見出し画像

最後の一線を越えて

完結型の恋愛小説を書いてみました。
よろしかったら最後まで読んでみてください(❁´◡`❁)


あらすじ

主人公、佐藤美月(25歳)は、都会の広告代理店で忙しい日々を送るOL。恋愛においては恋人ができても、深い関係に踏み込むことを恐れ、どこかで壁を作っていた。過去の恋愛で傷ついた経験から、もう一度誰かを愛することに対して心の奥底で拒否感を持っている。

そんなある日、上司の黒崎悠斗(30歳)に突然、プロジェクトでのパートナーとして指名される。冷静で仕事に厳しい彼に対して、美月は最初は抵抗を感じていた。しかし、次第に彼の真剣な眼差しと、誰にも見せない一面を知ることになる。黒崎はどこか、彼女に共鳴するような部分があり、美月は自分でも気づかぬうちに惹かれていく。

彼との関係が深まるにつれ、心の中での葛藤が増す。彼は一歩踏み込んでくるが、美月はどうしてもその一線を越えられない。恐れていた感情に巻き込まれ、傷つくことを避けたいがために、距離を取ろうとする。しかし、黒崎はそんな彼女の心の壁を、ゆっくりとでも確実に崩していく。

ある晩、ついに二人は酔った勢いで思わずキスを交わす。しかし、その一線を越えた瞬間、美月は自分の感情が本物であることに気づくと同時に、もう二度と引き戻せないと感じる。黒崎もまた彼女に対して想いを強くしており、二人の関係は今後どうなっていくのか?

第1章: 壁の向こう

美月は忙しい日々に追われる中で、どこか心が孤独だった。都心にある広告代理店で働き、仕事は順調だったが、心のどこかに空虚感が残っていた。恋愛には積極的になれず、どこかで自分を守るための壁を作っていた。それは、過去の傷が原因だった。若い頃、誰かを信じ、深い関係を築こうとした。しかし、その恋は裏切りに終わり、美月はその痛みに耐えることができなかった。

その日も、仕事が終わりに近づくと、黒崎がプロジェクトの進行を確認するために彼女に声をかけた。黒崎悠斗は冷徹で、いつも一歩引いた立場から物事を見ているタイプの上司だった。彼のように冷静で計算高い人物に、美月は最初から良い印象を持っていなかった。しかし、彼が冷静に指摘する仕事の進行具合や、細やかな配慮に、次第に尊敬の念が湧いてくる自分がいた。

「佐藤さん、この資料、少し手を加えたほうが良さそうだ。」

その言葉に、美月は言い訳をする暇もなく、仕事の見直しを始める。そして、改めて黒崎の頼りがいのある存在に気づく。だが、その反面、彼の存在がどうしても心の中で遠すぎて感じられた。彼に対して心を開くことができるだろうか?

その夜、二人で仕事を終えた後に一緒に帰ることになった。無言で歩いていると、突然黒崎が話しかけてきた。

「君、どうしてそんなに壁を作るんだ?」

その言葉に、美月は驚き、何も答えられなかった。黒崎の目は真剣そのもので、彼が感じ取った美月の心の奥底の不安や痛みを見抜いているようだった。美月は動揺しながらも、心の中でその問いにどう答えれば良いのか分からなかった。これ以上踏み込まれるのが怖かった。

黒崎は黙って歩き続けたが、その時、美月は彼にどこか特別な意味を感じていた。しかし、決して自分を見せるわけにはいかないという強い意志もあった。

第2章: 忘れられないキス

その後も、美月と黒崎は時折一緒に仕事をする機会が増えていった。どこかで彼に対する気持ちが大きくなっていることに気づいていたが、彼の優しさに頼ってしまうことが怖かった。美月は過去の傷を思い出し、誰かを信じることに対して恐れを感じていた。

だが、その日は違った。社内で行われたパーティの後、少し酔った美月は黒崎に帰り道を一緒に歩こうと誘われた。いつもの冷静な黒崎ではなく、少し疲れたような表情をしていた。二人で歩きながら、何気ない会話を交わしていたが、次第にその距離が縮まっていくのを感じた。

