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このままだと日本は負ける!?――ドバイで目の当たりにした水素ビジネス最前線と日本の逆転チャンス

はじめに

こんにちは、Hydrogen to X(以下、Hx)のブログ担当です。私たちは「水素の情報発信」に力を入れ、より多くの方に水素の可能性を知ってもらう活動を続けています。

先日、サステナブルやインパクト投資に関心をもつスタートアップや支援者が集まる「インパクトシフト」というイベントに参加し、ブースを出展しました。そこでは通りかかる方々に水素の魅力を紹介しながら、急きょ“緊急HXラジオ”を収録することに。
生配信形式で録音したトークの中から、特に刺激的だった「中東での水素ビジネスの現状」と「日本の水素産業の課題」について整理してみました。


ドバイで目の当たりにした“水素ビジネス”の熱気

グリーン水素のネットワーキングイベント

話の発端は、あるメンバーがドバイに行き「グリーン水素のネットワーキングイベント」に参加したことでした。主催は日本の貿易投資促進機関であるジェトロ。UAEやサウジアラビア、カタールなど「メナ(中東・北アフリカ)」地域の大手エネルギー企業と、日本の水素関連企業を引き合わせるための場だったそうです。

「中東=化石燃料」というイメージが強いかもしれませんが、彼らは「次世代のエネルギーをどう育てるか」を非常に真剣に考えています。石油マネーで潤っている今だからこそ、将来へ大きく投資したい。その中でも特に注目しているのが“水素”、特にCO₂を極力排出しない「グリーン水素」だというのがイベント全体の印象でした。


進む中国勢と、日本の危機感

ところが、ドバイで見えてきたのは「中国の勢い」が圧倒的に加速している現実でした。

  • 太陽光パネルや水電解装置の分野で、中国が先行して大規模案件を次々に取りに行っている

  • 欧州の脱炭素施策とも連携しながら、巨大な投資額が動いている

実は、世界の水素プロジェクトのうち“最終投資判断(FID)”が下りる事例が増え始めているのは2023~2024年以降。しかし、その増加分の多くを中国が占めているというデータもあるようです。

つまり、2030年頃には「主要プロジェクトの大半を中国勢が押さえてしまうのではないか」という声が現地で聞こえてきたわけです。これは日本のプレゼンスが相対的に小さくなることを意味します。
「このままでは負ける」―そんな強い危機感がイベントの参加者の間でも共有されていました。


中東からの期待「日本はテクノロジーの国」

一方で、中東の方々からは「日本の技術力には大いに期待している」という声がしきりに聞かれたそうです。

  • 日本は緻密なモノづくり・エンジニアリングに強い

  • 大規模プロジェクトを安定的に動かす実績や品質面の信頼がある

「日本のメーカーや総合商社、エンジニアリング企業と手を組んでプロジェクトを回したい」というニーズも大きい。しかし課題となるのは、「誰が旗を振り、どこから資金を調達し、どう実働させるのか」という具体的な進め方。
総合商社もエンジニアリング企業も水素技術のメーカーも、日本には存在しています。それでも「各社がバラバラに動き、連携が進まない」ことで、結果的に中国勢に押されてしまっているのが現状のようです。


“技術”と“資金”と“旗振り役”が揃えばチャンスは十分

今回のトークで繰り返し登場したキーワードは「中東には資金がある」「日本には技術がある」「しかし旗振り役が見えない」。
特にグリーン水素のような新しいエネルギーインフラは、単一企業だけで成し遂げるのは難しい分野です。水電解装置メーカー、エンジニアリング企業、総合商社、投資機関、そして国の支援機関などが総力を合わせなければ、短期間での大規模導入はできません。

また、実際にプラントが完成しても運用や保守を現地でどう行うか、といった課題も山積。ここを中国企業は大量の人的リソースを送り込み、人海戦術で稼働率を確保してしまう。日本も「技術力で勝負」を標榜するのであれば、現地の文化やニーズに合わせた運用体制を構築する覚悟と、継続的な投資・コミットメントが必要になります。

とはいえ、これらのステップを着実に踏むことができれば「必ずチャンスはある」。中東側も「日本の品質や技術に期待している」とはっきり言っているからこそ、今こそ動くべき局面に差しかかっているようです。


オープンに情報を共有する大切さ

一方で「日本には水素専門のメディアがほとんど存在しない」という問題も指摘されていました。

  • 企業単独の情報発信(トヨタや川崎重工など)はあるが、全体を俯瞰して伝えるプラットフォームが少ない

  • 研究開発や設備投資などの“リアル”を伝える機会が限られている

海外と違い、日本の企業や研究機関は成功事例や技術ノウハウをオープンにしづらい傾向があります。その結果「何がどこまで進んでいるか分かりづらい」「社外の有望企業や技術と繋がりにくい」という課題を生み、ビジネスマッチングのスピードが遅れてしまう面もあるでしょう。

誰かが大きくまとめて旗を振ることで「日本企業同士のコラボレーションが進む→中東など海外投資家との連携が進む→現地での大規模プロジェクトが立ち上がる」という好循環が起きる可能性は高いはず。そこにこそ、今後の日本企業の活路があるのではないでしょうか。


まとめ:危機感はある、でも希望もある

  • 中国の勢いは凄まじく、このままでは日本は遅れを取る

  • しかし「技術力の国」として期待されているのも事実

  • 資金も技術もあるが、旗振り役と相互連携の仕組みが足りていない

今回のトークから浮かんだキーワードは「あと一歩」。カードは揃っているのに、組み合わせ方がまだ最適化されていない印象があります。だからこそ、まずは情報共有し、業界やステークホルダー同士で“つながり”をつくることが急務です。

私たちHxは「水素の情報発信ハブ」を目指しています。企業や研究機関、行政、そして何より水素に興味のある個人まで、垣根を越えたコミュニティづくりを推進していきたいと考えています。
「こういう技術がある」「こんな悩みを抱えている」「海外でこんな事例を見てきた」など、どんな小さな話題でも結構です。ぜひ一緒に語り合い、広げていきましょう。


最後に

イベント会場では多くの方々が足を止めてくださり、水素に関心を持っていることを肌で感じました。日本国内にも「水素社会ってどう進むの?」「今どんな技術があるの?」と興味を持つ方は想像以上に多いはずです。
とはいえ、水素にまつわる情報や議論の場はまだまだ限られています。情報がまとまりにくいからこそ、業界外の方にとっては参入障壁が高いとも言えます。

私たちHxは、そういった状況を変えたいと本気で思っています。これからも様々な方々と協力しながら、よりオープンかつ実践的な情報を共有し、水素の未来を広げていきたい。次回の配信やイベント出展なども随時お知らせしていきますので、ぜひチェックしていただけると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さんと一緒に、より明るい水素社会のビジョンを描けることを楽しみにしています。

Hydrogen to X(Hx)
「誰でも理解できる水素の魅力」をモットーに、ワークショップ・イベント出展・情報発信を行っています。
もしご関心があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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