HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【11〜12月】
HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。
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今月はこれまでに引き続き日本各地・世界で実証実験や新型機体の発表もあった一方、運航会社が開発企業から機体を受注したニュースや国内での運航に向けたルート構想の発表も飛び込んできました。
空飛ぶクルマ開発に取り組む企業の決算発表もあり、徐々に空飛ぶクルマが生み出す経済効果も明らかになってきています。
今月も国内と海外に分けて、空飛ぶクルマに関する最新情報をお届けします。
【国内の空飛ぶクルマニュース】
1.株式会社SkyDrive、米運航会社から空飛ぶクルマを10機受注(11/20)
「空飛ぶクルマ」を開発する株式会社SkyDriveは20日、アメリカのプライベートジェット運航会社・SAIフライトから、10機の購入予約を受けたと発表しました。
SkyDriveは静岡県磐田市のスズキグループ工場で、3月から機体製造を行っています。開発しているのは操縦士を含む3人乗りの機体で、最大時速は100km。航続距離は15〜40kmとなります。
これまでに韓国やベトナムの企業などとも契約しており、これで予約数は計273機に。納入は2026年以降になる見通しです。
SkyDriveは量産に必要な「型式証明」を日米で26年以降に取得し、商用運航を始める方針を掲げています。日本で開発された機体が、日本の空を飛ぶ未来が楽しみですね!
2.加賀市、ドローンやeVTOLなどの次世代エアモビリティに関する産業集積を目指すコンソーシアムを設立(11/26)
石川県加賀市は26日、「加賀市次世代エアモビリティコンソーシアム」を設立しました。
このコンソーシアムは、日本航空株式会社(JAL)や国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)をはじめとした全国トップレベルの産学官金のエアモビリティ関係者が一堂に会し、国家戦略特区である加賀市におけるエアモビリティに関連する取り組みの促進や、空の産業集積を目指し、情報共有や共通課題について議論を行う場として立ち上がりました。
2024年11月26日に開催された設立総会では、会長として法政大学大学院アーバンエアモビリティ研究所所長の御法川教授の就任を決定。また、基調講演も実施しました。
加賀市では10月に機体の開発や試験飛行に取り組みやすい環境を整備する「フリードローン特区」を宣言するなど、「空の産業集積」に向けて取り組みを進めています。
全国各地で実証実験が進む空飛ぶクルマですが、この動きに加賀市がどのように関与していくのか、注目が集まります。
3.一般社団法人「MASC(マスク)」とAutoFlight、2トン級eVTOL「V2000CG」の日本初飛行に成功(11/29)
一般社団法人「MASC(マスク)」は11月29日、中国とドイツの合弁会社「AutoFlight」が製造するeVTOLの試験飛行を岡南飛行場(岡山市南区浦安南町)で行いました。
今回飛行したのは2トン級eVTOL「V2000CG」。これは約350kgまで荷物を載せることができ、MASCがこれまでに飛行実験を行ってきた機体のうち最大の積載量を誇ります。これまで同機体は中国での飛行を行っており、国外では初の試みとなりました。
このeVTOLモデルは瀬戸内地域で貨物輸送から旅客輸送、医療支援、観光サービスまで、さまざまな役割を果たす態勢を整えており、日本での商用運用への道を加速させるとされています。
日本で空飛ぶクルマ導入の動きが始まった当初から開発や実証実験に積極的に取り組んできたMASC。今後も日本での空飛ぶクルマの社会実装を牽引していくことでしょう。
4.日本企業・テトラ・アビエーション、新型eVTOL機「teTra Mk-7」を発表(12/2)
日本のeVTOL開発企業・テトラ・アビエーションは2日、新型eVTOL機「trTra Mk-7」を発表しました。
この機体はテトラがこれまでに開発してきた機体を基に、量産型として完成度と信頼性を大幅に向上させたもの。二酸化炭素の排出を抑える電動機構を採用した環境に優しい設計となっており、持続可能な社会の構築に貢献するとともに、都市部や山間部などの狭いスペースでも運用できるとして注目されています。
また、テトラは「Mk-7」を販売するだけでなく、エアタクシー事業として展開する計画も示唆しています。都市部と郊外をつなぐ次世代の移動手段を普及させ、低空域経済圏に新たな価値を提供するとのこと。
「Mk-7」が今後どのように業界に影響を与えるのか、テトラがどのような事業を構想するのか楽しみですね!