突然、黒崎が立ち止まる。

「佐藤さん、君は強い人だと思う。」

その言葉に美月は驚き、息を呑んだ。まさか、自分がそんな風に見えているなんて思っていなかった。しかし、黒崎の真剣な目を見た瞬間、彼の気持ちが伝わってきた。彼は美月を弱い存在ではなく、共に歩んでいける強さを持った女性だと思っているのだ。

そして、目の前で黒崎が少し身を寄せると、彼の唇が美月の唇に触れた。

その瞬間、美月の世界が音を立てて崩れ落ちるような感覚がした。彼女の心臓は早鐘のように打ち、すべての思考が停止した。酔っていたのかもしれない、でも彼の唇が心地よく、自分の中で何かが変わる音がした。

しかし、すぐに後悔が襲ってきた。彼との距離が一気に縮まったことで、美月は怖くなった。彼に依存してしまうのではないか。彼のことを信じていいのか。

その夜、美月は眠れぬまま朝を迎えた。心の中で繰り返すのは、あのキスのことばかり。もう一度、あの瞬間に戻りたくないと感じる一方で、その後悔が自分にとってどれだけ大きな意味を持っているのかも分からなかった。

第3章: 逃げられない想い

翌日から、美月は黒崎を避けるようになった。彼からのメールや電話には応じず、無理に忙しいふりをして距離を取ることにした。しかし、黒崎はそんな美月の態度に気づいていた。

「何か、避けてる?」

その言葉に美月はドキっとした。自分の気持ちがバレるのが怖かった。黒崎が近づいてくることで、心が乱れ、崩れ落ちそうになっていた。

「違う、わけじゃないんです。ただ、少し距離を置きたくて。」

黒崎は静かに笑う。

「お前の心を無理に引き寄せるつもりはない。でも、逃げても無駄だ。」

その言葉が、心の中に深く突き刺さった。美月は心の中で自分を責めた。どうしてこんなにも彼に引き寄せられるのか。彼との距離を置こうとすればするほど、彼の存在が大きくなるのがわかった。

その夜、黒崎は美月を一人で帰させず、一緒に歩くことを提案した。美月は再び彼と歩くことになり、その静かな夜の空気の中で、次第に自分の気持ちに素直になり始める。

「私は、怖いんです。」

「怖くて当然だ。でも、怖いからこそ、一緒に進んでいこう。」

その言葉に、再び美月の心は揺れた。彼の言葉には、どこか安心感があり、それに引き寄せられるように感じた。

第4章: 最後の一線

美月は、黒崎との関係に対して強く迷い続けていた。彼の言葉がどんどん心に染み込んでいく一方で、過去の傷がどうしても彼女を後ろ向きにさせていた。どれだけ心が揺れても、自分を守りたい一心で心の中に壁を作り続けていた。

だが、ある日、彼の一言が美月を突き動かす。

「俺、君を傷つけたくない。」

その言葉は、美月の心に火をつけた。これまで彼を避けるために必死に壁を作ってきたが、彼が本気で自分を気にかけていることを再認識した瞬間だった。

その日、仕事が終わった後、二人は再び一緒に帰ることになった。いつものように無言で歩き続ける中、黒崎がふと足を止めた。

「俺、怖いんだ。君が、俺を嫌いになったらどうしようって。」

美月はその言葉を聞いて、胸が締めつけられる思いがした。彼の言葉には、ただの上司としての優しさではなく、彼女に対する深い愛情が込められているのを感じた。

「嫌いになんてならない。」その瞬間、自然にその言葉が口をついて出た。

黒崎は少し驚いた表情を浮かべ、そして静かに微笑んだ。彼の顔が、いつもより少しだけ柔らかく見えた。その表情に、美月はようやく自分の心を開くことができる気がした。

彼はそのまま、再び美月に一歩近づいた。美月は何も言えず、ただ彼の目を見つめる。二人の間にはもう、あの時のような壁は存在しなかった。黒崎の手が美月の肩に触れ、その手が次第に彼女の背中に回る。

「もう、君を放さない。」

黒崎の言葉に、今までの自分が一気に崩れ落ちるような感覚を覚えた。今、彼と一緒にいることで、何も恐れることはないと感じた。お互いが心から求め合っていることを確信し、彼女は自分の感情を押し込めていたことに気づいた。

