デザイン思考の落とし穴
昨年、神戸市の「Urban Innovation Kobe」(以下、UIK)内のプロジェクト内で、サービスデザインの講習を担当しました。
結果、職員の方にサービスデザインの価値をうまくお伝えすることができなかった、と考えています。その経験を振り返り、サービスデザインとはそもそも何か、サービスデザインの使い所など、考察をまとめてみました。
http://urban-innovation-kobe.com/
デザイン思考とはマインドセットである
神戸市の講習は、主に座学と演習でした。演習は、1日目にカスタマージャーニーマップ、2日目にサービスブループリントを参加者グループでつくってもらいました。
「このような講習では、アウトプットを完成させることより、なぜこの手法を使うか、何を得たいのかをはっきりさせることが、重要だと思います」
講習の目的や姿勢を参加者にお伝えさせていただきました。
ただ、そんな僕が用意した演習テーマが問題でした。
過去のUIKプロジェクトをテーマにした演習だったのです。
自らプロジェクトを担当していた人もいれば、プロジェクトの概要しか知らない人など、事前の情報量にかなりバラツキががありました。
サービスデザインをなぜ学びたいか、どこで使いたいかなど、参加者個々の必要性や状況にあまり言及することなく、サービスデザインの概要と手法を知ってもらい、ツールを使いこなすことに終始してしまいました。
だから、デザインツールの使い方はわかったけど、サービスデザインの意義がわからない。という結果になってしまいました。
デザイン思考はあくまで、マインドセット(考え方の枠組み)である、ということをより伝えるべきでした。
そして、一方通行で教えるより、実際のプロジェクトを伴走しながら、マインドセットやツールをプロジェクトチーム内に醸成するほうが大事だと思いました。
不確実な未来と向き合う「思考と試行」の循環型アプローチ
「カスタマージャーニーマップはつくったけど…」
「デザイン思考を取り入れたけど…」
「サービスリリースしだけどグロースしてなくて…」
サービス開発の現場で、デザインアプローチを使ったけど、うまくいってないという現状に直面しているという話をよく聞きます。
その度に、「デザインアプローチは循環型」とお伝えさせてもらっています。
全体と細部、具体と抽象を行ったり来たりし、問題の深掘から大局的な課題設定、解決案を素早く試し、アップデートしていきます。
「思考と試行」のセットは、理想や課題が不確実な場面に、大きな効力を発揮します。
だから、差し迫った課題(問題の場合が多い)と解決策(落とし所)がわかっている場合は、問題解決アプローチ=直線型のほうが、課題解決の確率が高くなります。
循環型アプローチは、落とし所が手探りで、時間もかかるため、時にモヤモヤ・イライラしたりもします。(チームの信頼がとても大事)
しかも、コアユーザーの課題を定義して洞察を深めていくため、別ニーズへの提供価値拡張(アップグレード=高さ)や対象ユーザー以外への拡大(ヨコテン=広さ)が簡単ではないことがあります。
まして、行政サービスのユーザーは住民であるため、子育て世代や高齢者など特定のユーザーの課題に、公平なサービスを提供します。
特定ユーザーへ政策をアップグレードしたり、対象ユーザー以外にヨコテンしていくのがやっぱり難しいわけです。
対話による合意形成を促す
では、サービスデザインは、どこで・どのように活用するのか?
先述のようにサービスデザインは、循環型アプローチであるため、プロジェクトのコアメンバー・ステークホルダー・ユーザーの対話を促し、新しい価値共創の際にその価値を発揮します。
だから、ジャーニーマップづくりは、多くの関係者との合意にむけた一つの対話形成にすぎないのです。
サービス開発現場で、人間を中心にした個人・組織内外のなめらなかな対話を設計し、ユーザーとサービスの新しい関係性を合意していくことが、サービスデザインの本質だと思うのです。
サービスデザインを突き詰めていくと、ブランドアイデンティティの再定義や合意形成フローの再構築を促し、一人ひとりのプロジェクトメンバ(それ以外の社員含めて)の意識が変わっていきます。
デザインアプローチによる、組織変革です。
(社員がshineする、というギャグのような本当の話)
しかし、前述のとおりサービスの成長には、「深さ」だけではく、「高さ」と「広さ」も必要のため、サービスのライフサイクルに応じてマーケティングアプローチとの融合も効果的になります。
僕自身も、いままでの身につけたデザインアプローチを見つめ直し、新しいマインドセットやフレームをアップデートすべく、サービスデザイン講習やワークショップなど全国(全世界)行脚をしています。
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