5.株式会社SkyDriveとOsaka Metro、ポスト万博に向けて空飛ぶクルマ「大阪ダイヤモンドルート構想」を発表(12/17)
株式会社SkyDrive(以下、SkyDrive)と大阪市高速電気軌道株式会社(以下、Osaka Metro)は17日、市場調査等の結果を踏まえ「新大阪・梅田」「森之宮」「天王寺・阿倍野」「ベイエリア」の4つのエリアを重要エリアとして選定し「大阪ダイヤモンドルート構想」として発表しました。
これらは大阪・関西万博後の空飛ぶクルマの社会実装を見据えて発表されたもの。
SkyDriveとOsaka Metroは2024年8月、2025年大阪・関西万博後の大阪エリアでの空飛ぶクルマを用いた事業化に向けた検討を行い、空飛ぶクルマの社会実装を目指すことを目的に、業務提携契約を締結していました。
その後ニーズ調査や離着陸場候補地等に関する検討を重ね、4つのエリアを選定し、今回の「大阪ダイヤモンドルート構想」として発表するに至ったといいます。
エリアには大阪の美しい景観を楽しむことができるポイントや、主要観光地へのアクセスがスムーズになる場所をメインに選定されました。空飛ぶクルマを利用することでパーソナルな空間で空からの眺めを楽しむことができ、移動時間そのものが特別な体験となるとしています。
2者は今回の構想をもとにまずは2028年を目途に森之宮エリアでのサービスを開始し、2030年以降に向けて、サービスを順次拡大することを目指すとのこと。万博までおよそ4ヶ月。大阪近郊・関西エリアからどのように空飛ぶクルマの社会実装が広まっていくのか、楽しみですね。
【海外の空飛ぶクルマニュース】
6.Horizon Aircraft、ハイブリッドeVTOL「Cavorite」プロトタイプ機でのトランジション飛行に成功(11/21)
カナダのeVTOL開発企業・Horizon Aircraftは、自社が開発するプロトタイプ機での完全なトランジション飛行に成功しました。
今回試験を行ったのは、ハイブリッドeVTOL「Cavorite」。自動離陸、自動前進、自動着陸までを実施し、シミュレーションと実際の機体の機能の違いを確認しました。
結果は、すべての飛行状態をスムーズに遷移することに成功。今後もHorizon Aircraftは、実世界で使用可能なeVTOLの製造とテストを続けていくと宣言しています。続々と試験をクリアしていく「Cavorite」が私たちの上空を飛ぶのはいつになるのか、期待が高まります!
