
(STORY)【MC Remix】銀河囚人(前編)
<概要>
”銀河囚人”の潜伏が疑われる日本の住宅街。地球警備隊により、一帯の調査が行われている。
警備隊の一員であるセザンヌも巡回警備を実施中だが、いま、彼女に危機が迫っていた・・・
<注意>
この作品は、過去作品の一部のシーンをもとに内容を”リミックス”し、生成AIによる画像・動画などの生成物と、筆者による文章との組み合わせによって作成したフィクションです。
実在の人物や団体、出来事とはまったく関係がなく、現実世界を描いたり、影響を及ぼしたりしようとする意図は一切ありません。
逃亡者
ごくわずかに陽光の残る薄暗い夜の住宅街を、銀色に光る1台の特捜車が、ゆっくりと走っている。その低速ぶりからは、走行するというよりも、慎重に周囲の様子を確認することを目的としている、そのような意図がうかがえる。
夕食どきも近い時間帯の住宅街であるにもかかわらず、立ち並ぶ家屋からは、人の気配がまるで感じられない。
ところどころで屋内から漏れる明かりが見て取れるが、明かりの背景として欠かせないはずの生活音は、一切聞こえてこなかった。
今からさかのぼること数時間前、この地域において、不審な宇宙人の潜伏が疑われるとの情報が、住民自身から多数寄せられはじめていた。
情報を整理した地球警備隊によって、直ちに、近隣一帯に厳戒態勢が敷かれることとなった。生活音が聞こえないのは、付近の住人ほぼすべての避難が完了しているからだ。
住民から多数報告された宇宙人の容貌に関する情報をまとめ、分析すると、98%の確率で、逃走中の”銀河囚人”であるとの判定が下された。
銀河連邦が配布している、ポスターを模した指名手配データとの類似性も、多く見られるようだった。
この広大な宇宙の中に、多数存在している生命体の中には、われわれ人間と同様、善意を持って行動する者もいる一方で、残念ながら罪悪に手を染める者も、一定数存在する。
中でも、その罪悪の重さにおいてひときわ群を抜いているのが、”銀河囚人”と呼ばれる個体だ。銀河法廷において罪状が確定し、被疑生命体が”銀河囚人”として認定されると、直ちに極刑が執行されることになる。
いま、指名手配の対象となっている囚人も同様に、”銀河囚人”認定後、すぐさま、流刑地への移送が定められていた。
しかし、刑場への護送の途中で脱走に成功した囚人は、捜査網を巧みにかいくぐりながら、宇宙空間内で逃走を続けていた。
そして昨日、ここ地球へ、中でも日本へと潜入した事実が、宇宙航路トラッキングシステムにより、明らかになっていた。
セザンヌ
ここ数年、地球社会とのコンタクトを試みようとする生命体の訪問が、増加の一途をたどっている。友好的関係締結を期待して、銀河系の中心とは言い難い太陽系へと訪問する生命体群もいるが、その一方で、凶悪な犯罪を犯した者の逃亡先とされることも多い。
このような地球外生命、特に、凶悪な犯罪生命体の増加を背景として結成されたのが、地球警備隊だ。
地球警備隊には、地球をいくつかの領域に分割した区域ごとに、区域担当の支部が存在している。各支部には、パトロールをはじめとする警備任務を担当する少数精鋭の警備チームと、主に基地の管理保全などに従事するスタッフが所属している。
特に、警備チームは、宇宙生命体との接触の可能性もあり、危険と隣り合わせの重要な職務だ。
地球警備隊の日本支部、警備チームに配属されてから5年が経過したセザンヌ隊員も、緊張感に満ちた激務に身を投じ、多忙な日々を送っていた。
セザンヌはいま、囚人が発見された現場である捜査地域と、指令本部とのあいだの連絡係の役割を担っており、あたり一帯の巡回偵察を終えたところだった。
彼女は、住宅街の中心から離れた静かな場所に、警備隊の特捜車である”インペリアル1号”を停車した。
すでに陽も完全に暮れ、あたりはすっかり闇深さを増し、ヘッドライトの明かり無しでは、10メートル先を見通すこともできないほどだ。
セザンヌはいま、インペリアルに備え付けられた、本部へ直接通信可能なホットラインデバイスのマイクを持ち、本部へ状況報告を行っている。
「フルマチ、モロハシ、アマイ、ソダの4隊員は、矢島家へ行っています」
「キリシマだ。よし、わかった。引き続き警戒にあたってくれ」
警備隊長であるキリシマがそう応答する。
「了解、また連絡します」
そう言って彼女はデバイスのスイッチを切り、通信を切断した。
車内侵入
と同時に、ふと、リアミラーに眼をやる。
車内の様子を映すミラーの中、彼女の後方に、セザンヌ以外の存在が、くっきりと映しだされていた。
「・・・あっ!!」
それはまぎれもなく、捜査対象である、銀河囚人の姿だった。
囚人は、一切の音を立てることなく、インペリアル1号車内へと侵入していたのだ。
指名手配データにあったように、その額には特徴的な、まるで動物の角のように隆起した箇所があった。そして、大きな頭部の中央で、金色に輝く両目が、彼女に鋭い視線を投げている。
あまりに突然のことに、セザンヌはわずかな時間ひるんだが、すぐに態勢を立て直し、行動に移る。
ふだんの訓練で幾度となく繰り返したように、すばやく、再び目の前の本部ホットラインマイクを手にすると、スイッチを入れた。
デバイスを手にし、電源ボタンを押すまでのわずかな時間、囚人から眼を離していたセザンヌが、ふたたびミラーに視線を戻す。
すると、ミラーの中にいたはずの囚人の姿が、忽然と消えていた。
とまどうセザンヌは、ふと、真横に、何かの存在の気配を感じ取る。
空間移動能力を持つとも言われている囚人は、その情報どおり、一瞬のあいだに、助手席へと移動していた。
囚人はいま、セザンヌの真横で、金色に光る両目を彼女に向けていた。
次の瞬間、囚人の額にある角の部分が、その目と同じく、金色に輝き始める。
輝く頭部から放出される、金色の粒子のような物質が、複雑にからみあい、網状にも見える形をつくりながら、彼女のほうへと近づいてくる。
やがて金の網は、彼女が着ている警備隊ユニフォームのあちらこちらに貼り付きはじめた。
ぴったりと身体に付着し、金色に輝く網は、やがて、まるでスポンジに染み込む液体のように、少しずつ彼女の身体の中へと溶け込んでいく。
目まぐるしく起こる事態を理解できず、囚人から放出され、自らの身体の上で輝きを強めていく光の様子にしばらく眼を奪われていたセザンヌは、ふと我にかえると、本部に対して緊急事態を伝えるべく、マイクに向かって叫び始める。
だがそのとき、身体に貼り付いた光のみならず、彼女の両眼も同じ金色へ染まり始めていることに、彼女は気づいていなかった。
「本部へ報告!本部へ報告!!
