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カンピロバクターで入院しました

健康には執着がない方だった。引くくらい野菜を食わんし、カップ麺が好きだし、お酒もまあ飲むし煙草も少し吸う。運動はほとんどしない。賞味期限は多少切れてても気にならない。健康診断は毎年ちょっと悪い。時たま心配されることもあるけどあまり気にしたことがなかった。なんせ30歳までには死のうと思ってたくらいだし。いやあ、相変わらずイタイっすね。

で、2020年、年の瀬、カンピロバクターで入院しました。実に20年以上ぶりの入院。退院した時、すげえ無意識に口から「シャバの空気…………」って出て笑った。

わたしの地元に、すごい老舗で、クッソ安くて、ちょっと汚くて、定期的に食中毒を起こしている焼肉屋があって、そこで肉を食った次の週に高熱が出た。なんかもう本当に恥ずかしかった。このまま死ぬかもしれないと思うほどの腹痛でベッドをのたうち回りながら、死ぬならもっといいもんに当たって死にてえと思った。同じ肉でもちょっとお高い鳥刺しとかさあ。死ぬならせめてそういうもんで死にてえよ。食べ放題1500円の焼肉なんて死んでも死にきれない。
病院に行って薬をもらっても良くならず(この時点ではウイルス性胃腸炎だと思っていた)、熱が下がってからも腹痛がおさまらなくて、毎晩痛みに泣いていた。あまりに痛いのでデカい病院に行ったらそのまま入院することになった。5日間、なにも食べさせてもらえず、点滴を繋いだままほぼ寝て過ごした。4キロ痩せた。ずっと食べ物のことばかり考えて過ごしていた。家系ラーメンに死ぬほどにんにくを入れて食いたかった。グルメ系漫画にアホほど課金した。

入院中、心細かったし、つまらなかった。いろんなことを考えた。わたし、別に不健康でいいもん!と思ってたの、頭悪いよなあと思った。
想像力が乏しいんだよなマジで。不健康っつーのは、体動かしたらすぐ疲れちゃうの……とか、季節の変わり目になると風邪引いちゃうの……とか、そういうもんだと思ってて、それならそれでいいし、いつかなにかを患って死ぬならまあそれでもいいと思っていたけど、なにかを患った時自分の人生において大切にしてきたものを我慢したり失ったりしなきゃならなくなるというところまで全然頭が回っていなかった。
わたし、食べるの、めちゃくちゃ好きなんですよね。超美味しそうに食べるし。三大欲求で多分一番食欲が強い。我慢するの心底しんどかったな。そういうところまで考えが及んでないのよ。馬鹿だな。なーにが「健康には執着がない方だと思う」だよ。お前が美味しいもんを食べられるのも、なんだろうね、好きなバンドのライブで飛び跳ねられるのとか、お洒落して友達と遊びに行けるのとかもさ、全部それなりに健康に生きてるからだよ。馬鹿なんじゃないの。

あ、そういえば、入院中歌を歌うことに飢えていたので、退院してすぐ部屋でアコギを抱えて歌ったんだけど、10日以上横になって過ごしていたので体力が馬鹿みたいに落ちていて、少し歌っただけで息切れしてしまった。
ほらね。全部そうだよ。

入院中は、仲の良い友達から来た「退院したら美味しいもの食べに行こうね」も、適度な距離感の人から来た「なに食ったのさ笑」も等しく嬉しかった。そういう人たちがもし「健康に執着がない、不健康でいい」とか言ってたらちょっと腹立つかもしれんなあと思った。心配で、ムカついちゃうかもなあと。わたし誰かがわたしに対してそう思ってくれる可能性とかそういうのも想像出来てなかったな。なんか、いっつも自分ばっかりで、矢印全部自分の内側に向いてて、嫌になっちゃう。
わたし、馬鹿だから、1回1回痛い目みないとわからないけど、せめて痛い目見る度にちゃんといろんなことに気がついていきたいよ。
死んでしまった友達が、元気だった頃、わたしの野菜不足を心配して「野菜ジュースくらいは飲みなよ」と言ってくれた。わたしはそれを珍しく素直に聞いて、バイトの休憩中野菜ジュースを買って、写真を撮ってたまにその友達に送っていた。そんなことをたまに思い出した。思い出すよ。君とのそんな些細なやり取りを、今も。ずっと元気でいて欲しかった。なあ。

自分の中ではまあまあ大きい出来事だったのでなにか書いておこうと思っただけで、いつものnoteみたいに書きたいこととか伝えたい話とかはないから、すごい取りとめのない文章になってしまった。まあいいや。
入院中は、さっきも書いたけどグルメ系漫画を読み漁ったり、YouTube見たりしていました。途中でなんか天海祐希と石田ゆり子があずさ2号とかデュエットしてる動画にハマった。人との会話が恋しすぎて看護師さんに「名前可愛いっすね」みたいなダル絡みをし始めてしまってわたし本当に良くない人間だなと思ったりもした。採血の時1発で成功してくれた看護師さん(わたしは血管がマジで見つかりにくくていつもたいてい刺し直しされる)に「相性がいいのかもしれないです」と言われてなんかすげえドキドキしちゃって、わたし本当に良くない人間だなと再び思ったりもした。
まあ、ちょっと面白かったかな、全然もう二度と経験したくないけど。

あ、イヤホンして音量大きくして病室のベッドで聴くカッパマイナスが超気持ち良かったです。

最高だ。

しばらく焼肉はいいや。お気持ち程度には野菜も食べます。10代の頃よりは食べるようになってきてんのよ。いや本当に。
早く家系ラーメンに死ぬほどにんにくを入れて食べたいな。お酒も飲みたい。生きようなあ。死にたいふりして、いつもちょっと先の季節の服とか買ってんじゃんね。生きる気満々よ。それは格好悪いことじゃないよ。いい加減認めなね。
またね。

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