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今後について

年末ですね。株式会社百森としての今後をすこし書いてみます。昨年の記事から、あまり大きく変わるようなことはないと思います。


目指すところ

株式会社百森は、山と人がともにある社会を目指しています。それはどのような社会なのでしょうか。

まず端的に、人が山に入りやすい状態が達成されていると考えます。西粟倉はその面積の9割以上が山林となっていますが、その人口のほとんどは山に入ることなく暮らしています。物理的な距離は近くても、精神的な距離は遠い。それが西粟倉における山林の実情でしょう。仕事であれ遊びであれ教育であれ、目の前に広がる山林がもっと身近であれば、もっと豊かな日々を送れるはず。

そして次に、山のものが人の世に溢れているという状態も達成せねばなりません。今の西粟倉、山林から生産される主なものは丸太です。丸太からは内装材などを中心に様々な製品が製造販売されており、都市圏を中心に流通しています。しかし、村での暮らしを振り返ると、まだまだ山のものが活躍できる場所が多く残されています。昔からある山菜に加え、最近はジビエや養蜂など、少しずつ広がりの兆しは見られます。

山と人がともにある社会は、その担い手であるひとたちが「山があってよかった」と言える社会だと考えています。

私達のすること

株式会社百森は、山への入り口となるような、水先案内人ならぬ「森先案内人」としての役割を全うします。

百年の森林事業

いまのところ西粟倉における山と人との関わり合いの中心にあるのは、「百年の森林事業」です。株式会社百森はその事業において、所有者さんとの交渉から、整備内容の調査設計を行っています。

山主さんからは自分の山林がどこか分からない、体が悪くなって山に行くことが叶わなくなった、というような話も多く聞かれるようになりました。山をもらってほしい、という声も増えてきています。山主さんの代理として山に入り、しっかりと丁寧に管理することで、百森がそういった方にとっての擬似的な山への入り口となることを目指しています。

また、林業事業体さん達も重要なパートナーです。その道何十年という素材生産業者の皆さんを前に私達が「山を案内する」という言い方は違和感がありますが、彼らがプロの仕事を気持ちよく全うするため、心配ごとが無いように伴走する。そういった存在になれればと思っています。単純な現場のはなしだけではなく、経済的な持続可能性も我々の範疇です。

村内製材所や木工所、バイオマス関係にとっては安定して素材の提供を行うことができる供給源にならなければなりませんし、全体として事業を取りまとめている役場さんにとっても、信頼できる「山担当」にこの会社がなる必要があるのは言うまでもありません。そのためには既に取得しているFSC認証にくわえ、TNFDの枠組みもこれから重要になるでしょう。

森林活用事業

そして、「百年の森林事業」以外でも山林に入れるひとを増やしていく。これまで様々なイベントや企業研修、そしてロギング体験など、人を山へと誘う役目を果たしてきました。これからもさまざまな方から「山林で○○をしたい」という相談を受けながら、いちばんいい形を提案する。そして、実現に向けて必要な作業を肩代わりできる存在になるのが目標です。

今年はその中で、村有林利用の枠組みを整理しました。グレーなところで利用たり躊躇したりしていたものを、安全講習を含めた正統な利用をご案内できつつあります。虫取り、コスプレ写真撮影、商品写真撮影、筋トレ、マウンテンバイク、オフロードバイク、探鳥会、授業、レーザータグ、パーティなど、少しずつ用途が広がっています。

これからルールを設定して運用を進めるなかで、中には「前までは別にこんなの報告しなくてよかったのにな」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、初心者や素人にいかに優しくするか?こそが山村としての生き残りの道だと考えています。そのうえで、様々なステークホルダーの方と対話し続けることがもちろん大事。よろしくお願いします。

カーボンニュートラル・生物多様性

地球規模の課題に、ローカルな対応が大事なんだよ!というのは昔から言われてきましたが、森林についてはこの数年でその言葉が身近になりつつあります。

炭素排出権の登録やそれにまつわる業務、そしてその販売を少しずつですが始めています。若い市場で今後が不明瞭ですが、意味ある形にできるよう貢献したい。まず西粟倉におけるJクレジットがスタートラインですが、他地域とも情報共有していきたいところ。これが分断されがちな林業界の繋がりを育むことになると嬉しいですね。

生物多様性も再評価される流れがあると思います。西粟倉は8割が人工林なので現状だとかなり厳しいことになりますが、逆に言うと「生物多様性に乏しい人工林をどのように生物多様性で評価できる環境へ変えていくか」という世界ではトップランナーになれる可能性があります。社有林の一部をビオトープ化したり、いろいろ実験と研究が必要ですね。

ひきつづきよろしくお願いします

やりたいこと、やらねばならないことはそれこそ山ほどあります。

どんどんとやることが変貌していく中で、貴様何奴ぞ!と言われるかもしれません。しかし、芯の部分は我々が管理する山を見て頂ければ分かるはずだとも思っています。五十年後、百年後には良い未来を残せると信じて進んで参ります。

どうぞこれからも、よろしくお願い致します。

(田畑)

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