心を動かされる珠玉のサントラ盤(1):「チャイナタウン」(ジェリー・ゴールドスミス)
40年以上前からサントラ盤の収集をしています(最初はLPレコードでした)。サントラ盤には劇中の主題歌や挿入歌を集めたコンピレーション・アルバムが多いですが、私は「ドラマティック・アンダースコア」が好きで、そういうサントラ盤を集めています。
「ドラマティック・アンダースコア」とは、映画の中のアクションや、特定のシーンの情感・雰囲気、登場人物の感情の変化などを表現した音楽のことで、「劇伴(げきばん)音楽」と呼ばれたりします。
これから私のお薦めのサントラ盤を毎回ご紹介していこうと思います。
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チャイナタウン CHINATOWN
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
(米Varese Sarabande / VSD-5677)
ジェリー・ゴールドスミス(1930~2004/アメリカ、ロス・アンジェルス生まれ)は、ハリウッドを代表する映画音楽作曲家の1人で、私がもっとも尊敬する映画音楽作曲家だった。
そのゴールドスミス自身が最も気に入っているスコアの1つで、彼に7度目のオスカー・ノミネーションをもたらした傑作スコアが「チャイナタウン」である。
1974年の作品。監督は「ローズマリーの赤ちゃん」や「フランティック」「死と処女」などで知られるロマン・ポランスキー。1930年代のL.A.を舞台に、ジャック・ニコルソンがダッシェル・ハメット/レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に出てきそうなプライベート・アイ(私立探偵)に扮する。この手のフィルム・ノワールには付きものの悪女、いわゆるファム・ファタールをフェイ・ダナウェイが強烈な存在感で演じた。ロバート・タウンによる脚本はオスカーを受賞。ジョン・ヒューストンやハワード・ホークスの古典的作品とはひと味違う、独特の雰囲気を持ったハードボイルド・ミステリだった。
しかし、なんと言ってもゴールドスミスの音楽が素晴らしい。冒頭のトランペット・ソロにピアノ、ハープ、パーカッション、ストリングスで演奏される極めて美しい「Love Theme」から一気に作品世界に引き込まれてしまう。ドライでありながらもセンチメンタルで、クールでありながらもエモーショナルといった感じの不思議なタッチの音楽で、今聴きなおしてみるとこの作曲家の天才的な音楽センスに改めて感服する。しかもこの作品は既に別の作曲家によって書かれていたスコアが土壇場になってリジェクトされて急遽ゴールドスミスに依頼があったものらしく、作曲から録音までの全ての作業をわずか10日間でこなしたという。
ゴールドスミスは同じ時期に「パピヨン」「風とライオン」「オーメン」といった全く異なるタッチの傑作スコアを残しており、この「チャイナタウン」の音楽も彼の才能の1つのピークだった時期に書かれた代表作と言えるだろう。映画音楽史上に残る名盤。
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素晴らしき映画音楽作曲家たち
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