「忘れられた約束の先に待つ、もう一度の愛」

 春の陽射しが温かく、街の風景が少しずつ色を取り戻していく中、私は立ち止まっていた。数年ぶりに訪れたこの場所、あの日も彼とここを歩いたことを、鮮明に覚えている。あの頃の私は、未来がどうなるかなんて全く考えていなかった。ただ、目の前の彼と一緒にいられれば、それだけで幸せだと思っていた。

 「約束するよ。必ず戻ってくるから、待ってて」

 その言葉を信じて、私は待ち続けた。


何度も、何度も思った。どうして彼は突然、何も言わずに去ってしまったのか。

理由もわからず、ただひたすらに心の中で彼を求めていた。その時の私は、まだ「待っていること」が正しいのかもわからなかった。

けれど、心のどこかで彼を信じていた。

 でも、時間が経つにつれて、次第にその信じる気持ちさえも薄れていった。彼が消えた理由を知ることなく、ただ日々は過ぎていった。彼の記憶があまりにも美しくて、だからこそ、傷つくのが怖かった。もし彼が戻ってきても、また同じように傷つけられるんじゃないかって、ずっと怖かった。

 「どうして、私だけ残されたんだろう…」

 その問いが、何度も何度も私の中で反響して、答えを見つけられないまま、私は自分の心を閉ざしてきた。それでも、あの日の約束と彼の笑顔が消えない。

 そして、今日。突然彼が戻ってきたという知らせを聞いた時、私はどう反応すべきかわからなかった。信じていいのか、受け入れていいのか。心の中で、ずっと悩んでいた。

 「会いたくない。でも、会いたい。」

 その感情が交錯して、私はここに来てしまった。彼が戻ってきたということは、私の心を再び揺さぶることを意味している。彼の声、笑顔、すべてが私をもう一度振り回すのかもしれない。だけど、心のどこかで彼を待っていた自分がいるのも確かだ。

 ふと目を向けると、彼がそこに立っていた。数年前と変わらぬ姿で、私の前に立っている。その瞬間、胸が高鳴り、息が止まりそうになった。

 「待たせたな。」

 彼の声が、あの日と変わらず優しくて、心の奥に響いた。その声を聞くたびに、私はどうしても動けなくなる。胸が痛くて、言葉がうまく出てこなかった。

 「久しぶり…」

 やっと出た言葉は、震えていた。私が言いたかったことは、もっとたくさんあったはずなのに、その一言しか出せなかった。目を合わせるのが怖くて、彼の目を見れない。

 「俺、ずっと君のことを…」

 彼が話し始めたその瞬間、心臓が激しく打ち始めた。彼の言葉を待つことが、こんなに辛いとは思わなかった。こんなに私の心をかき乱すなんて、思いもしなかった。

 「もう一度、やり直さないか?」

 その言葉が、私の胸に突き刺さった。嬉しいのか、怖いのか、心がわからなくなる。彼がまた私に手を差し伸べてくれることが、こんなにも怖いとは思わなかった。

 「私、どうしていいかわからない。」

 自分の言葉が信じられなかった。こんなに彼を愛しているのに、どうしてこんなにも恐れを感じるんだろう。彼を失いたくない一方で、また傷つきたくないという気持ちが私を支配していた。

 「でも、待っててくれたこと、すごく嬉しい。」

 その一言だけでも、涙が溢れそうになった。彼の真剣な眼差しに、私はどうしても答えを出せなかった。でも、少なくとも、彼の気持ちが本物だということは伝わってきた。

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