神楽とつばめと、お茶の時間
貴女は気付いてくれますか、私の抱く、この気持ちに──
……なんて格好つけてみたんですけど、そんな大層な話ではなくて。いや、私にとってはオオゴトなんですけど!そう、落ち着かない鼓動、不安、焦燥……ああ、なんて残酷なのかしら、こんな思いを抱えながら私に生きてゆけだなんて……
まぁ、ぶっちゃけるとつばめさんがママにかかりっきりで構ってくれないんです。かまかま!
ママったら事あるごとにつばめさんを捕まえてはガールズトークを……ママをガールに括っていいんでしょうか?まぁママ綺麗ですし、私もママに似て綺麗ですしいいですよね!──ガールズトークを繰り返すんです。つばめさんは私のマネージャーとして雇用してるのに、ママは私のつばめさんを何だと思ってるんでしょう?つばめさんもつばめさんでママとばっかり楽しく話しちゃってもう!私という人がありながら!
本当は割って入っていきたいところですけど、ママってば私の子供の頃の話を突然始めたりするから迂闊に入っていけないんですよね。目の前で小さい頃の恥を晒されるのは流石に恥ずかしいです……
そんなこんなで今日もぴょんこは嫉妬とかアレコレを抱えてモヤモヤしているのです。だってさっき「今日もちょっと遅れちゃいそぅ〜ヾ(。>﹏<。)ノ゙」ってWAVEが届きましたし!まったくミサミサは一度きっちり叱らないとダメですね!
「神楽ちゃん、お待たせ〜。ごめんね遅くなっちゃって……」
そろそろ催促のWAVEを送ろうかと思った頃合いでつばめさんはやって来ました。
「もう、いくら何でも遅すぎですよ……このまま帰っちゃおうかと思ったんですから」
これは嘘。だけど、今日こそはつばめさんにもガツンと言っちゃうんだから!
「ごめんね神楽ちゃん……でもほら、差入れ持ってきたの!これで機嫌直して?」
「ミサミサのいつものやつでしょ?そんなので誤魔化されないんですから……あれ?これは……」
ママチョイスのいつものケーキだと思ってたのに、これって、
「この間のお店のケーキ、ですよね?」
「うん。TVで見たすっごく美味しそうなケーキ、一緒に食べようねって言ったのにあの時は人がいっぱいで諦めちゃったから……今度こそは一緒に食べたいなって思って、わたしが選んできたの。今日もやっぱりすごく混んでて、こんなに遅くなっちゃったんだけど……」
そう、二人で遊びに行った時に食べられなかったケーキ。私は別にいいやと思ってすっかり忘れてたのに、つばめさんは……
「どうかな?機嫌、直してくれる?」
「──はい。今日はつばめさんに積もり積もった不満をぶちまけようかと思ってましたが、水に流すことにしてあげます♪」
「え、えぇ!?そんなにいっぱい?」
努めて明るい顔と声で告げた私に目一杯動揺してくれるつばめさん。
「そんなに嫌な思いさせちゃってたかな?わたし、ちゃんと直すように頑張るから教えてほしいな?」
「そうですね……それじゃあ、百年待ってくれたら教えてあげます」
「ひ、百年も待ってられないよぉ……どうしてもだめ?神楽ちゃんのためなんだよ?」
「駄目です、ちゃーんと百年待って貰わないと。──さ、一緒にケーキ食べましょう?お茶淹れますね」
そう、私のこの気持ちに気付いてもらうわけにはいきません。たっぷり百年、私自身がこの不満をきれいさっぱり忘れてしまうまで待って貰います。
だって、今はこのケーキを食べながらつばめさんと楽しく話をするために、素敵な気持ちで頭も心もいっぱいにしていたいんですから。