僕が古民家をあきらめ、新築を選んだ理由(2)
前回の続きとなる第2回は、マンションリノベでつまづいた住宅ローンの話を書きたい。
銀行は人と建物を選ぶ
ここまでの経験で分かったのは、住宅ローンは「低所得者の味方をする仕組みではない」ということ。
かなりのお金を長期かつ低金利で貸す住宅ローンは、銀行の立ち場からすると「儲けが少なくてリスクの高い」金融商品。
だから銀行は、返済できるか怪しい人(=低所得者)には貸さないし、返済が滞ったときは家を差し押さえて現金化するので、お金にならない家(=古いマンション)には関わりたくないのだ。
つまり、銀行は人と建物を選ぶ。
これは銀行が営利企業である以上しょうがないんだけど、「日本人の新築志向」がこの話に凝縮されてるし、新築が好きだから新築を選ぶという単純な話ではなく「新築の方が楽だから、新築を選ぶ」という事情にも気付く良いきっかけとなった。
低所得者の味方、フラット35
銀行以外の選択肢を探し始めて、ほどなくたどり着いたのが「フラット35」。これは簡単に言うと、国がやっている住宅ローンなんだけど、「どんな人でも良質な家が持てるよう、国がお金を貸しますよ」という何ともありがたい仕組みだ。(※実際には、国ではなく住宅金融支援機構という公的機関が運営しています)
銀行のように「最低年収いくら以上」という足切りがなくて、当人の収入が低くてもOKだし、なんなら持病を持ってても貸してくれるし、ほんと誰にでも分け隔てなく貸してくれる。で、「さすが国のやってる事業!すごい!うれしい!」と思ってると落とし穴が待っている。
旧耐震のマンションでは、ものすごく使いづらいのだ。
フラット35で旧耐震は難しい
結論から言うと、フラット35でも旧耐震のマンションは買える。ただ現状の業界システムだと、買うまでにメチャクチャ苦労することになる。。。
フラット35のHPにはこう書いてある。
つまり、旧耐震のマンションでもいいけど、その場合は「耐震評価基準に適合してるか自分で証明してね」ということ。で、この耐震適合証明なるものが苦労の原因だ。
旧耐震は銀行から門前払いされる
フラット35の運営元は国なんだけど、融資の窓口は民間の金融機関で、相談のために銀行へ行くと、かなりの確率で、
「え、旧耐震?だったらフラット35は使えません。」
と門前払いされる。少なくとも地方銀行はまったく取り合ってくれない。どうやら銀行的にはフラット35で貸す旨みもないし、取り扱い事例もほぼ無いから、面倒なことには手を出さない方針なのだ。
唯一ちゃんと話を聞いてくれるのが、ARUHIという金融機関。ここはフラット35を専門に扱っているから、ノウハウが膨大にあるようで、担当者が親身に相談に乗ってくれる。他にもリノベ資金も併せて借りたいなど、状況によって適切なアドバイスをくれるから、旧耐震マンションで困っている人がいたらARUHIへ相談するといいと思う。(※別にアルヒの回しものではありません…)
不動産屋は売りやすい人に売りたい
旧耐震か新耐震かに関わらず不動産屋に住宅ローンの相談をすると、自身の会社が懇意にしている銀行をオススメしてくる。ただ、その銀行へ相談に行っても、断られ失意のまま帰ることになる。そこでフラット35ではどうか?という話をしても、不動産屋はだいたい動いてくれない。
「旧耐震の安いマンションを、低収入でフラット35で」というイレギュラーな人と相手するよりは、現金で即買ってくれる楽な人に売りたいということなんだろう。まあこれも市場原理というか営利企業の宿命だろうし、どうこう言っても始まらないので、フラット35のことは自分で調べる以外に方法がないように思う。
耐震適合をクリアするだけではダメ
旧耐震の中古マンションを買ってリノベしたい方(=以前の僕のことです)は、必ず耐震適合証明の壁に当たると思うんだけど、それを見越して、マンションリノベが得意な建築家、もしくはリノベ会社に事前に相談するのが吉かと思う。
僕の場合、以前お付き合いのあった建築家に、旧耐震の適合証明が取れないか相談をしたんだけど、その方は適合証明技術者という資格を持っていたので、かなりスムーズに調査が運びそうな雰囲気だった。
で、これなら行ける!と思ったんだけど、ここにも落とし穴があった。
格安でいい物件を見つけても、旧耐震だから耐震適合の調査が必要だし、リノベ費用の見積もりや、融資の相談など下準備に時間がかかってしまう。そうこうしているうちに現金で買うという方が現れて、THE END。。。
そんなことが数回続くと、「こんな不毛なことを続けて何の意味があるんだろうか…」という気持ちになってきて、途中から物件探しに気が入らなくなった。
そんなある日、ネットを徘徊していたら「狭小住宅」を特集した記事を見つけて開眼した。お金がないなら、ちいさな家に住めばいいのではないか。世の中が新築至上主義で動いているんなら、こっちもそれを逆手に取って、新築で立ち向かえばいいのではないかと。
ということで次回は「新築という、古くてあたらしい選択肢」について書きたいと思う。
住まいの選択肢を広げるべく、理想の家を探す旅をしています。