#54 最近よんだもの(15) 成長と上達は違う
私は職場と自宅にそれぞれハズキルーペを持っている。通勤途中にあったドトールは惜しまれつつ閉店し、サイゼの辛味チキンは、コロナ以降、店舗で冷凍のものを袋買いするようになった。謎の前フリは以上。
「資本主義の次に来る世界」(ジェイソン・ヒッケル、野中香方子訳、東洋経済新報社)
愛読してやまないnote某氏が強く推していたので、読んでみた。資本主義とは、人類と地球環境にとってどういうものであるかを明快に示す、なかなか大変な本でした。デカルトとベーコン、GDPと幸福度、気候変動の暴力性、公的医療制度と教育システムへの投資、示唆に富んでいるなどというかわいいレベルではないだろう。
解決策ははっきり示されている。絶望することはない。つまるところ、人間の愚かさをどう扱うか、という問題だという気がする。特に強欲な特定の層の人たちを。個々の強欲などという次元ではなくシステムに強固に組み込まれていることが問題なのだ。
振り返れば自分も大いに反省すべき点はあるだろう。だが、人間の欲は否定しないけれど、地球や共同体あってこそでしょ?人類そこまで馬鹿じゃないでしょ、と思いたい。脱成長は必須。原題の「LESS IS MORE」というタイトルがよい。心したい。
息子に読んでもらいたいと思ったが、大学生の息子に本を送ってくるなんて行為は、うざい親の最たるものだろう。斎藤幸平やブルシットジョブなど高校生のときに読んでいたから(私は読んでませんが)、縁があればこの本に出会うだろう。でも買って渡しちゃおうかな。
「美しい合気道」(白川竜次、KADOKAWA)
YouTubeで注目される若き合気道家、白川先生による合気道の教本。強い弱い、或いは勝ち負けで語られることの多い武道において、「美しい」というアプローチは新鮮。流派の違いを超えて、とてもよくできている本だと感じた。QRコードをかざせば技の動画を参考にでき、初心者にはありがたいだろう。
「上達するには」と題された章がある。効率の良い稽古方法やテクニックはある、とした上で「ある一定のレベルに達するにはとにかく稽古を重ねていくしかないのです」。当たり前すぎることを言っていると思われるかもしれないが、これを読んでハッとした。
今の時代、参考になる動画はいくらでもある。効率の良い方法もあるだろう。だけど、稽古しないことにはどうしようもないのである。動画を毎日見ていれば達人になれる、なんてことがあるわけがない。
たくさんの稽古と基礎がいかに重要かということを、理論的かつ懇々と諭すように、少なくない紙面を割いている。早く上達して先生のような美しい技が出せるようになりたい、という門下生が多いのかしら、と思うのは邪推だろうか。
稽古するしかない。それは分かっている。ならば励むべし。
いや、でも、身体がきついときもありますよ。そんな日は無理しないで休みましょう。