我が家のTurkeyことはじめ
2000年の秋、私たちが家族が初めてボストンで迎える感謝祭。
街中に七面鳥が溢れていましたが私も次男坊を妊娠中。まだまだつわりも辛い頃で、家族3人でこの休暇はゆっくり過ごすことに決めていました。
そんな感謝祭の夕方、2階にすむ大家さんの奥さんから電話が入ったのです。
七面鳥があるのだけど、食べる?って。
えっ? 私、料理したことないんだけど。。。
とは思いながらも、この好奇心の塊はそんなことお構いなし。
うん!食べる! と、即答したのです。
初めての挑戦
そして奥さんが持ってきてくれた七面鳥は、カッチンこっちんに凍っていました。
奥さんに、これどうやって食べたらいいの? と聞いたら、簡単簡単!チキンと一緒よ、塩胡椒してオーブンに入れたらいいの。というのです。
今から思えば、旦那様が料理人だというボリビア出身の奥さん。私は下に住んでいても料理の匂いを嗅いだこともなく。奥様ご自身が認めるほど料理をしたことがなかったのだと思います。
そんな人がいうアドバイスをまともに聞いた私。
今の時代だったら、すぐに調理方法を検索することでしょう。でも、時は四半世紀前、インターネットは始まっていても、検索するそんなサイト自体もあまり存在していない時代です。
なるほど、そうか、同じ鳥だものね。と、そう自分に言い聞かせて料理を始めました。
七面鳥はコチコチに凍っています。
流水で少し洗ってあげたらいいかなあ。。。なんて思いましたがとんでもない。
本来は、2、3日前から解凍を始めるのです。
そんなことも知らない私は、流水でなんとか表面の氷を落としました。
大丈夫かなあ。。とは思いながらも、とにかく料理をしなくては。
急遽ターキーを食べられることになって、その当時小学一年生だったお兄ちゃんも大喜びです。
期待を背負って台所で格闘しました。
う。。ん、どうかなあ。。。でもね、鶏だって少し凍ってても焼いてるうちに解凍できるし、まあいいや、塩胡椒してオーブンに入れちゃえ!と、そう結論づけて、早速オーブンに入れました。
そして待つこと数時間。
いつまで経っても生焼けです。どうみても中まで焼けていないのです。
うわっ、どうしよう。。。とは思ったけど、私も含めて家族全員お腹が空いています。
焼けてるところだけでも食べようよ。と、そんな感じで夜も多分9時ぐらい。
もうおねむのお兄ちゃんと一緒に、家族3人、私が「焼いた」初めてのターキーを食べたのでした。
3人で食べる量など知れています。
残ったのは、中まで火が入っているとは思えない、生焼けの巨大な七面鳥でした。
食べ物を捨てるなんて。。。と骨の髄まで叩き込まれてる私は、それからあのてこの手で、なんとかこの塊と格闘します。
まずは、なんとか数時間また火を入れてのローストターキー
火を入れてみると、そのうち中から何かがあらわれました。
そうです、首の部分と、レバーや心臓などの臓物バッグ。
きちんと解凍してそれを取り除いてから焼くのが手順なのに、そんなことも知らなかったどころか、あまりにもカチンコチンで、そんなところまで手が回らなかったことに、その時初めて気がつきました。
そして、簡単よー と笑ってた奥さんが料理などしない人であることを、その時に思い出した私。でも、もう後の祭り。。。
いつもはなんでも美味しいと言って食べてくれる夫も、元々から七面鳥は匂いがあるから好きじゃないとあまり食べてくれません。そして、お兄ちゃんはまだ6歳。全然塊は減りません。
野菜と一緒に煮て、スープを作りました。
それも、やっぱり臭みがあります。
要するに、匂いを庇うハーブの使い方すら、その頃の私は知らなかったのです。
入れたものは、せいぜい月桂樹。太刀打ちもできませんでしたがなんとか食べてくれました。
よし!っと苦肉の策に出た私は、とにかく肉の部分は何かに使うように冷凍しておこう。と、部分に分けて冷凍庫に入れて。。。
そして、残った大きな骨と小さなお肉。それを使ってまたスープを作り、カレールーを投入してターキーカレーを作ったのです。
帰宅した夫が開口一番、なんかすごい匂いがする。なにこれ?って。。。
そして、それからしばらく家族が大好きなカレーも封印されかねない事態に陥り、私と夫の中で、七面鳥は美味しくないもの。という誤解が定着しました。
冷凍していたお肉を使ってターキー焼きそばを作ったり、いろいろ試行錯誤しましたが、あの匂いにやられてしまった夫には何のお肉を使ったかすぐにわかります。もう無理だ、と悟った私は、ごめんなさい。。と言いながらお肉を捨てたのでした。
お料理教室へ行ってみる!
それでも、こんなにたくさんの人に愛されている食材が美味しくないはずがない。そう思っていた私に、一年後嬉しい機会がおとずれました。
アメリカ人のご近所さんが Thanksgiving Dinner のお料理教室を開くというのです。私は早速申し込みました。
絶対美味しく食べる方法があるはず!それは本当にその通りでした。
解凍の手順、下準備、ハーブの使い方。焼く時間、温度の下げ方、どれをとっても初めて知ることばかりです。
中に入れるスタッフィングの作り方についても、今更ながら、その時に初めて知った私でした。
そして本番の日に我が家でもチャレンジ!
夫は去年のトラウマで懐疑的でしたが、まずまずの出来。
お兄ちゃんに至っては、初めて出会う我が家のターキー。嬉しい我が家のFamily Tradition が、この時から始まったのでした。
我が家の味
レッスンの時に教えていただいた焼き方から毎年いろいろ工夫を重ねて、我が家の味が確立ました。
首のところに詰める餅米のスタッフィング。
お醤油味のおこわがいっぱい七面鳥の旨みを吸って、自画自賛ですがとても美味しい我が家の味です。
家族にも人気で、姫は結婚して両方のお家にいかなくてはいけなくなっても、クリスマスは旦那さんの家族と、でも、感謝祭は我が家に帰ってくるって。相手もいないのにもう決めているのだとか🤭 そんな嬉しいことも言ってくれます。
西海岸で暮らす次男坊は、今年その餅米スタッフィングのレシピを聞いてくれました。自分でも作ってみたいのだとか。
お母さんの料理にレシピなんてあるはずがないでしょ、って笑ったら
そうだね!ってすぐに納得。
それでも3時間の時差を使って、一緒にフェイスタイムで料理をしよう。お母さんが作るのを見てるよ。って、そんな嬉しい提案をしてくれました。
食べ物がつなぐ家族の思い出。
私はあの日、お料理教室を開いて教えてくださったご近所さんに心から感謝しているのです。
我が家の七面鳥トラウマを払拭してくれた素晴らしいレッスンだったと、いつも七面鳥と格闘する度に思い出します。