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フランスで初めて身の危険を感じたこと

先日怖かった出来事がありまして、しばらくフラッシュバックしたり悪夢見ちゃったりしてどうなるかと思ったのですが、回復したので記事にして成仏させます。(ヘッダー画像はせめて優しい画像を…)

※敏感な方やトラウマがある方は閲覧注意です※

日本食材を買いに出かけた帰りのバスで事は起こった。
バスの後ろの方に立っていたら、奥に座っていた黒人男性が私の近くに移動してきた。

ステッキのようなものを持ってサングラスをしていたので、もしかしたら視覚障碍者かな、と思ったりしつつも深く考えず。
時折そのステッキのようなものを床にとん、とんとしている...。

ところがそれはステッキではなく、大きなゴルフクラブなのであった。
座席に座ったかと思ったらゴルフクラブのヘッドをバスの床にどん、どん、と強めに打ち付け始めた。

周りが静かにざわつき始める...。
やばそうな予感。「私のバス停早く来てくれー!」と祈るけど永遠に感じられる数分間。
もしもあのゴルフクラブが自分に向けられたら...?と万が一を想定して、どう身を守るかシミュレーションしていた頃、ようやくバス停が近づいてきた。

「おります」ボタンをしっかりと押した瞬間、その人物がこちらを凝視している...。さらにまずい予感。

ドアが開いた途端にバスからさっと降りたら、その人物も降りてきた。

やばい状況をまだ受け止められない。「このへんの住人かしら」と呑気なフリして不安を誤魔化しつつ、家の方向へ進む。

その間もその人物はとん、とん、と地面にクラブを打ち付けながら歩いてくるので、後ろにいるのが分かる。
家の近くまで来て、「これは付けられてる、本当に本当にまずい」と思い、電話をするふりをして立ち止まった。

その人物は私を横目で見ながら通り過ぎて門まで進んでいった。「なんだ、住人か(それはそれでやばいが)」と思ったけど、住人ではなかった。門の前に座って私の方を見ている...。待ち伏せされてるの??

これは建物の裏側に回るしかない。かなり回り込まないといけなくて距離があるけど、逃げ切れるだろうか。
私が走ったら向こうも走るかもしれない...しれっと逃げて曲がり角から全力ダッシュしよう

心臓がバクバクしながらも早足で来た道を戻る。
どうしよう。誰かに助けを求めた方が良いのだろうか、と思いつつも、

「それでもし助けてもらえなかったら?」
「助けを求めることで巻き込んでしまったら?」

と色んな思考がぐるぐるしながら道を急ぐ。

少し振り返ってみた。その人物も来ている...!

ようやく曲がり角に入ったところで、ダッシュする。

路地の中に紛れ込みながらもう一度振り返ったら、その人物は私を見失ったのか、それとも諦めたのか、まっすぐ通り過ぎていった...。

でもまだ油断できない。早く家の中に入りたい。
そのまま建物の裏側まで出来る限り走った。
重い荷物を持っている上に坂道で、文字通り足が棒になりそうだった。

家についてもしばらくは震えと嗚咽が止まらず。
怖かった気持ちを夫に聞いてもらってようやく落ち着いたけど、もう一生外に出られないんじゃないかとさえ思った。

私は高級な恰好をしていたわけじゃないので、強盗目的ではないと思う。
他にも女性がいた中で私に照準を絞っていたので、アジア人差別者かもしれない。もしくは自分より弱いものをはけ口にしたかったのかもしれない。
その暴力性にぞっとする

ここはフランスで、自分は差別対象になりうることを改めて思い知った。
5年以上住んでいてこんな危険を感じたのは初めてだった。

日常の中でうっすらとした差別は感じたことは何回かあるけれど、「人間だし仕方ないよね」と流せるような平和なものだった。本人でも気づいていないほど自然に優劣思想を持っていることも普通にある。
(私自身も、特定の人種や宗教というだけで嫌なイメージを抱くことはしょっちゅうある)

私が住んでいる都市は圧倒的に左派だし治安は良い方だけど、それでも女性の大部分が危険な目に遭ったことがあるらしい。
夜が危険なのは分かっていた(だから夜は絶対1人で出歩かない)けれど、私の場合は白昼堂々とこれが起こったことがさらに怖かった。

そろそろフランスの生活をやめて日本に戻ることを計画しているけれど、なかなか決心がついていなかった。でも今回の出来事のおかげで、もう帰りたいと思えた。

日本でも通り魔や事件に巻き込まれる可能性はゼロじゃないし自然災害のリスクは常にある。

でもそれでも日本がいい。死ぬ時は日本がいいな…。


今回の経験はすごくショックだったし悔しいけど、しっかり向き合ってポジティブな形で今後に活かしたい。

何はともあれ、今日も元気で生きていられることがかけがえのないことだと思える。

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