ハーフライフル規制、所感。
銃規制の読み方
今回のハーフライフルをはじめとする一連の銃規制のロジックには、「ペナルティー」、「法執行機関のリスク軽減」、「被害の軽減」の3つの類型があると思う。
「ペナルティー」は、ずさんな猟銃管理に対する業界への見せしめや警告、警官の死傷に対するけじめである。
「法執執行機関のリスク軽減」は、本来民間人に優越する暴力を独占して公共の治安を維持する組織が、安全かつ有効に対処できない銃器を持つ民間人を減らしたいという道理。
既存の例としては、警察の一般的な銃器よりも長射程で、ベストや盾や車両を貫通する恐れのある、ライフルの規制があるだろう。
「被害の軽減」は、事件の被害の規模と強度を削減するというもの。
例として、弾倉・薬室の装弾数制限がある。取り締まりや警備による事件数削減という観点では、バレル長規制やピストルグリップ等も該当するかもしれない。
2024年銃刀法改正案(警察庁提出)の目的
その上で、今回の法案にある
・眠り銃削減
・発射罪
・ハーフライフル制限
のそれぞれについて、意図と目的を考えたい。
まず眠り銃削減は、「被害の軽減」に該当するだろう。 警察による銃管理を容易にし、使用目的に真剣ではない所持者を減らせるだろう。
次に猟銃の発射罪適用も、「被害の軽減」に該当するだろう。 民間人の発砲への意識もより高まるだろうし、殺傷目的の所持罪の厳罰化も、暴力団や近年増えつつある過激化した移民もけん制できるかもしれない。
では今回のハーフライフル規制はどうだろうか?
結論、これは「ペナルティー」に該当するだろう。
ハーフライフルとは、銃身内の半分は腔せんがありもう半分は腔せんがないものを示し、ライフルには遠く及ばないものの、それに準ずる命中精度や有効射程の向上が期待されるものである。
本来、銃規制の文脈でハーフライフルを考える時、それは射程や貫通力に由来する「法執行機関のリスク軽減」を主眼に捉えるのが妥当だろう。しかし、“ハーフライフルだからこそ達成された”犯罪というのはなかなかないのが実情である。
今回の新たな銃規制法案のきっかけとなった長野4人殺人事件でも、警察官に銃器による被害が出たのは、凶器として用いられたハーフライフル銃の特別な性質によるものではなく、至近距離からの銃撃という単に一般的な銃器としての致死性が発揮されたからである。
したがって、今回の銃規制法案でハーフライフルが盛り込まれた背景に実際の被害に基づく犯罪抑止の根拠はなく、報道(世論)や警察庁内でのけじめといった、別の論理が存在したことが分かる。つまり、目に見える形の「ペナルティー」としての銃規制で、ハーフライフルが生贄となったのだ。
猟銃による犯罪抑止と被害軽減の為の、銃規制のあるべき姿
最後に、本来の犯罪抑止と被害削減に立ち返った猟銃規制の方向性を検討してみたい。
猟銃規制には、銃の規制と所有者の規制という二つの側面がある。
銃の規制という観点では、今より遥かに治安が劣悪だった時代を経て、多くの事件を教訓に少しづつ規制が強化されてきた経緯がある。
猟銃の規制を考える時、益と害のバランスを考慮する必要があるが、現在の装備で熊など猛獣駆除に極端に不足があるわけではなく、また許可銃の特定の仕様に由来する犯罪の深刻化もないので、均衡がとれていると言えるだろう。
一方で、所有者の規制には課題がある。
人を殺傷する意図をもって猟銃を所持する事件こそ少ないが、昨今のたてこもり事件では、内向的で精神的に不安定な人物が被害妄想から犯罪に走り、裁判では被告の責任能力が争点となるケースが散見される。
これら精神的不適格者は本来、銃の所持許可及び更新の過程で実施される医師による診断でスクリーニングされる筈であり、制度が機能不全を起こしている事を示唆している。
更に問題を細分化するならば、診断項目に不備があるか、診断方法が不十分か、診断の有効期限が長すぎる可能性が指摘できる。
以上の理由から、議論すべき銃規制は“所有者の規制”であり、さらに“所有者の精神性”に対する確認であるといえる。
いずれにしても、法規制は問題解決へのアプローチとして、事実に基づき起案された、確かな有効性があるものでなくてはならない。
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