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森林公共サービスの社会化について考えてみる

こんにちは。株式会社百森の齋藤です。

軍隊ネタが続いたので、ラストは百森らしい話を書こうと思います。

Withコロナ時代の到来とともに、都市居住にこだわる意識も以前よりは低くなって、憧れの田舎暮らしや地方移住、二地域居住を考える人たちも増えてきているようですね。

先日、ポツンと一軒家というテレビ番組で、田舎の築150年の古民家を購入し、都市部から移り住んできたご夫婦が紹介されていました。
ご主人は3Dプリンターで家を造るという会社を経営されていて、働き方は基本リモートワーク。居住区には最新のセキュリティーシステムを導入し、センサーで室内温度を一元管理したりと、「田舎だけどハイテクな暮らし」というユニークな生活を送っておられました。なんかカッコイイですよね。

ちなみに3Dプリンターを使うと24時間で家が建つらしいですよ。価格帯は確か300万円ぐらいだったかな。ドラゴンボールに出てくるような近未来的なデザインで個人的には結構好きです。

https://business.google.com/website/misawahouse/posts/5480287032245474350

話が逸れましたが、近年、SDGs(持続可能な開発目標)が世界規模で大きな注目を浴び、日本でも各自治体がそれぞれの特徴を活かした持続的社会を目指す取組を始めています。

僕が今暮らしている岡山県西粟倉村もそんな地域のひとつ。
山林面積が9割を占める人口1400人余りのどこにでもある典型的な山村ですが、地域再生のために「百年の森林構想」という旗印を掲げ、放置林を地域振興の起爆剤とする逆転の発想で地域活性化を推進してきました。

その結果、それに感化されたプレイヤーが村外から集うようになり、この10年あまりで移住者が200人を超えました。
今ではローカルベンチャーが48社起業し、ローカルベンチャーで約180人が働いています。僕もその中のひとりです。

どんなの地域にも必ず森林はあります。なにせ国土の7割が山ですからね。
地域で持続可能な暮らしを考えるとなった時、森林資源ってとてつもない可能性を秘めているんです。まさしく100年の計は「山の再生」にあり、ですね。

林業界も時代の流れとともに、これまでの建築資材中心の林業から、国土保全、環境保全、水源涵養、景観、健康、教育、癒しなど、社会の多様なニーズに応えることが求められるように変化してきました。

最近では2019年4月に森林経営管理法が施工され、適切な整備が行われていない森林の経営管理を市町村が行っていくことになりました。
そのための地方財源として森林環境譲与税が創設され、2024年度から森林環境税として国民一人当たり1000円が課税されます。知っていましたか?

実はこの制度、西粟倉村がモデルとされているらしく、確かに西粟倉村の百年の森林事業の仕組みに似ています。

しかしこの制度、行政側の負担がかなり大きいという課題もあります。だって、放置林を管理していくノウハウも人員補填もないんだもの。
なんなら森林課みたいな林業専門の部署を置いている地方自治体なんて全体の1/3程度だし。

実際、西粟倉村がまさにそうで、放置林を整備していくために村が森林所有者から山を預かって一括管理するという百年の森林事業の取組は、役場職員の負担がハンパなく、専門の部署を置いてはいたものの、当時たった2名で対応していたそう。今の僕の立場から見れば、そりゃ無理っすよ先輩…と言いたくなります。

また、役場職員は2年ぐらいで配置換えやらがあるので、スパンの長い森林を管理していくには、森林所有者さんとの信頼関係やノウハウが蓄積されにくく、安定的なサービスを提供していくのが非常に困難になったという側面もあったりしたようです。

そこで西粟倉村が取った行動が、百年の森林事業を民間の手に委ねるという選択でした。森林管理専門の民間会社をつくって、そっちに百年の森林事業の機能を全部移そうぜ!ということです。

つまりは森林公共サービスの社会化といえます。
行政が担ってきた公共サービスを地域社会の仕事に転換したんです。いやはや発想がすごいですよね。あ、ここで勘違いしてもらっては困るんですが、これは林政民営化や公共サービスの削減とかでは決してないので悪しからず。

でも、西粟倉の百年の森林事業のように、一企業が担う森林公共サービスの社会化って、ほかの地域でも可能なんですかね?
最低でも、公共サービスの特徴が生きる仕組みづくりや制度の整備は必要でしょうね。あと、継続性、責任能力、一定の専門性なんかも。
そう考えると、西粟倉村のローカルベンチャーの取組につながってくるのかな?

なんだか着地点を見失ってしまった感が否めませんが、西粟倉村の百年の森林事業ように、村民・行政・企業が森林を共同管理する協働型林業という新たなカタチは、これからの時代に合っているように感じます。

これからも西粟倉村の森先案内人として、森林管理のノウハウを蓄積しながら、国防としての林業も変わらず追及していきたいです。

(齋藤明斗)


この記事は、百森 Advent Calendar 2021の18日目です。

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