美月はゆっくりと目を閉じ、彼に身を委ねる。黒崎の唇が再び彼女の唇に触れ、今度はそれが恐れることなく、心から求めるものだと感じる瞬間だった。

第5章: 変わり始めた心

それからの二人の関係は、少しずつ変わり始めた。美月は以前よりも黒崎に対して素直になれるようになり、仕事でも二人の息が合うようになった。彼の目を見つめるたびに、彼が自分をどう思っているのかが伝わってきて、それが心地よかった。

だが、変化は急にはやってこない。美月は次第に過去の傷が再び心をよぎり、黒崎との関係に対して不安を感じることがあった。

ある日、二人でランチをしている時、美月は思い切って尋ねてみた。

「黒崎さん、あなたは本当に私のことを好きなんですか?」

その質問に、黒崎は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔つきで答えた。

「もちろんだ。お前と一緒にいることで、俺はどんどん自分を信じられるようになっている。お前に出会ってから、何もかもが変わった。」

その言葉に美月は胸が熱くなった。これまで自分が守り続けてきた心の壁が、黒崎の真剣な言葉に一つずつ崩れていくのを感じた。

「でも、私は怖いんです。心を開いてしまうと、また傷つくんじゃないかって…」

その言葉に、黒崎は静かに微笑んだ。

「俺も怖い。でも、君と一緒にいることで、俺はどんな痛みも乗り越えられる気がする。」

美月はその言葉に、思わず涙がこぼれそうになるのを感じた。彼の優しさ、真剣さが心に響き、今まで避けてきた感情に、少しずつ踏み出していくことができる気がした。

その夜、黒崎からのメッセージが届いた。

「明日、俺と一緒に過ごしてくれるか?」

その言葉に、美月は胸が高鳴るのを感じた。黒崎と過ごす時間が、今では自分にとってどれだけ大切なものになっているのかを実感していた。

次の日、美月は黒崎に会う約束を取り付け、心の中で決意を固めた。もう、逃げることはしない。自分の心を信じて、彼と共に進んでいく決断をした。

第6章: 愛の覚悟

翌日、美月は黒崎と一緒に出かけることになった。二人は昼間の街を歩きながら、今までとは違う雰囲気を楽しんでいた。無言で並んで歩くことが多かったが、その日は少し違った。黒崎が美月に話しかけ、彼女も自然に答える。

「佐藤さん、これから先もずっと一緒にいたい。」

その言葉が美月の胸に直接響いた。黒崎がそんな風に言ってくれることが、嬉しくてたまらなかった。

「私も、あなたと一緒にいたい。」美月はそう答えた。

その瞬間、二人はお互いに深く見つめ合い、どこか未来に向けての決意を感じ取った。

美月は黒崎との関係をこれからどう進めていくべきか、少しだけ不安を感じていたが、それ以上に彼と一緒に過ごすことへの喜びが大きかった。今度こそ、心の壁を完全に越え、二人の関係が新しい形に進化していくのを感じていた。

第7章: 覚悟の決断

美月と黒崎の関係は、日々深まりつつあった。だが、どこかで彼女はまだ一歩踏み出せずにいた。彼との距離が縮まりすぎると、心が傷つくんじゃないかという恐怖がどこかにあった。そんなある日、突然仕事で大きなプロジェクトが舞い込む。

そのプロジェクトは、美月にとってこれまでで一番大きな挑戦だった。黒崎も同じプロジェクトに関わることになり、二人は再び共に仕事をすることに。しかし、仕事の緊張感が高まる中で、美月は黒崎との関係をどうするべきか、ついに本気で考えなければならない時が来た。

「黒崎さん、これが終わったら…私、どうしたらいいんでしょうか。」

美月は思い切って黒崎にその想いを打ち明けた。黒崎は少し黙った後、ゆっくりと答えた。

「俺が君を守るよ。怖くても、君が一緒に進んでくれるなら、それだけでいい。」

その言葉に、美月の中で何かが弾けた。彼と一緒にいることで、自分がどれだけ強くなれるかを感じ始めていた。

第8章: 挫折と再生

プロジェクトが進行する中、美月は思いがけない困難に直面する。クライアントの突然の要望変更や、納期の厳守など、心身ともに追い込まれる日々が続く。そんな中、ついに美月は自分の限界を感じてしまう。

