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できないことを「できない」と言えなかったせいで、給食の時間が地獄に変わったエピソード

世の中には、今のままの自分ではできないことが存在します。「できないこと」の中には、100m走を2秒で走り切るみたいな、明らかに無理なことも含まれますし、TOEICで400点台しか取れない人が800点台を取れるようになるみたいな、努力すればそのうちできる可能性があるものも含まれます。

自分一人だけでいるなら、自分ができることだけやっていれば、できないことに直面する機会は少ないです。しかし、学校や職場など、他人と一緒に何かをする場面では、できないことにしばしば直面します。

この「自分ができないこと」に対して上手く対応できるかどうかで、おそらく人生の難易度が変わります。そう思うようになったきっかけは、小学校3年生のときの、給食の時間でした。


私は昔からチーズが苦手で、あまり食べられません。特に冷たい固形チーズ(プロセスチーズ)が苦手です。

苦手な理由はシンプルで、私にとってチーズは美味しくないからです。アレルギーなどではありません。あつあつのピザに載っているチーズはおいしいので食べられます。

チーズがどのくらい苦手かというと、小学校のころに毎月発行される給食の献立表に、チーズが載っているだけで憂鬱になるくらい苦手でした。


小学校3年生のある日、私はチーズと格闘していました。チーズはまずい食べ物なので、味を感じないように少しずつチーズを食べていました。いつもより給食を食べるのが遅いのを心配してくれた担任の先生に、私はチーズが苦手だということを打ち明けました。すると先生は、私がチーズを完食できるように、「パンと一緒に食べる」とか、「デザートのみかんと一緒に食べる」やり方を私に提案してくれました。

しかし私は、この世にある食べ物でチーズが一番まずい食べ物だと思っていたので、そんなことしてもまずいものはまずいし食べられないだろ…と思いつつ先生の言うとおりに、この世で一番まずい食べ物を本気で頑張って食べることにしました。

結果、チーズと一緒に食べたデザートのみかんはただのまずいみかんになり、チーズと一緒に食べたパンはまずすぎて、咀嚼したパンとチーズを教室の床に吐き出すハメになりました(汚い話で申し訳ありません…)。

私がチーズと格闘している間に、給食の時間は終わっていて、私以外の生徒はみな掃除をしていました。廊下を通る他のクラスの生徒が、机の上に給食を並べて一人で座っている私と、教室の床に吐き出された異様なモノを見ています。私が吐き出したものを片付けようとしている先生が「○○(私の名字)くんは見世物じゃない!」と廊下へ叫んでいました。


このエピソードを振り返ってまず思うのは、「頑張ってもうまく行かないことってやっぱりあるよね…」ということです。

世の中には、不可能を可能にするための努力や工夫が称賛される風潮があるように思います。あの時の担任の先生も、そうした努力の重要性を理解していたために、私がチーズが食べられない状況を変えようと、解決策を立案していろいろと手を尽くしてくれたのだと思います。

ですが、不可能を可能にするための努力は、多くの場合はトライアンドエラーを繰り返しながら、数カ月や数年くらいの期間が必要になるように思います。30分くらいしかない給食の時間で、今まで苦手だったチーズが急に食べられるようになるのは不可能だと考える方が自然です。


その上で私が一番感じていることは、「みんなが掃除している中、自分一人だけ給食を食べさせられ、パンとチーズを吐き出すような地獄を回避する方法はなかったのか」ということです。

地獄行きを回避する方法をいくつか考えたので、書いておきます。

①先生に許可を得てチーズを残すか、無断で家に持って帰る(できないことはしない)

②クラスの友達にあげたり、持って帰って家族にあげる(他の人に代行してもらう)

③ケチャップなどの調味料を準備しておいて、チーズにかけて食べる(道具で解決する)

給食の時間は、不可能を可能にするにはあまりにも短いです。こんな短時間で、自分ができないことをやらされるハメになったら、上記のように①できないことはしない、②他の人に代行してもらう、③道具で解決する の3つくらいしか手立てがないのでは…と思います。

なぜこうしたことを考えるかというと、大人になった今の私は、「今のままだと、将来こんな不都合が起こる」ということを予測して、不都合が起きないように対応できる人になりたいと思っているからです。

この給食の一件に限らず、今までの人生で起きてほしくないことが実際に起こった時に「どうしてもっと早く気づかなかったんだろう…」「あの時イヤな予感がしたのに何もできなかった…」などと悔いることが、私には何度もありました。

これからの私の人生で「みんなが掃除している中、自分一人だけ給食を食べさせられ、パンとチーズを吐き出すような地獄」と同じようなことが起きそうになったときに、そうした事態を防ぐ力を手に入れたいと思っているので、昔のエピソードを掘り下げて、ヒントを得ようとしているのです。


あと、チーズと格闘している時に、担任の先生と会話をした際に「チーズが吐くほど嫌いです。食べたら本当に吐きます。だからチーズは残します。」と自分の想いを余すとこなく伝えていたら、結果は違ったかも知れません(先生も、床に吐くぐらい嫌いなら前もって言ってくれよと思っていた可能性もあります)。

当時の私に、できないことをできないと伝える力があったら、その場で地獄行きを回避できたのではと考えることがあります。


この給食の一件から、私は「自分ができないことへの向き合い方」を学びました。今すぐにできないことは「できません」と無理せず断って、他の人にお願いしてやってもらったり、簡単にできるようになる道具を準備してやる方が、みんな幸せになると思います。