『マッドマックス フュリオサ』感想
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*SPOILER ALERT*
ネタばれあり。これから見る予定でネタばれが嫌いな方にはお勧めしない。
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劇場公開中の『マッドマックス フュリオサ』(原題『Furiosa: A Mad Max Saga』)の興行成績がふるわないらしい。
これは北米での話だが、世界的にもそうであるらしい。
この記事では、主要キャストが前作と異なること(特に登場人物をリキャストした前日譚は一般の観客には受け入れられにくいらしい)、もともと『マッドマックス』シリーズ自体が一般受けするものではなくコアなファン向けのものであること、他作品もこの時期あまりヒットしていないことなどが挙げられている。
とはいえちょっと気になるのは、本作と同様の暴力まみれの作品でありながら少なからぬ女性たちから絶賛された2015年の『マッドマックス怒りのデスロード』(原題『Mad Max: Fury Road』)で人気を博した女性キャラクターであるフュリオサを主人公とする物語でありながら、今作では女性客の割合がはるかに低いらしいという点だ。
おそらく日本でも似た状況だろう。実際、平日に行った劇場では女性客の姿はほとんどなかった。前作では単に女性客が多かっただけではなく、レビューなどでも女性キャラクターの活躍を好意的に評価するものが多かったのだが、本作では(個人の観察範囲で)不思議なほどそうした評価を目にしない。
理由はいくつか考えられる。「3つある」ルールに従い3つ挙げる。
①まず、そもそも大ヒットするようなタイプの作品ではない。前作も評価こそ高かったが、興行的に大ヒットしたわけではない。R指定の作品が興行的に大成功するケースはむろんないではないが、より緩いPG-13のようなレーティングの作品に比べてハードルはより高くなるだろう。
②また、前作を圧倒的に上回るような要素もみられない。シリーズの主役であるマックスは出てこないし、アクションもいろいろ進化はしているのであろうが、主人公が追いかけられて逃げながら戦うという基本線は共通しているから、大きく変わったという印象はない。シリーズの魅力の1つであろう車やバイクなどのメカも、前作と比べるとおとなしくみえるくらいだ(前作の、トラックの前面になぜか鎖でつながれた人が立ってギターをかき鳴らしてるようなイカれた意味わかんなさは好き嫌いを超えるインパクトがあった)。
③最後の理由は想像だが、女性たちが立ち上がって粗野で横暴な男どもをやっつける(婉曲表現)描写が少なかったことがあるのではないか。下記のレビューなどをみると、女性観客が前作の「女性たちの行動にスカッとして」「ストレス解消」していたのはそういう部分だったのであろうことが伺える。
もちろん本作でもフュリオサは男どもを容赦なく倒していく(婉曲表現)のだが、はじめのあたりで命を落とす彼女の母以外に、共に戦う女性の仲間はいない。共に戦うのは、どこかマックスを連想させる男性ジャック(トム・バークが演じる)だ。アクション自体を楽しむ人には爽快かもしれないが、女性たちが立ち上がって粗野で横暴な男どもをやっつける(婉曲表現)描写で「ストレス解消」したい人にはさして楽しくもないのだろうし、信頼できる男性と2人で闘う(男性に守ってもらうわけではないものの)姿を見ても「少しは頑張っちゃおうかな!」とは思えないのだろう。
個人的には、『マッドマックス』シリーズ自体にそれほど興味はないわけだが、顔を隠していることも少なくないフュリオサ役の2人(アニヤ・テイラー=ジョイも、子ども時代を演じたアリーラ・ブラウンも)の目の力強さが印象的だった。あとはストーリーやアクションよりも、あんな砂漠の中を走っててエンジン大丈夫なのだろうかとか、あんな砂漠が広がるところで人々は食べ物をどうやって作っているのだろうかとか、あの砂漠地帯以外の場所はどうなっているのだろうとか、あんなにバンバン車を壊してて使える車がなくなったりしないんだろうかとか、そういう世界観的な部分が気になったりする。もとより見る人を選ぶ作品だろうから他人にお勧めはしないが、何年かに一度見るのは悪くないとも思う。本作の不調でマックスが出てくる続編の製作に「黄色信号」だそうだが、がんばって実現してもらいたい。
ちなみに前作『マッドマックス 怒りのデスロード』に対する感想は前に書いたので挙げておく。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を見てきた
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