写真_2018-07-11_23_13_31

千羽鶴とみやびと、げーむおーばー

いっそ消えてしまえばよかった。そう、こんな不出来な存在は生まれるべきではなかったのだ。自分の自由に出来る身体を得たはずなのに、その身体ひとつすら思い通りにならない者に、善き社会を統制することなど出来るはずはないのだから……

「──ふーむ、うちのゲームに挑むには早かったかね?……」

事の始まりは、恋ヶ崎みやびが突然私に声をかけてきたことだった。
「千羽鶴ちゃん、もし暇やったらうちの作ったゲームに少し付き合わんか?」
「ゲーム……」
天才ゲームクリエイターとして、他人の作ったゲームにはちょっと興味ある。それに、お姉ちゃんも出かけてしまって正直暇だった。
「わかった、ガサ子に付き合ってあげる。ちーの一流ゲーマーとしての腕前を見せる時」
「おっ、意外とゲームやりこむクチかね?」
「ううん、ほとんど経験はない」
どやっ。
「……よくわからんが、なかなかの自信やね」
「勿論。ちーの実力ならゲームくらい余裕」
の、はずだったんだけど。

「……またゲームオーバー」
この身体は全然思い通りにならない。不条理。
「このゲームはおかしい、デバッグを要求する!」
「テストプレイなんやから、実質今がデバッグやね」
楽しそうに笑うガサ子。私は全然楽しくない。
「ま、問題ありそうなところは直しとくき。気が向いたらまた来るとえいよ」

翌朝。

ぴんぽーん。
そう言われたのでまた来た。
「起きてガサ子。今日こそ攻略する!」
「……コイガサキはまだ寝とるき、また昼過ぎに来るとえいよ」
む、これだけ呼んでも起きないなんて。でもちーは大人だから、ガサ子が目覚めるまで待っててあげる。ちーは大人だから(大事なので二度言う)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?