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【レポ】客室清掃してみた


初めて、ホテルの客室清掃のバイトをした。
そのレポート、以下に続く。

出勤、集合

従業員専用口から入り、「タイミーから働きにきました!」と総務みたいな人に声をかける。何かの同意書にサインしたのち、QRコードを提示された。タイミーのアプリからカメラを起動して読み込むと、その時刻が記録される。初心者の私でもできる、とてもスムーズな勤怠管理システム。賢さが集約されている。


入室

3人1組の掃除チームが組まれていて、バイト勢は4人目のサポート役として振り分けられる。
大きな鎖付きのスペアキーを持たされ、次々に部屋の扉を開ける仕事を任された。稀に客が残っている場合もあるから、チャイムを鳴らして「おはようございますー!」と言いながらドアを開けてね、と教わる。私は慣れるのが早いので、「おはようございます」の一辺倒さに一瞬で飽きる。うんざりする。その結果、挨拶で遊び始める。例えば、寝起きドッキリのテンションで小さな「オハヨウゴザイマース」を言ってみたり、「こんちわー」と三河屋のサブちゃんになりきってみたり。そして、挨拶にも飽き飽きして、マインドリセットのため、子供の部屋を片付ける親を身に降ろした時間もあった。
一部屋だけ、客と居合わせた部屋があった。普通なら客と居合わせた驚きでいっぱいになるところだが、私の心は安心していた。偶然、真面目な挨拶と共に入った部屋で、遊びがばれなかったからである。他の人なら驚きや恐怖に支配されるこの状況で、自分は安堵していた。
人との差異だったり、異常性が浮かび上がるタイミングが好きで、(私のことでも他人のことでも)体験するたびに嬉しくなるんだけど、今回も嬉しくなった。また自分の才能が発揮されてしまった。遊ぶなら上手に遊びなさいってことか。少しの反省と、自分の面白さを再確認する出来事だった。


荒れる部屋

部屋は想像以上に荒れていた。ここは激安ホテルではないのに、過半数はまるで台風が過ぎ去ったかのような始末だった。自分は荒らさない方なんだなと、二度と役に立たないであろうホテル退去における偏差値がわかると同時に、「一泊二万円のホテルでこの有様なら、他のホテルはどんな様子なんだろう。下位も上位も非常に気になる」と、ホテル退去マニアがうずきだす。

歯ブラシが洗面所のふちにもたれかかる。近くには小さな水たまりもできている。水しぶきどころではなく、池かと思うくらい水が集まる。(ゆすいだ水をどこに吐き出すのか、手を洗ったら何で拭くのか、それも個人の自由ってわけ?)
歯ブラシが入っていたと思われるビニール袋は床に落ちる。(ゴミ箱ではなく床に投げ捨てるのが普通ってわけ?)
洗面台の下、右角の奥に、若干濡れたタオルが山になる。それは大小さまざまであったから、フェイスタオルやバスタオルの仕分けはなく、とにかく、なんでもいいから、そこは「使用済み」置き場になる。(クローゼットの隅をタオル置き場にする部屋もあったんだけど、その方たちは綺麗な服と使用済みタオルを同じ箱の中に入れても平気ってわけ?)
何かが開封され、残るプラスチックのかたまり。
ソファにあったはずのクッションが床に散らばる。
ベッドスローはひとつ足りない。

どうしてこんなことに、、などと、心まで荒れてくる。

ただ、荒らしにも程度があった。豊かさが見える部屋もある。
洗面所のコップに3つの歯ブラシが立っている。とんでもない部屋が続き、擦れてしまった私の心に沁み渡る。歯ブラシの並びを見ただけで、「なんてかわいい家族なんでしょう。ありがとう。世の中には確実にあたたかい家族がいるんだ。知らせてくれてありがとう」と感動しながら感謝する。
正しい片付け場所を知る子どもがいるのか、または、全部の面倒をみる親がいるのだろうか。その両方かもしれないし、それ以外という可能性もある。いずれにせよ、ここでは教えが行き届いているんだなぁと考えは尽きない。
想像は膨らみ続けていくけれど、バイトをしている身なので作業に戻る。渋々、我に帰ると、部屋に光が差し込んでいた。太陽にまで恵みが反射している。そしてその恵みは伝播して、私の心も同じ豊かさに包まれているのであった。
また、その部屋には、ベッド転落防止柵がついていたから、小さい子ども連れだと予想がつく。この大人たちは命を守る忙しい人なのに、子綺麗にできる心の広さがある。なんて素晴らしい人なんだと思う。家族まるごと、幸せになってねと思った。

シーツ替え

枕カバー、掛け布団カバーとシーツ替えを手伝う。
ばさばさとカバーやシーツを波立たせて、空気を入れ、古い布を剥がしていく。糸くずが必ず舞う。
新しいシーツを張るために、壁に沿ったベッドを1回壁から離し、人が入る隙間をつくらないといけない。だからベッドを持ち上げる必要があって、かなり重労働だった。ベッドメイキングは大変な仕事。ベッドの移動が終わったら、腕をナイフのように固め、シーツを張る。シワひとつなく真っ白なベッドをつくるのは、気持ちが良い。
プロのスピードを見た。シーツ替えを素早く、ついでに質も高くできるようになったら、人生だいぶ得するんじゃないか。こういう家事を効率よくできる人は人間レベルが高い、すごい。


同じ金を払って、同じ部屋に泊まる人間がこうも異なるか

なにをどうやって丁寧と呼ぶのか。
その範囲はどこまで及んでいるのか。
定義は人それぞれだけど、丁寧なひとにはしあわせになってほしい。そう祈る。絶対にしあわせな人生を送ってほしいと勝手に今、祈りはじめている。
こんなふうに、丁寧に暮らす人は、周りの人に「しあわせになってね」と念を送られているから、しあわせ以外になることがない。念の力って侮れない。

見られていないと思うところも、実は誰かに見られているし、人のためを思ったら、誰かに想われる。
だから私は言います。幸せになってね。


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