滅びの絵本 Minute of Islands
E3の間にPC Gamerか何かの記事で見たSSでハートをわしづかまれまして、サマーセールのついでに買いました。手書きのイラストが超絶美しい平面横スクロールポイントクリックAVGというくくりになるかな。でも絵本を読むような感じだと思っておくといいかも。日本語字幕完備。とてもよいローカライズです。
出たばっかりなんでセールにはなりませんが、まあそんなに高くないから大丈夫。だし、このビジュアルのためにプロパー出すのは私は惜しくなかった。
Minute of Islandsはこんなゲーム
あなたはとある世界の諸島部、ボアン島の地下に暮らす、モーという女の子。エクソダスと呼ばれる恐ろしい大変動が起きたあと、この諸島は有害な胞子が舞うようになりました。諸島には人のほかに巨人が住んでいます。地下にはびこる謎の有機的な仕組みを動力源に、巨人は色々なものを発明してきたようです。その中の一つに、この胞子を居住区域から遠ざける換気装置もありました。モーは彼らの弟子であり、現在の諸島には4人の巨人がいます。彼らは分担して、諸島全体の換気装置を(巨)人力で動かし続ける役目を負っていて、モーは彼らからオムニスイッチという特別な道具を授かり、修理や監視など、巨人ができない部分の仕事を手伝っているのです。
そんなある日、機械の駆動音が全く聞こえなくなりました。換気装置が止まっているのです。同じ島に住む巨人、セファンの様子を見に行くと、彼は機械を動かす手を止め、息苦しそうにぐったりしています。他の3人にも、何かあったに違いありません。そして、換気装置が止まったということは、島に住む人々や動物たちの命が危険に晒されているということ。
モーは島を救うべく、原因を探しに島々を渡ることにしました。
長い。でもまあこんな感じだと思う。なんとなくナウシカを思い出す感じの世界観と、その有機的な謎の機械っぽいクトゥルフみが独特のタッチのイラストで描かれるのが本当にすごく良い。最初PC Gamerのツイート見たときはこの巨人と戦うんですか!!!って思ったけど全然そうじゃなかった。
とにかく病的に美しい世界の描写がすばらしくて、次はどんな世界を目にすることができるのかとかなり夢中で進めてしまいました。本当にきれい。
Minute of Islands、ここがいい
・きれい(独特だけど)
わりと動物の腐乱死体も出てきますし、こういう病んだ感じが苦手な人にはだめかもしれないけど、私にはぶっ刺さりました。余計なことは言うまい見てください。はい。
な。
パズル要素やアクション要素はあるにはありますが、基本的には一本道で、ゲームらしいゲームを期待するとハズレ感が出てしまいそう。ちょっと仕掛けのある大人向けの美しい絵本を読むような気持ちで臨むのが、きっとちょうどいいです。
・日本語訳がよい
ちょっとだけ「えっ」てなる部分があるにはありますが、9割がた良い。口調もナレーションの雰囲気にとてもよく合っているし、英語特有の言い回しも無理なく日本語に落とし込んであって、とても気持ち良く読めました。
先日なんか日本はマーケットとして捨てられててうんたらみたいなついーよが話題になりましたけど、こういうインディーでもこれだけクオリティの高い日本語用意してくれるのに何言ってんだろ感があります。
ジャンルによってはわかるんですよ、特にスマホ向けとか機械翻訳貼り付けてんじゃねえぞ!!!!ってなるやつありますから。TESブレイズとかTESブレイズとかTESブレイズとか。
なので市場全体としてよりも、多分お値段が張る日本語ローカライズの費用対効果で判断してるだけじゃないのかなあとは思うんですよね。主語の最大化はよくないのでやめよう。他山の石他山の石
アジアの主要言語グロスでお安く引き受けますよみたいなとこに頼んで機械翻訳ばりばりになるぐらいなら、タダだけど作業所だけはこっちで用意するからっつって有志翻訳募ってくれよと思ったりしますけど。
Minute of Islands、ここが残念
・もう少し掘り下げてほしかった
彼女がどうしてこんな暮らしをしているのかとか、どうしてこんな言動しちゃうのかみたいなことはだいたいわかるのです。が、そのクトゥルフみのある地下の何かはなんなん!とか、巨人と彼女の結びつきとか、もう少し丁寧に描写や説明があると、なおよかったかなあと思いました。
なんかDLCで後日談とか、その辺掘り下げ用前日譚みたいなのがあったらいいなあ。出ないかなあ。って待ちたくなるぐらい、このゲーム世界は魅力的なので、好評なら作ってもらえるかもしれない。売れろ。
・操作がちょっとかったるい
WASDの民なものですから、カーソルキーで移動だとなかなかにイーッ!!!ってなるんですよね。ただ、マウスは使わないので、デフォルトのキー設定が不自由というわけではありません。でも、キーバインドを編集可にしてくれると嬉しかったなって感じ。
それと、移動速度がちょっと遅くて、イラチにはじりじりしちゃうのが多少ストレスではある。まあでもゲームの雰囲気的に彼女はこのぐらいでてくてく歩いてくれる方がよい。
また、ゲーム中に記憶の欠片を集めるところがあって、さほど難しいものでもないんですが、クリア後にチャプター選択ができないので、取り漏らしするとちょっと面倒な感じ。とはいえこれもゲームの内容やプレイ時間の短さを考えると、まあ取り立てて問題じゃないかな。
と言ったうっすらした不満にもならない不満はあるのですが、私としてはこのビジュアルのために2050円払ったので全然平気。本当にすべてをカバーする美しいグラフィックとナラティブで私は満足です。
まとめ
細かい感想を言うとネタバレにしかならなくなるし、出たばっかりのゲームにそれはあまりよろしくないので心が苦しい。
こう、極力やんわり遠回しに言うと、頼まれてもないのに何でも背負い込んだ夜郎自大感って、まあ若い頃に覚えがありますよねうんうんわかるつらいよね。みたいな。ちゃんとそれに対するカタルシスも用意してあったし、それがまた大変悲しく美しいものだったから、何度も言いますけど大人向けの絵本としてよい一作だと思いますほんと。
・きれい。
・ありがとういい日本語。
・セールを待ってもいいけど、絵本を一冊買うと思えば待たなくてもそんなに高い買い物ではない。
・GRISが好きな人は多分刺さる。Hyper Light Drifterなんかもビジュアル的には近い。アクション性は求めてはいけない。
・モーちゃんと同年代のプレイヤーは身につまされるし、私のようなBBAになると母心みたいなのでもう痛々しくて見てらんないみたいな気持ちになると思う。なんか心がざわざわしてよい。