希望はいつも遅れてやってくる
第6章:希望の形
田代はプロデューサーの提案を受け入れ、地域の小さなホールでリサイタルを開くことになった。隆司は舞台袖から見守る中、田代の演奏が始まる。その音色は深く、悲しみと希望を同時に感じさせるものだった。観客たちは涙を流しながら拍手を送り、田代自身も演奏を終えた後、初めて満足そうな笑みを浮かべた。
一方、隆司のアプリも予想以上の反響を呼び、企業からの提携の申し出が舞い込むようになる。田代のリサイタルで得た収益の一部をアプリの開発資金に充て、隆司は新たな事業を立ち上げる準備を進めた。
最後に、隆司と田代はいつもの公園で語り合う。
「希望ってのは、いつも遅れてやってくるもんだな。」
田代が笑いながら言うと、隆司も頷いた。
「でも、遅れてきても、手を伸ばせば掴めるんですね。」
二人の背後で、冬の空に暖かな朝日が昇っていた。