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劇場版ドクターXをみて
今月「劇場版ドクターX」の公開が始まった。高校生の娘は熱心な「ドクターX」ファン。TVerで再放送があれば何回も見ていた。しかも役者さんの演劇を楽しんでいるだけではなく、登場する病名や治療方法、医療行為名などかなり覚えているのがちょっと怖い。熱心な医療系ドラマファンというのはそういったものだろうか。「ドクターX」の映画化が決まってから何回も見に行こうと娘に誘われたが、12月公開と聞いて年末ならまだまだ先、と思っていたのにあっという間にその12月になった。
でも私は映画を見に行きたくはなかった。米倉涼子さん演じる大門未知子は魅力的だし綺麗だしドラマは必ずすっきりする展開だし「映画でも、私、失敗しないので」らしいので患者さんが死ぬことはないだろう。けれど勧善懲悪的な流れと山場の手術シーンがあまり好きではない。それにドラマ「ドクターX」をそれほど見ていないので映画を十分楽しめない可能性もある。それでも、娘が「一緒に行く人がいない」というので結局一緒に映画を見ることになった。
映画が封切となってから初めての日曜日。朝8時過ぎの映画館は発券やドリンクを買う列が出来ていた。「劇場版ドクターX」はそのシネコンで二番目に座席が多い、大きなスクリーンが割り当てられた。前日には余裕で予約がとれた座席も今朝までにでかなり席が埋まったようで、40~60代あたりの年配の夫婦や家族が多く見に来ていた。映画の予告を山ほど見た後始まる本編。映画ならではのスケール感と、いつものドラマの光景が交錯する。スクリーン一杯に、皮膚へメスをいれる手術シーンが何度も映る。いつものキャストのじゃれあいには観客から笑いがもれる。やっぱりここは「ドクターX」が好きな人がドラマを共有する場なんだろう。最後、大門未知子が手術に向かう姿を見て、もう「ドクターX」は本当にこれで最後なんだろうと感じた。米倉さんの活躍と大門未知子の人気を重ねて見ていた気がする。米倉さんは治療が難しい病気にかかられているようで、そして大門未知子もドラマの中でかかった後腹膜肉腫も本当は再発率が高く一生付き合う病気だと聞いて、役と役者さんの境遇が偶然重なってしまったように思う。でも演じる米倉さんの目は、いつも以上の熱意を感じる手術シーンだった。エンドロールも「ドクターX」ファンならしんみりしてしまうだろう。映画が終わった後、後ろの席で見ていた女性は顔をハンカチで覆い席を立てない様子だった。
娘は「劇場版ドクターX」の予告編をみて予想していた展開があったようだが、当たらずも遠からずといったところだった。正直、映画としては物足りなさが残るものだったが、ドラマファンが集まる場としての映画なら納得できる。西田敏行さんはドラマ「俺の家の話」で認知症がすすんだ車椅子の人間国宝能楽師を演じていたが、その時より今回の蛭間院長のほうが声が弱弱しかったように思う。請求書を渡すメロンのシーン、晶さん演じる大柄の岸辺さんと西田さんのやりとりはコミカルで、いつまでも続くような気がしていたけれど、その点はすごく残念。でも、大門未知子は生き続ける。大門未知子でなくとも、米倉涼子さんが出演するものはまた見たいと感じる映画でした。