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水道民営化について

こんにちは。

株式会社HYAKUSHOの湯川でございます。4月も光の速度で過ぎ去っていき、すでにゴールデンウィークに突入いたしました。皆様、いかがお過ごしでしょうか?

本日は、僕の実務・研究の専門分野についてちょっと書いてみたいと思います。

僕の専門は「官民連携」「エリアマネジメント」「PPP/PFI」といったところでして、今まで行政が独占的に行なってきた事業を民間企業の資金やノウハウを活用してより良いサービスにしていこうという分野です。

ただ、この民間企業の資金やノウハウという観点はイデオロギーの論争にもなったりして、科学的に検証されづらい分野でもあります。

そんな中、うってつけな題材がタイトルにも書きました「水道民営化」です。

こちら↓

日本では当たり前のように蛇口から出る「水」は、行政(東京都とか高松市とか)が水道事業として管理運営しています。

その事業を民間企業に管理運営を担ってもらうというのが、「水道民営化」になります。ざっくり、本当にざっくり言うと。

最近では、宮城県がメタウォーターを代表企業とするコンソーシアムに運営権を売却し、実質上民営化されたことが報道されています。

ということで、最近話題になっている「水道民営化」について書かれている本のレビューをしつつ水道民営化について思考を整理したいと思います。

本書の特徴「イデオロギー感満載」

本書を貫く思想は「新自由主義的な企業支配の社会は断固反対する」と言えます。

本書を通して、「グローバル企業に退治していく必要がある」という文章が各所に散りばめられていることからも筆者のスタンスが読み取れます。

そのため、基本的に公営事業の民営化については、「反対」のスタンスです。民間企業が利益を得るために、公営事業を売ることはままならぬというスタンですね。

筆者はオランダアムステルダムに拠点を置く政策シンクタンクの研究員です。そのため、欧州の水道事業について多くのリサーチをされています。

本書では、欧州で民営化された水道事業が再公営化された事例数は235事例あると書かれている。しかし、民営化された数がいくつあり、再公営化された割合については記載がないため、数字の相場感が読者は伝わらず、果たして再公営化が正しいのかどうかが不明である。

そういったスタンスが本書を貫いているので、このイデオロギーを補強するための事例しか本書は登場しません。「水道民営化」って実際どうなの?という客観的な判断をするための情報を提供してくれているわけではないので、民営化とかPPPとか勉強したい人はお勧めはなかなかできません。

水道民営化は手段としてどうなのか?

欧州各国、最近では日本においても水道事業の民営化が話題になっていますが、目的と手段を整理していくことがまず重要であり、その手段として「民営化」というのは最適なのかどうかを議論すべきです。

では、水道民営化の目的とは何か。

前述の通り、水道事業はこれまで行政組織が管理運営してきました。人口増加時代は都市計画区域の拡大とともに水道の送水管も延伸されてきましたが、人口減少時代になり、その送水管などの水道設備の老朽化、更新に莫大なお金がかかることがわかってきました。

そういうことから、水道民営化の目的は、持続的な水道事業の経営になります。持続的というのは、設備の更新もでき、水道料金も物価指数に基づき変化はなく、水道サービスを提供し続けることが出来ることです。

その目的のために、莫大な更新費用を賄いつつ、長期に亘り水道事業を運営してもらうために民間企業の資金やノウハウを活かすという方法が出てきたのです。

底辺にある発想としては、利益を追求する民間企業の合理化・効率化のノウハウによって生まれるコストを縮減し、事業性を担保し、施設の更新費も捻出し、長期的に管理運営していくようにしたいという考えがあります。

良くも悪くもお役所仕事と言われる公益(平等性・公平性)を追求する行政組織ではそもそもの行動原理が異なります。

水道事業は、市民がお金を支払ってサービスを受ける「事業」です。そのための、一定程度の「効率性」は重要になります。効率的にサービスを提供しないと、翻って、水道料金に返ってきます。

一方で、水道事業は、それ自体がないとあるゆる社会的活動がなし得ない基礎的な条件になります。生産活動も、消費活動もできません。

経済学者の宇沢弘文はそれを「社会的共通資本」と呼びました。

財政学者の宮本憲一はそれを「社会資本」または「共同社会的条件」と呼んでいます。

そういうサービスについては、一定程度の公的な規則によって制限されるか、公的な団体が担うべきであるというのが先人の教えになります。

効率性と公益性を担保することが「水道民営化」には可能なのか、それが議論の争点になると思われます。


本日は一旦ここでクロージングしたいと思います。

次回は、この続きを書きたいと思います。

HYAKUSHO 湯川

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