【資格】世界遺産マイスター取得記録④
前回に引き続き、世界遺産マイスター取得時の学習記録を書いていく。
今回は大問2に対して私がどのような対策を行なったのかを紹介する。
繰り返しになるが、あくまで私の対策方法であり絶対的なものでないことをご了承いただきたい。
前回の記事で学習の工程を以下のようにまとめた。
今回は主に4と、一部3, 5, 6に関連した内容ついても記載していく。
筆無精が続き、段々と記憶が薄れてきているがなるべく記憶を辿って書いていこうと思う。
4. 世界遺産関連の条約や憲章を読む(大問2対策)
私は大問2対策にはそれなりに力を入れた。なぜなら毎年ほぼ同様の問題が出題されるからだ。試しに問題文を見てみる。第54回は以下の通りだ。
第52回は次の通り。
見ての通り、毎回世界遺産条約について、指定された語句を用いて説明するよう求められる。この出題は遡れる限りでは変わっていない。(これから変更される可能性もあるため注意は必要。)
さらに指定される語句は、直近2回だけでも「従来とは異なる新たな破壊の脅威」が連続で出題されている。
これはサービス問題と捉えて差し支えないだろう。では、この親切な問題に私がどのように対策したのかを次節以降で述べていく。
世界遺産条約の読み込み
私はまず、世界遺産条約の全文を読むことにした。(ここでは私の取り組んだ順番で記載するが、次節の「過去に出題された語句の収集」から先に取り組むのも、条文読み込みの質が高まって良いかもしれない。)
条約は以下のような構成になっていることがわかる。
この時点ではざっくり条約の構成がわかれば良いだろう。
過去に出題された語句の収集
次に問題の傾向を探るため過去に出題された語句を収集した。ここでは2024年5月現在公開されている過去問全4回分を振り返ってみよう。
出題は上記の通り。見てみると、語句をある程度グループ化できることに気づく。さらに、前節で読んだ条約の章立てに基づいて分類できそうだ。『すべてがわかる世界遺産大辞典<上>』の第2版における「世界遺産の基礎知識」の章を参考にすると分類がなお捗る。
一部分類しづらいものもあるが、概ね上記の通りだろう。
<???>に分類した語句は条文にそのまま、あるいは近い形で登場しないため分類がしづらい。
まず、「機能・役割」については条文にそのまま現れる語句ではないため分類が難しい。しかし、『すべてがわかる世界遺産大辞典<上>』第2版の17ページには「また、世界遺産に社会生活の中で機能・役割を与えるべきという記述もあり、」とある。試しにこの文に登場する「社会生活」という語句を条文から探すと、2章第5条に次のように書かれている。
よって、「機能・役割」については2章に分類されるものとみて良いだろう。だが、この語句が実際に出題された場合は上述した通り「世界遺産に社会生活の中で機能・役割を与えるべきという記述」があるという点に言及できれば十分だと思われる。
次に「ユネスコ」も条文には登場しないが、おそらく世界遺産条約がユネスコ総会で採択されたなどの説明ができれば良いだろう。世界遺産の一般に関する語句のため、ここではあえて分類はしない。
(余談)
実を言うと私はこの出題がかなり気に入っていた。世界遺産条約について説明することが求められる問題の書き出しとして、非常に使いやすいからだ。前回の記事で、大問1における用語の具体と抽象を記載する方法について説明したが、大問2についても求められていることは「世界遺産条約について説明」することである。よって、出題された4つの語句だけの説明に固執せず、まずは世界遺産条約の抽象を説明する文言が欲しい。そこで世界遺産条約がユネスコ総会で採択された事実は、少なくとも私にとっては扱いやすかった。そのため、過去問練習や試験本番では毎回(「ユネスコ」の出題にかかわらず)次のような書き出しで始めていた。
この書き出しがどの程度採点に影響したかは不明だが、残りの文字数をさほど圧迫することもない安牌な書き出しと言ってもいいのではないだろうか。
回答方法の検討
続いて回答方法の検討を行なった。私は始めこの問題に回答のしづらさを覚えていた。前節で分類したように、出題される用語が別々の章にまたがっているため関連性が薄く、論理立った構成にすることが難しかったからだ。そこで、世界遺産条約の抽象を書き出しに据え、各用語にはついては別々の文・段落を作って書くことにした。私は次のような書き方をテンプレートとし、試験当日に構成に時間を取られないようにしていた。
語句の深堀
最後に語句の深掘りを行なった。前節のテンプレートに当てはめる説明を用意するという本大問における要の対策だ。
ここでは「従来とは異なる新たな破壊の脅威」についての私なりの対策を紹介する。この語句は毎回出題されているわりに、かなり注意が必要な語句だ。第52回試験の講評には次のようにある。
「新たな破壊の脅威」が「具体的にどのようなものか」が求められているということは、「文化遺産や自然遺産が従来とは異なる新たな破壊の脅威にさらされていたことを背景に、締結された条約である。」などの説明では不十分なのだろう。また、具体的に書こうとして近年の紛争など時代背景にそぐわないことを書くのもまた不適切ということだ。
加えて、講評には書かれていないが、財政的な困難も具体例としては適さないものと思われる。『すべてがわかる世界遺産大辞典<上>』第2版の16ページには次のようにある。
この文章構成から、資金不足は従来とは異なる新たな破壊の脅威には含まれないということになるだろう。
では「従来とは異なる新たな破壊の脅威」とは具体的に何か?テキストからは読み取りづらい。しかし、世界遺産条約の前文を読むと次のようにある。
これを踏まえると、「従来の脅威」=「衰亡」、「従来とは異なる脅威」=「社会的及び経済的状況の変化」ということになるだろう。「具体的に何か」という問いに答えられたかは定かではないが、少なくとも私はこの要素を元に概ね以下のように記述していた。
その他の語句についても同様に、テキストや条文を読み込みながら適切な回答を検討していった。あとは用意した回答を使って前述のテンプレートに当てはめながら過去問をこなすという寸法だ。
その他の条約について
世界遺産条約以外にもいくつかテキストに登場したドキュメントにも目を通した。これは大問2の対策というより、大問1で出題されうる語句に関する解像度を高めたり、大問3のネタ集めをしたりする目的だ。正直この対策はあまり役に立たなかったが、一応私が何に目を通したのかだけ紹介しておく。
①世界遺産条約履行のための作業指針
これは主に大問1対策として、『すべてがわかる世界遺産大辞典<上>』に書かれた要素だけでは説明しづらいと感じた用語を調べるために断片的に目を通した。ボリュームが多いため時間に余裕がない人はわざわざ読まなくても良いだろう。
②ユネスコ憲章
これは大問3向けに目を通した。第48回の試験で、「ユネスコの平和理念を踏まえ」という条件付きの出題もあったため、ユネスコのスタンスを押さえておきたかったからだ。
③ラムサール条約
これも大問3対策だ。当時過去4回の試験で自然環境にフォーカスした出題がなかったため、出題される可能性があると予想して読んでおいた。
④武力紛争の際の文化財の保護に関する条約
これも大問3対策として目を通した。当時パレスチナ関連の話題が持ち上がっていたため、関連した出題があるという予想をしたためだ。
今回は以上。次回は私なりの大問3対策について紹介する。