7.EHang、2024年7~9月期決算を発表。市場予想を上回る売上高に(11/28)
中国のeVTOL(電動垂直離着陸機)メーカー「億航智能(EHang、イーハン)」は11月18日、2024年7~9月期の決算を発表しました。
総括としては、中国で成長する「低空経済」の追い風を受けて大幅な増収増益に。主力製品の自律飛行型eVTOL「EH216-S」の販売が好調となり、売上高は前年同期比347.8%増の1億2800万元(約27億円)と市場予想を上回る過去最高を記録しました。
「低空経済」:主に高度1000メートル以下の低空域でeVTOLやドローンなどを駆使し、地域レベルの航空旅客輸送や航空物流の発展、関連産業の育成などを図る経済活動
また、純損失は28.3%減の4810万元(約10億円)調整後の純利益は1570万元(約3億3000万円)となり、2四半期連続の調整後黒字を計上しています。
EHangは11月14日に、中東の投資機関などから2200万ドル(約34億円)の戦略的資金調達を完了したことを発表したばかり。10月以降の決算にも注目が集まります。
8.Eve Air Mobility、最大50機のeVTOL機を米Helicopters社から受注(12/5)
5日、ブラジルでeVTOL開発を行うEve Air Mobility(以下、Eve)は、アメリカのHelicopters Inc.から電動垂直離着陸機(eVTOL)を受注しました。
今回の契約では、Helicopters Inc.が最大50機の機体をEveから購入することで合意。
Helicopters社は、全米30以上の都市圏で安全に航空機を運航しているリーダーとして認められており、このような信頼できる垂直離着陸機オペレーターを当社の顧客リストに加えることができてうれしく思います。彼らの米国での広範な事業の一環として、当社の全電動eVTOL機の導入に協力できることを楽しみにしています。
と、Eve Air Mobilityの最高商務責任者であるメガ・バティア氏はコメントしました。
また、この契約によってHelicopters社は、eVTOL運用を効率化するように設計されたオールインワン・ソリューション・スイート「Eve TechCare」も利用できるようになります。
ヘリコプターチャーターを運営するHelicopters Inc.が今後どのようにEveの機体を運用していくのか、楽しみですね!
9.United Aircraft、観光から救助、物流に対応するティルトローター機「Lanying R6000」を開発(12/6)
ロシアでeVTOL開発を行うUnited Aircraftは6日、独自に開発した6トン級のティルトローター機「Lanying R6000」を発表しました。
R6000はヘリコプターの垂直離着陸(VTOL)能力と固定翼機の高速巡航能力を組み合わせた航空機であり、これまでのeVTOLをも超える優れた速度・航続距離・積載能力を持つため、下記のような活用が期待されています。
観光への利用
6~12名を収容できる柔軟な座席配置と積載量により、これまでにない「空飛ぶクルマ」体験を提供。高級ビジネスや家族旅行において快適でプライベートな空間を創造できる。
全地形対応の、多目的飛行任務
様々なミッション要件に応じた装備を搭載可能で、全地形・全天候下での飛行運用を実行できる。
緊急救助|Air 120
必要に応じて、2~4名の負傷者と4名の医療スタッフを収容可能。捜索救助や医療機器を搭載し、緊急時に迅速な対応・展開が可能。捜索救助や負傷者の搬送を確実に実行する。
貨物輸送|効率的な物流ソリューション
最大2トンの積載能力と7.6m³の貨物スペースにより、高価値商品の輸送要件を満たす。ポイント間の効率的かつ長距離輸送が可能で、都市間の物流や特殊地形での輸送に適している。
難しい地形や狭い都市空間でも多様な任務を容易にこなすことが可能なR6000。都市交通に、新たな可能性をもたらすことでしょう!
10.Joby Aviation、韓国でのeVTOLのテスト飛行に初成功(12/14)
アメリカでeVTOL開発を行うJoby Aviationは、韓国におけるエアタクシーの商業化を支援するために企画された「K-UAMグランドチャレンジ」の一環として、韓国でデモ飛行を行い、成功しました。
首都・ソウルのような人口密度の高い都市や、済州道のような自然の障壁が地上交通を複雑にしている遠隔地など、韓国においても空飛ぶクルマによる移動改革の可能性は注目されています。
そこでJobyは、SKテレコム、ハンファシステムズ、TMAP、韓国の空港の大部分を運営する韓国空港公社を含むコンソーシアム「K-UAMドリームチーム」の一員として、グランドチャレンジに参加しています。
1週間にわたり、完全な有翼飛行を含む様々な飛行プロファイルと飛行条件を実証する様々なミッションを実施・成功させ、韓国での将来の商業運航開始に先駆けて、韓国のパートナーと協力する姿勢も示しています。
これでJobyは韓国での耐空証明を取得し、米国と日本に続き3カ国での耐空証明を獲得したこととなります。世界中で空飛ぶクルマの開発が進む中、トップを走り続けるJoby Aviation。韓国ではどのように市場を広げていくのか。次はどの国で耐空証明を獲得するのか、楽しみですね!
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