希望はいつも遅れてやってくる

第2章:田代との出会い

ある冬の日、仕事帰りに立ち寄った小さな公園で、隆司は田代と出会う。公園の隅で新聞紙をまといながら座る老人。その姿は、見るからにホームレスだった。

最初は気にも留めなかったが、何度か通りかかるうちに田代が微かに口笛を吹いているのを耳にする。その音色は、妙に心を掴む不思議なものだった。

「何を吹いてるんだ?」
初めて声をかけたのは隆司だった。田代は一瞬、驚いたように顔を上げるが、すぐに穏やかな表情で「ただの昔の歌さ」と答える。隆司はその時、田代の目に深い哀しみと同時に、どこか温かな光を感じる。

その日を境に、隆司は帰り道に田代と立ち話をするようになる。田代は自分の過去については語らないが、隆司の話にはじっくり耳を傾けた。そして、ときおり短く鋭い言葉で答える。

「人生、失敗することは珍しいことじゃない。ただ、そこから立ち直れる人間は少ないだけだ。」

田代の言葉は、隆司にとって救いのようでもあり、痛烈な批判のようでもあった。

いいなと思ったら応援しよう!