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千羽鶴とガブリエラと、ささやかな恋バナ

大丈夫?と聞かれて我に返る。どうも物思いにふけり過ぎたみたい。
「ねぇ、ポーランドっ娘。私はさっきまで何をしてたんだっけ?」
「……千羽鶴、あんた本当に大丈夫?今日はずいぶんぼけっとしてるじゃない」
半分呆れ、半分心配といった顔でガブリエラが答える。いけない、常にクールで時々お茶目な私のイメージが崩れてしまう!
「昨日はあんまり眠れなかったせいかもしれない」
「あんたにも眠れない夜なんてあるのね、何があっても平然としてるイメージだったわ」
「それは私のイメージ戦略。成功しているみたいで何より」
「……教祖サマみたいな格好してただけはあるわね」
「その話はやめて。ちーにも思い出したくないことはある」
例えばノリノリで司教服を着込んだ時のこととか!
「で、その可愛らしい千羽鶴ちゃんが何を考えて眠れなかったのかしら?」
「ちーは大人だから思い悩んで眠れなかったりしない。昨日は彼が寝かせてくれなかったから」
「え、か、彼!?あんた、そんな顔してそこまで進んで……」
「そう、あの人はいつも私を困らせて、めちゃくちゃにしてしまう」
「めちゃくちゃって……やめなさいよ明るいうちから……」
「初めて会った時からずっとそうだった。いつでも変なことばかり言って、非攻略対象だって言ってるのに求婚してきたり」
「……それってもしかして、○○のこと?」
「勿論そう。逆にガブ子が何を想像したのかちーは気になる」
「べべ別になにも想像してないわよ!それより寝かせてくれないってどういう事?」
む、誤魔化した。でもちーは寛大な大人だから流されておいてあげる。
「布団に入ったまま、次に会った時に一言目でどう笑いを取るかとか、どんな文句を言おうかとか、どーん!をいくつ伸ばすかとか、そういうことを考えてた」
「……そういうの、思い悩んで眠れないって言うんじゃないかしら?」
「そういうことにしておいてもいい」
「口が減らないわね……でも、そっか。あんたもそうなのね」
「そう、とは?」
抽象的な言い方はよくわからない。誤解があったら良くないのでそう聞くと、ガブリエラはひどく答えにくそうに、もごもごと小声で言う。
「そ、それはほら、その、あれよ……大切なひとが、遠くにいるってこと」
大切なひと。
少し前は、正直よくわからなかった。けど。
「……うん、そう」
今ならわかる。こんな気持ちになる理由。
「つまり、ツンデレっ子も私のライバル」
「ツンデレって言うな。──負けないから」
お互い微笑み合う。ちゃんと強気に見えるように。
私とガブリエラ、どちらのハッピーエンドもまだ遠そうだけれど……諦める気はさらさら無い。きっと皆も同じで、だからこそやり甲斐がある。


「──って、いい加減話を戻しましょ。ぼけっとしてたけど大丈夫?今度の、」
「うん。うづらの話ね」

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