現在、インペリアル1号内において、ぎ・ん・・が・・・し・・・・・・」
報告は、最後まで果たされることなく、中断された。
いま、セザンヌは、報告の中途で、まるで時間が止まってしまったかのように、眼と口を大きく開いたまま、マイクを持ち、静止していた。
その眼の中には、何層かの、金色の光輪が生まれていた。彼女の身体に、金の網が溶け込むにつれて、彼女の両眼からも、まばゆい光が放たれ始めている。
「1号!1号!応答せよ!何があった!」
本部で応答したオペレーターの、切迫した声がインペリアルの車内に響く。だが、いま、その声に応答する者は、誰もいなかった。
意識制圧
セザンヌの身体に染み込んだ金色の網目は、細胞レベルで彼女の体内全体に拡がり、わずかな時間で、彼女の意思をも制圧しつつあった。
しばらくすると、セザンヌの身体と両眼から、金色の光が輝きを弱めはじめ、やがて完全に消えた。
セザンヌはマイクを握ったまま、それまでと同じく、眼と口を開き、うつろな表情を浮かべ、前方を見つめている。
彼女の身体へと溶け消えた光を引き継ぐかのように、隣に座っている囚人の目が、わずかに光を強める。
すると、止まっていたセザンヌの口が、再び動き始めた。
「・・・なんでも、あり、ません。いちごう、いじょう、ありま、せん」
まるでロボットのように無機質な抑揚で、セザンヌはマイクに向かい、応答する。
いや、”応答する”というよりはむしろ、身体の中に入り込んだ彼女以外の意思の力が、スピーカーのように彼女の声帯を震わせ、声を外部へと出力させている、そんな表現のほうがふさわしかった。
「了解、また何かあれば報告をよろしく」
本部オペレーターがそう答えて、通信が切断される。
だがセザンヌは、変わらずに大きく眼と口を開き、何をするでもなく、ただマイクを持ったまま、前方を見ているだけだった。
再び囚人の目が光ると、セザンヌは無言でマイクのスイッチを切り、続いて通信装置を含む車内設備一式の主電源をオフにした。これでインペリアルに対する通信が遮断されるとともに、その位置を追尾することも難しくなる。
やがて、また囚人の目が強く光りはじめる。
身体をピクリと反応させたセザンヌは、無表情のまま、インペリアルのエンジンをかけ、発車させた。
セザンヌが運転するインペリアルは、住宅街を離れ、飲食店などでにぎわう一帯を通過したあと、人里離れた山中の奥深くへと向かっている。
囚人は、人間の多い場所に入り込んだ際に備えて、いま、自らの身体を半透明の状態に変化させ、カモフラージュを図っている。
眼を凝らして見れば、肉眼でその姿を見ることも可能だが、夜間の闇の中では、非常に見えづらくなる。
ときおり、セザンヌの意識へ指示を与えるためだろうか、その頭部で輝きを増す金色の光が、まるで中空に浮かぶ燐光のように見えていた。
逃亡計画
囚人は、住宅街に潜伏していたわずかな時間のあいだに、日本の防衛能力に関して、膨大な知識を獲得していた。もちろんその中には、地球警備隊の知識も含まれている。
このように追い詰められた状況においては、相手の持つ防衛能力そのものを逆に利用し、混乱させ、包囲網を切り崩すことが、逃亡を成功させる最適な手段である。囚人は、過去の経験から、そのように理解していた。
囚人はいま、自らの力によって完全に精神を支配され、特捜車の運転にのみ意識を集中させている、この地球人を利用し、宇宙空間へと脱出する構想を描いている。
しかし、そのためにはまず、宇宙船を手に入れなければならない。囚人の空間移動能力には距離的な限界があり、星空を超えることができないからだ。
幸いなことに、この地球人の意識内から、警備隊とやらの基地内に、宇宙航行可能な戦闘機が停泊中であるとの情報は得ている。
あとは、どのように入手するか、それを考えればよい。
簡単なことだ。
物言わぬ囚人の思考が活性化するとともに、その目と角とが、あざやかな金色に瞬き始めていた。
(続)
#催眠術 #催眠 #洗脳 #MC #マインドコントロール #ImageFX #生成AI #ウルトラシリーズ #ヒロイン #ピンチ