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心から好きなことを仕事にしている人には勝てないけど、そもそも勝たなくたっていいんじゃない?

これは商業漫画家になりたくてなれなかった私の敗北宣言であり、それでも漫画を描いて生きていく私のゆるぎなくゆるい行動指針です。

漫画家さんやイラストレーターさんには、仕事中のストレス発散や息抜きに絵を描く、という人がたくさんいます。
描くことが好きだから、描く。

私は、認めたくはないですが「描かなければ描かずにいられる」タイプです。
漫画を描くことはもちろん嫌いじゃないですが、息をするように描いてしまうわけじゃない。
だからそういう人たちがうらやましかった。

私が本当に好きなことは漫画を描くことではなく、「漫画を描いて褒められたり、役に立ったり、お金をもらうこと」なんだと思います。


ももクロなどのアイドルやアーティストに楽曲を提供している、音楽プロデューサーのヒャダイン(前山田健一)さんという方がいます。
この方は歌い手の個性や曲のテーマという素材があれば、だいたい1日で曲を書き上げてしまうそうです。

けれど、自分発信で曲を作ろうとすると、これがなかなかできない。
(彼はそんな自分をアーティストではなく『職業作家』だと言って笑っていたけど、ヒャダインさんの場合はもちろん引く手数多、第一線で活躍するクリエイターです。)

私もヒャダインさんと同じ。
内側からくすぶり出る何かをどんどん形にしていく漫画家には到底なれなかった。

漫画がそこそこ描ける、人と話すのが苦手じゃない、誰かの力になりたいという気持ちも人並みにはある。
そんなゆるゆるとした気持ちにいろんな知識を装備させて、今の仕事をしているだけなんです。

漫画を描くことはもちろん嫌いじゃないけど、ほっといても漫画を描いてしまう人たちに、私は漫画家としては絶対に勝てません。
でも、そもそも勝ちってなに?
そこにぼんやりとしたうらやましさみたいなものはあるけど、同じステージに立ちたいかと言われると、それより今のほうが合っていると思います。

自分に多少でも得意なことがあって、それを求められて仕事にできてるなんて、ラッキーな人生じゃない?
嫌なことより、楽しいことの方が断然多いし。
そう思いながら、私はこれからも漫画を描いて生きていくのです。


なんとなくやりたいことはあるけど、すごい人がたくさんいるし、自分にやれるかどうかわからない、という人へ。
この世は別に「寝ても覚めてもそのことばかり考えている一流の人たち」と「なんの愛もないが儲かるのでビジネスでやっている人たち」のふたつでできているわけではありません。
そしてお客さんも、「最高レベルのプロしか認めない人たち」と「こだわりとかいいから安ければいい人たち」みたいに両極端なわけじゃない。

その狭間で、自分が好きなことで生きやすい道を見つけてあげればいいんです。
せっかく持っているその「好き」の気持ちを否定せず、うまく活かしてやっていきましょ。

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