
綺麗な終わり方って話
10時前に起床。昨晩、0時前に帰宅して、そのまま布団に入り、途中何度か目を覚ましながらも、この時間まで眠っていた。
風呂に入り、洗濯をし、「今日の自分可愛くない」と嘆く妹を励まし、コーディネートを一緒に考え、見送り、妹が作ったガトーショコラを食べながら、2024年の日記の文字起こしをした。ついに、10月、元彼と出会った時期までたどり着いた。
13時半ごろ、元彼に会う準備をした。化粧をしながら、私は何のために顔を整えているのだろう、と思った。アイラインを引く頃になって、仕上がりに満足したのか、ようやく気分が上がってきた。自分の顔に満足する時、渋谷で目にした、美容整形外科とルッキズム反対の広告が同じ壁に並んでいた光景を、いつも思い出す。
14時半に家に来ると言っていた。それまでベースを弾くことにした。なかなか来ないと思っていたら、15時になると連絡があった。もっと早く言ってくれよ、と思った。
時間になって、彼が現れた。彼の家に置きっぱなしになっていた、パジャマ、本、Switch、そして完成した陶芸作品を受け取った。作品は、かなりいい感じに仕上がっていた。
少し話をしたいと思って尋ねると、すぐに次の予定に向かわないといけないと言われた。諦めることができず、また、前もって喫茶店に行こうと決めていたこともあり、一緒に駅まで向かうことにした。彼の職場で起きた大事件の話を聞いた。他人事だからか、面白い出来事があっていいなあ、と思った。
話したいと思っていたこと、絵を描いたら思いの外上手だったことや、最近観た映画の感想、この前フィルムカメラ現像したらあなたの写真が一枚出てきたけど欲しい?といった話はできなかった。前もって考えていたことが、何一つ思い浮かばなかった。
最近何をしていたのかを聞かれて、「ええと、あの、本を、作ったり、していたり、する」と、何とも歯切れの悪い返しをしてしまった。まあ、楽しく過ごしているよ、とも言った。その後、別れてからの感情の移ろいを書いている、とぽつぽつ伝えたら、1割、いや0.5割、大ヒットしたらちょうだいと言われた。肯定されてはいないが、否定もされなくてよかった。
駅に着いて、別れ際、また今度焼肉奢るね、と言われた。絶対だぞ、と返してしまった。今日で会うのは最後にしたい、と言おうと思っていたけど、それは言えなかった。どうせ口約束で、もう会うことはないんだろうな、と思っている。もっと、綺麗な別れ方をしたかった。例えば、互いの今後の健闘を祈りあったり、感謝を伝えあったり、あんなことあったね、と思い出話をしたり。理想を考えることはできても、現実世界では全てが筋書き通りにいくとは限らない。未練が垣間見える別れ方も、生々しくていいじゃないか、と思おうとした。
目当ての喫茶店が満席で、入ることができなかった。近くをうろうろして、もう一度中を覗いて、やはり駄目だったので別のお店に入った。いろいろな感情が巻き起こっていた。目に涙を溜めながら、ロイヤルミルクティーかスパイスチャイ、どちらを頼むかを考えた。
久々に話せて嬉しい。もう我々を繋ぎ止めるものがなくなってしまって悲しい。話したいことを話せず悔しい。今の感情を残しておこうと、手帳を開いた。
去年の12月、日記を書いていることを話したら、自分も書きたいと言っていた。私が使っている手帳と同じものを買い、渡した。年が明けてからつけ始めた日記は、今もまだ続いているらしい。愚痴と自省の言葉ばかり綴っている、と言っていた。それを聞いて、彼の人生に爪痕を残せているな、と思った。何らかの影響を与えていた、もうこれでいいや、とも思った。
今日読むのがいいと思ってかばんに入れておいた、さんしさんの『憧れの街』を読んでいる。
三浦しをんのエッセイで、「『云々』を『うんぬうんぬ』と読んでいた人がいた」という文を読んだ時と同じくらい笑った。笑いを堪えようと、何度も眉間を手で押さえた。ぐちゃぐちゃの感情を持っている今でも、笑えるのかと思った。こういう感想は、何を書いても薄っぺらくなってしまいそうで、うまく表現することができない。
「或る土曜日」という話を読んでいるとき、涙が出てきた。なぜなのか、何に感動したのか、事細かに説明しろと言われたら言葉に詰まってしまうけれど、今の私になんらかの形で響く文章だったのだろう。別の日に読んだら、また違った感情を抱くかもしれない。東京の、とある街の喫茶店で、あなたの文章を読みながら涙を流している人間がいますよ、と伝えたい。
人と対峙すると上手く言葉が出てこなくて、自分の気持ちも上手く伝えられなくて、まあ本当に嫌になるところばかりだけど、こうしてひとりで文章を読んだり書いたりすることができる自分のことは好きだったりする。結局自分ごとに帰結させてしまうけれど、結局何が言いたいのか分からなくなっているけれど、とりあえず私もはやく家に帰ろうと思った。そんな感じです。
そういえば、昨日あたり、春の匂いを感じた。17時をすぎたけど、外は真っ暗ではない。明確な終わりを求めていたけど、そのようなものは存在しないのかもしれない。曖昧なままにしても、いいのではないかと思った。
とはいえ、やはり綺麗な形で終わらせたかったという気持ちが消え去るわけではない。このように文章にまとめあげる行為は、どうしても区切りをつけたい私にとっての、せめてもの救いになるのかもしれない。
※サムネは、ロイヤルミルクティー。
いいなと思ったら応援しよう!