ある日、オフィスで思わず涙を流してしまった美月。黒崎はその場で彼女を見守り、優しく肩を抱いた。

「無理しなくていい。俺がついてるから。」

その言葉に美月は安心し、涙をこぼすことしかできなかった。彼の支えがどれだけ大きいのか、今まで以上に感じた瞬間だった。黒崎は、ただ一言、こう言った。

「君がどんな状況でも、俺は君を支える。」

その後、美月は改めて自分の心と向き合い、再び立ち上がる決意を固めた。彼女はその後、プロジェクトを無事に成功させ、見事にクライアントからの信頼も得ることができた。

第9章: 交わる未来

美月は黒崎に対して、ただの上司と部下ではなく、もっと深い感情を持っていることを確信していた。そして、黒崎も美月に対して、彼女を一人の女性として大切に思っていることを何度も伝えてくれた。

二人はついに、真剣に今後のことを考える時が来た。

「美月、俺たちの関係は仕事だけじゃない。これからは一緒に人生を歩んでいけたらと思う。」

黒崎のその言葉を聞いた美月は、少しだけ躊躇ったが、すぐに心が決まった。

「私も、あなたと一緒に未来を歩みたい。」

その後、二人は将来について話し合い、ついにお互いに対する愛情と信頼を確信した。そして、美月は初めて、自分が心から幸せだと感じられる瞬間を迎えた。

第10章: 未来へと続く道

ついに、美月と黒崎は正式に付き合うことになった。それからの日々は、順調で穏やかなもので、二人はお互いのことをさらに理解し、支え合いながら日々を過ごした。彼女の心の壁はすっかり取り払われ、黒崎と共にいることが何よりの幸せだと実感していた。

ある日、美月は黒崎にプロポーズを受ける。

「美月、これから先、ずっと一緒にいてくれ。」

その言葉に、美月は迷うことなく答える。

「はい、私もずっとあなたと一緒にいます。」

二人は手を取り合い、新たな一歩を踏み出した。未来には様々な試練が待っているだろう。しかし、今の二人なら、どんな壁も乗り越えられるという確信を持っていた。

その日、美月は自分の心の中にずっと閉じ込めていた恐れを完全に乗り越えた。そして、黒崎と共に歩む未来が、どんなに素晴らしいものになるかを信じて疑わなかった。

エピローグ: 未来を信じて

数年後、美月と黒崎は結婚し、二人の人生は順調に進んでいた。仕事の忙しさに追われる日々は続いていたが、互いに支え合い、笑顔を絶やすことなく過ごしていた。

美月は、あの時、黒崎に心を開いたことで得られたものがどれほど大きいか、毎日実感していた。最初は不安でいっぱいだったが、今では彼の隣で歩むことが自分にとってどれだけ自然なことかを感じている。

ある日の夕方、二人は久しぶりに仕事を早めに切り上げて一緒にディナーに出かけた。美月が赤いワインを一口飲みながら、ふと黒崎に言った。

「私、あなたに出会えて本当に良かった。」

黒崎は美月を見つめ、その言葉を静かに受け止めた。そして、少し照れたように笑いながら言った。

「俺もだよ。君がいたから、俺はここまで来れた。」

二人はその後、静かなカフェでコーヒーを飲みながら、これからの未来について話をした。どんな困難が待ち受けていようとも、二人ならきっと乗り越えていけるという確信があった。

その時、黒崎がふと美月に向かって言った。

「これから先、もっと君と一緒に色んなことを経験したい。どんな小さな幸せでも、君と一緒に感じたい。」

美月はその言葉に胸が温かくなり、目を細めて答えた。

「私も、あなたと一緒に毎日を大切にしていきたい。」

二人は静かに手を取り合い、未来へと進む決意を新たにした。その先に待っているのは、どんな困難も乗り越え、共に歩む素晴らしい日々だと信じて。

そして、美月は心の中で誓った。これからも、どんなに小さな瞬間でも、黒崎と共に分かち合っていくことを。過去の傷や恐れを乗り越えて、今の幸せがあることを心から感謝し、未来へと続く道を歩み続けることを。

二人の愛は、決して終わることなく、ずっと続いていく。


いいなと思ったら応援しよう!