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われは牛の子

 牛乳が好きでよく飲んでいる。

 両親も兄弟も日本人としてごく平均的な体格をしている中にあって、僕一人だけ身長180cmを超え、体重も80kg近くにまで成長した。

 その要因を考えると、実は僕だけ父親が違っていたみたいな隠された事情でもなければ、間違いなく牛乳の力によるところが大きい。生まれたばかりの頃こそ母乳を飲んで育ってきたが、その20倍くらいの歳月を牛乳を飲んで過ごしてきたことになる。もはや母親のおっぱいではなく牛のおっぱいに育てられてきたと言っても過言ではない。

 とにかく僕は小さな頃から常人の数倍の量の牛乳を飲んできた。特に中高生の頃は、朝昼晩の一食ごとに1リットルパック一本分の牛乳を飲み干していたほどである。冷蔵庫から次から次へと牛乳パックが消えていく様子に呆れ果てた母親からは、いちいちグラスを洗うのが面倒だからパックから直に飲みなさいと言われたり、父親からは、おまえがザルみたいに牛乳を飲んじゃうからうちは食費がいくらあっても足りないんだなどと嫌味を言われていた。
 
 そんな両親からの精神的な虐待とも言える仕打ちにもめげずにがぶがぶ牛乳を飲み続けていたのは、単純に牛乳が美味いからに他ならない。牛乳があればどんな食事も何倍も美味しく感じられる。実際、牛乳ほどどんな食べ物とも相性の良いドリンクを僕は他に知らない。

 牛乳はパン食と合うとはよく言われているが、牛乳の相方をパンだけに限定してしまうのは実にもったいないことだ。実際、牛乳は米食と合わせて飲んでも美味い。カレーライスに至っては、牛乳を添えることで辛さが程よくマイルドになるし、寄せ鍋に牛乳を投入してもちょうどよい味変になる。

 もっとも、この前会社で当たり前の顔をして昼食を食べていると「おにぎりと牛乳ですか?」と怪訝な顔をされてしまったので、そう思っているのは僕だけなのかもしれないが。

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