が増えることはないでしょう。
もちろん、法整備が整うまでは操縦者が求められる流れが想定されますし、産業成立後も機体サイズによっては操縦者が残るパターンも充分考えられます。
ただし、無人化がひとつのトレンドである以上、空飛ぶクルマに関して今後登場してくるであろう「お仕事」において空域現場で働くパイロットやCAといった職種は相対的に少なくなるわけで、その分、どのような職業が生まれてくるかに注目する必要があります。
そこで生成AIに空飛ぶクルマ産業を取り巻く新たな職業・職種について質問してみました。
<質問>
空飛ぶクルマ産業が定着する未来に誕生する新しく雇用がうまれる仕事を具体的にまとめてください
この質問をして驚いたのは、いつもなら即答してくれる生成AIに【推論中】の表示が出て回答に50秒を要したところです。
既存のデータや情報をベースに回答を探ることが得意なAIにとっても、今は存在しない未来を探るには時間がかかるようです。
また、「推論中」という文言が表示されるところも興味深いところです。
<回答>
【空飛ぶクルマパイロット】
最新技術で次世代空中操縦、乗客安全輸送を確保
【航空交通管制官】
都市上空の交通流を統括管理し混乱防止
【飛行車整備士】
定期点検と修理で機体安全を保証
【空中物流コーディネーター】
空輸ネット調整で物流効率向上を図る
【空中充電技術者】
飛行車充電施設の設計・管理を担う
【VTOL技術指導者】
垂直離着陸技術の普及と指導を実施
【空中都市プランナー】
都市間空路と停留所配置を設計する
【空飛ぶクルマ保険アドバイザー】
リスク評価と保険設計を提案する
【空中警備員】
空上の異常検知と安全維持を担当
【飛行車データ解析官】
運航データ解析で性能改善を図る
最初にパイロットが出てくるということは上記の見立て通り当面は必要という判断でしょうが、「空中物流コーディネーター」や「空中都市プランナー」など現在は存在しない職種には注目したいところです。
▪️空飛ぶクルマのカルチャー
では、次に「地方の文化振興・産品販促」について考えます。
SDGsターゲット文章の中では「文化振興」と「産品販促」のふたつの単語が並んでいますが、ここでは「文化=カルチャー」に着目します。
「産品」を「空飛ぶクルマ」とした場合、その「販促」は世の中が求める空飛ぶクルマを続々と生産して社会課題の解決を目指すことになりますから、その市場を活性化させる「文化振興」が重要ではないか?という文脈です。
そこで「文化経済学」というキーワードワードで社会受容性が高まっていくトレンド構築を考えてみたいと思います。
一見すると対立するような「経済」と「文化」ですが、その関係性を探究する学問分野が存在します。
一例として観光の分野でいえば「クールジャパン」がそれに当たりますが、価値観の多様化や不確実性の増大によって答のない課題が続出する時代に求められるのは「創造力」です。
源泉となる文化なくして経済なし、ということで生成AIには以下の質問を投げました。
<質問>
空飛ぶクルマ産業の未来を文化経済学のアプローチで、新たな経済効果を牽引する新たなカルチャーの登場がありうるか予想してください。
こちらも推論に時間がかかりましたが、以下のようにまとめてくれました。
<回答>
空飛ぶクルマ産業は、技術革新だけでなく、文化・経済の面でも大きな変革をもたらす可能性があります。文化経済学的な視点から予想すると、以下のような新たなカルチャーと経済効果が生じる可能性が考えられます。
1. 新たなライフスタイルと都市空間の再構築
・空中ライフスタイルの誕生:
飛行する移動手段が普及することで、従来の「地上中心」の生活スタイルから、空中を活用した新たなライフスタイルが生まれる可能性があります。たとえば、都市中心部だけでなく、空中交通網を活用したサテライト都市や空中コミュニティが形成されるかもしれません。
・都市計画とインフラの変革:
空中移動が日常的になれば、都市の空間利用やインフラ設計にも大きな影響が及び、これまでにない空間的・社会的なインタラクションが生まれるでしょう。新たな移動手段に合わせた都市再設計は、文化と経済の双方で新たな価値を創出します。
2. 芸術・デザイン・エンターテイメントへの波及効果
・メディアとポップカルチャーへの影響:
SF映画や小説、アート作品など、空を舞台にした新たな表現が拡大する可能性があります。空中での移動や生活をテーマにしたコンテンツが生まれることで、エンターテイメント市場全体に新たな需要が生じるでしょう。
・デザインとファッション:
飛行クルマ自体が未来的なデザインの象徴となり、それがファッションや工業デザインに影響を与えることで、関連産業にも新たな潮流が生まれることが期待されます。
3. 新市場と経済効果の創出
・新たな産業エコシステム:
技術の進歩に伴い、飛行クルマを支えるための新たなサプライチェーン、整備・運行管理システム、セキュリティや安全管理の専門分野など、関連産業全体が発展するでしょう。これにより、従来の自動車産業とは異なる新しい経済圏が形成される可能性があります。
観光・レジャー分野の拡大:
空中を利用した観光やレジャーといった分野が発展すれば、地域経済に対する波及効果が大きく、地域間の経済格差解消や新たな雇用創出にもつながると予想されます。
4. 社会的受容と規制の課題
・文化的受容のプロセス:
新しい技術や生活様式は、初めは抵抗や懸念も伴います。しかし、時間とともに安全性の向上や法整備が進むことで、社会全体が空中移動を自然なものとして受け入れるようになるでしょう。その過程で、独自の文化的価値観が形成され、新たなカルチャーが根付くと考えられます。
・経済と文化の相互作用:
技術革新がもたらす変化は、文化面でも経済面でも相互に影響を及ぼします。飛行クルマの普及が、経済効果を牽引する新たなカルチャーを生み出す一因となる一方で、文化の変革がさらに新たな市場や産業の発展を後押しする好循環が期待されます。
空飛ぶクルマ産業が単なる技術革新に留まらず、生活様式、都市計画、芸術、デザインなどで経済全体に新たな波及効果をもたらす可能性があるというのが文化経済学的アプローチによるひとまずの回答で、これまでにない経済効果を生み出す「新たなカルチャー」が形成されることは十分に予想されるということです。
▪️フィクションの世界が現実に
上記生成AIによる回答の中で、人類がこれまでに当たり前としてきた「地上中心」の生活を上空に拡張させる「空中ライフスタイルの誕生」という表現に注目しましょう。
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回答の中には「都市計画」や「インフラ設計」という我々が暮らす機能的な都市空間に関わる経済ワードも並んでいますが、「サテライト都市」や「空中コミュニティ」などのワードはまさに「ライフスタイル」であり「カルチャー」に直結しそうです。
芸術・デザイン・エンターテイメントへの波及効果として、SF映画や小説、アート作品などが挙げられていますが…
古くはジュール・ヴェルヌやH・G・ウエルズの小説から、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ハリーポッター』などの映画まで、空を飛ぶという人類の夢を提示してきたフィクション作品が実際に体験可能なノンフィクションに変容する時代が到来してるのかもしれません。
●次回はSDGs wedding cakeモデルの頂点に位置する17番について考えます。