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骨髄ドナーになりました

先日、骨髄バンクのドナーとして、骨髄提供をしてきました。

手術の前も後も、友人知人に話すと殆どの方が褒めてくれます。痛そうで怖いのに凄いね、勇気があるね、と。

その言葉を有難く受け取りながらも、ずっとモヤモヤした気持ちがありました。人のために骨髄ドナーになろうと思ったわけではないからです。そして、全てが終わった後、ますますその気持ちが強くなりました。

私は自分自身のために骨髄ドナーになりました。
骨髄ドナーは高尚なボランティア精神を持った人だけがなるものではありません。そんな気持ちを書き残しておきたいと思います。


骨髄バンクのドナー登録をした理由

きっかけは飲み屋で友人とのふとした会話からでした。

とことん長生きしたいと語る友人に対して、

「明日死んでも特に悔いはないし長く生きてやりたいこともないから、自分よりもっと生きたい人がいるなら換わりたい。」

そう言った私に、それなら骨髄バンクに登録してやれ、と教えてくれたのです。恥ずかしながら、日本臓器移植ネットワークの意思表示カードは早い段階から取得していたので、なんとなくその手のボランティアは全部やっていた気になっていて、骨髄バンクのことをよく知りませんでした。

早速、翌日骨髄ドナーについて調べ、献血センターへ行きドナー登録をしました。それが今から4年ほど前のことでした。


自己犠牲ではない

「自分よりもっと生きたい人がいるなら換わりたい」というのは自己犠牲の精神ではないのです。

生きたいと強く願う人が生きられる世の中になって欲しいという思いがあるだけです。生きるのはそれなりにしんどいし、楽しく生きるためには頑張らなきゃいけないこともあるし、生きるのってちょっと面倒だよね、と思っている私より生きたい人がいるなら生きるべきだと。

骨髄バンクは絶対的に生きたい方々が、骨髄の提供を待っています。
であれば、提供できる骨髄を持っていればそこに提供して当然だと思いました。


好きな世界で生きていたい

人とのコミュニケーションは苦手だし、気を抜けば生きること自体がしんどくなる私にとって、自分の世界が好きなもの、好きなことで溢れていることはとても大切です。

困っている人に手を差し伸べてくれる人は大好き。
ちょっと至らないことがあっても許してくれる人も大好き。
そんな人であふれる優しい世界だったら生きていて楽しいはず。
今、私が感じている世界は理想どおりではないかもしれないけど、理想に少しでも近づいて欲しい。

そのためには楽しい世界を作るのに自分も行動しなくてはと思います。
だいぶ飛躍して聞こえるかもしれませんが、骨髄ドナーになるということは私が好きな世界で生きるための選択肢でした。


骨髄ドナーは結構忙しい

脳死後に提供する臓器と違って骨髄ドナーは多くの通院と入院を伴います。

・候補になってからの健診
・骨髄ドナーに選ばれてからの最終同意面談
・術前健診
・自己血採取(2回)
・PCR検査
・入院(3泊4日)
・術後健診

末梢血幹細胞の方は上記と異なりますし、同じ骨髄ドナーでも自己血採取の回数は異なりますが、ざっくり書くとこんな感じで、骨髄ドナーになってからは約3か月ほどの間に予定が詰め込まれました。


思った以上に優しい世界

もちろん通院は平日なので仕事に影響が出ます。
私はデスクワーク系の会社員で、上司と後輩達のサポートのおかげで、すべてのスケジュールをこなすことができました。
また、入院には有給休暇を使おうと思っていたのですが、総務部のマネージャーが事前に根回ししてくれて特別休暇をもらいました。

ついでに言うと猫を飼っていたので入院中は実家に預かってもらいました。

骨髄ドナーになると言っても私が1人でなりたい!と言ったところで実現できるものではなく、実際には多くの人たちの手を借りて骨髄ドナーになることができました。

そして骨髄バンクのコーディネーターを始め、病院でお会いする方々がとても優しくしてくれます。骨髄ドナーと会えるのが楽しみと言う方までいるくらいです。びっくりするくらい関係者の方々が1人1人、お礼を言ってくれました。


愛に溢れた幸せな体験

普段生活していると、迷惑をかけていないかとか、不快にさせていないかとか、そんな不安が常に頭のどこかに存在し続けている気がします。けれど骨髄ドナーとして体験した世界は、そんな不安も殆ど感じない世界でした。

骨髄ドナーに選んでくれてありがとうございます。

沢山の感謝の言葉を受け取りましたが、私は逆にお礼を言いたいです。
人々の優しさは私個人ではなく、「骨髄ドナー」に向けられたものかもしれません。けれど、人の優しい面を、世界のポジティブな部分を改めて認識できました。そして、こんな素敵な体験をできた自分は幸せだと思いました。


いろんな人に体験して欲しい

きっと私が書いた文章を読んでも、ありがちな感想だなと思う方もいるでしょう。何故そんなに幸せだと思ったのか想像がつかない方もいるかもしれません。痛いかも、健康に影響がでるかも。そんな恐怖もわかります。

けれど、是非いろんな方に骨髄ドナーになってみて欲しいと私は思っています。

この記事は体験レポではないので書きませんでしたが、元気な状態で入る手術室ゾーンは医療ドラマに入り込んだみたいでわくわくしましたし、入院中に起きた小さなおもしろ体験みたいなのもいろいろありました。

ただの好奇心でも私みたいな拗らせた自己承認欲求でも、きっかけは何でも良いと思います。興味を少しでも持ってもらえたら、是非骨髄バンクのHPを読んでみてください。

日本骨髄バンクの公式HP

聞いてみたいことがある方がいましたらお気軽にどうぞ!
骨髄ドナーが少しでもより身近に、興味を持ってもらえる存在になったら幸いです。


2021年9月11日
骨髄等移植ドナー支援助成金の申請書提出を終えて

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