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つばめと神楽と、ないしょのこと

 わたしは、小さな嘘をついた。これって良くないことだよね、うぅ……。
「今日はこのまま一緒に遊びに行けないなんて、悲しいです……」
「ごめんね神楽ちゃん、どうしても外せない用事なの。ちーちゃんも待ってるだろうし」
 そう言って、お仕事終わりのお誘いを断った。神楽ちゃんの残念そうな顔に心が痛む。本当は用事なんて無いし、ちーちゃんも出かけてるはず。
「責めるようなことじゃないですけど、次はご一緒しましょうね?行きたいお店があるんですよ。良ければちーちーも一緒に」
「うん、ちーちゃんにも話しておくね」
「……私のこと嫌いになったとか、そういうのじゃないですよね?」
「そんなわけないよ。今日はごめんね、またね神楽ちゃん」

 神楽ちゃんと別れたあと、ちょっと早足で部屋へ帰る。荷物を置いて用意したのは……冷蔵庫に仕舞っておいた、イチゴ尽くしのケーキ。昨晩、真幌さんか「お土産だ」って言ってくれた、ちょっと良いお店のやつ。
 本当は神楽ちゃんと一緒に食べられれば良かったんだけど、ひとつしか無いのに目の前でわたしだけ食べるわけにはいかないし……どうしても食べたかったし。
「それじゃあ、頂きます……うん、美味しい!」
 内緒で食べるケーキは、やっぱり美味しかった。こういうのって何て言うんだっけ……背徳の味?
 だけどやっぱり、ひとりだけいい思いをするのって良くないよね。明日はちゃんと、神楽ちゃんに優しく出来るといいな。

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