"All the Bright Places"
『最高に素晴らしいこと』から学んだレッスン:
①"There are bright places, even in dark times. And that if there isn't, you can be that bright place... (:" どんなに暗い時期でも、輝く場所や&瞬間はある。でもどこにも見当たらないというなら...自分がその光になれば良いのだということ。
②人との出会いは新しい世界との出会いであり、何より新しい自分との出会いだということ。「You brought me spring」「I feel a thousand capacities spring up in me」
③自分は愛する人の良きパートナーになるどころか、傷つけてばかりで悪い影響を与えていると思い込んでいても、相手が自分と一緒にいたいと願っている限り、自分の存在も相手にとってプラスになっていると信じて良いということ。
つまり、完璧じゃない自分を認めることで自分も周りも幸せにできるということ。
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エル・ファニング演じるVioletは姉を交通事故で失ったトラウマを抱える女子高生。そんな心の傷を抱えた彼女に近づいたのが、学校では他の人と群れない一匹狼の「変人」扱いされている同級生のFinch。強引に接近してくる彼にはじめはVioletも警戒するけれど、哲学的なところや、トラウマを乗り越えようと新しい世界を見せてくれるうちに心惹かれていく。そして心に傷を抱えたもの同士は付き合い始めるが、実は幼少期に父親から暴力を受けたトラウマを抱えるFinch君の心の闇の方が深いことが物語後半より明らかになる。
私はFinchに似ている。Violetを連れ出すために彼女の家の庭に寝転んで両親に直談判するプロテスト?したように、目的達成のためには少々強引な手を使うところ。彼みたく数日間姿を消す、とまではいかなくても、気分の浮き沈みが激しいところ。そして感情が昂ってしまった時に制御不能になってしまうところ。
"Finch was a dreamer. He dreamt while he was awake. He dreamt of all the beauty in the world, and he made it come to life."
気持ちのコントロールができているときのFinchは言葉のユーモアセンスが巧みで、自由な発想ができるアイデアマンだ。性格だって、姉の死で塞ぎ込んでいたVioletよりも明るい。けれど衝動的に後先考えず行動して他人を傷つけてしまった時、彼はショックと自責の念のせいで自暴自棄な"Freakー怪物"になる。そして自己の剥離に苦しんだ彼は、遂には「死」という道を選んでしまう。
人が死を自ら選ぶ瞬間は、自己実現という「夢」を信じることが困難になったときだと思う。Finchの場合、一番大切にしたいはずの人を大切にできなかったり、怒りに身を任せて同級生を殴ってしまう「現実」の自分が夢の中の自分とあまりに違ってしまっていた。だから彼はもう生きていくイメージをできずに、この世を去ってしまったのかもしれない。
衝動的に行動する人は、普通の人なら起こさないトラブルを起こし、「自分は何でこんなに身勝手なんだろう」と自責して自信を失う。だからFinchはいきなり長期で音信不通になって周囲に心配をかけたあと、冷静になって信頼を取り戻すために周囲に平謝りを定期的に繰り返していた。また、姉を交通事故で失ったせいで「死」に対して人一倍敏感になっているVioletに何も前置きせず湖から長時間潜り続けたせいで彼女に溺れたんじゃないかと心底心配させてしまい、「君を怯えさせるなんて、一番したくないことだったのに」と自分の行動にショックを受けた。そして、学校で急に暴力的になった自分のことを心配して会いに来てくれたVioletを「帰れよ!」と怒鳴って追い返し、「あなたに帰ってきて欲しい」と願う彼女の本心を知る前に死を選んでしまった。
Finchのことを知るにつれて、彼は痛みを押し殺すように笑うことに気がついた。きっと自分の気持ちのコントロールが効かなくなって、誰かを傷つけてしまったり、好きな人が自分から遠ざかることが怖いんだろう、と思った。そしてその恐怖に耐えられなくなってしまったのだ。
Finchが死を選んだことは、善悪で判断することはできない。なぜなら彼の苦しみや痛みは彼だけのものだから。ただ、自分のやることが全て"messーグチャグチャ"だと絶望してしまう前に、 Finchに知っておいて欲しかったことがある。それは彼が人生に臆病になっていたVioletに前進する力を与えたということ。だから彼には死ぬ前に、愛する人を傷つけてばかりいたわけではなくてきちんと良い影響も与えていたんだよ、と知って欲しかった。
この映画は全体的にずっとトーンが暗い。トラウマを抱えるVioletは人生に対して悲観的だし、Finch君はなかなか改善しない自分の人格の問題に悩んでいるから。そのため鑑賞していてあまり気は晴れないけど、最後まで完走すると物凄いカタルシスを感じられる。なぜなら映画の最後にVioletが彼から学んだことをスピーチすることで、Finchの自殺を夢破れた人の辿る悲しい現実として終わらせず、彼の存在は「希望の光」のシンボルへと昇華されているから。彼の死は、人生は、無駄じゃなかったんだ、と。
この映画は多くのことを考えさせてくれた。そしてあくまで仮説にはすぎないけれど、物事を白黒で判断せず、自分よりも相手を優先することで、幸せな良い結果に繋がる可能性は高くなるのではないだろうかと考えた。なぜなら、もしFinchが死ぬ前にVioletの「確かにあなたは一緒にいるのが簡単な人ではないけれど、それでもあなたと一緒にいたい」という彼女の本心を知っていたら彼は死を選ばなかったかもしれない、と思うから。自分一人の思い込みで行動せず、相手の意見も聞き入れていたら、自分は完璧じゃなくても良いんだ、と自分で自分を許してあげられたかもしれない。そして自分の存在価値を見つけられていたら、Finchは人生を終わらせようとしなかったかもしれない。
Finchと同じ衝動性をもつ人間として、相手が自分と一緒にいたいと思っていようと、相手を傷つけてしまう自分が嫌いで自分にも周りにも優しくできない辛さは良くわかるつもりです。でも、「無意識に人を傷つけてしまう自分」という思い通りにいかない人生に苦しむより、「完璧な形じゃなくても誰かの幸福に貢献できている」事実を認めてあげていたら、Finch君自身と周りの幸せに繋がっていたのかな、と思いました。