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アタシが離婚した理由 ≪12≫

カサンドラの憂鬱


言われるがまま、夫に電話をかけたが
繋がらない。
そこで初めて狼狽えた。
いつから使えないのだ?

履歴の最後は半年前。
刑事に、そう告げると
怪訝な表情をしたが、すぐ察したようだ。
家庭内離婚状態であることを
話したからだ。

刑事たちは示し合わせて出て行った。

悄然とした廊下。

カチャ。
ドアの開く音に振り返る。
自室で息を潜めていた娘が
眉根を寄せて佇んでいた。

平常心で
今日を過ごせるだろうか?
保てるだろうか?
ちらっと休もうと思ったが
いつも通り化粧をして
いつも通り出かけて仕事をした。

帰宅後、着信に気が付いた。
朝の刑事の一人と
思われる人だった。

朝と同じことを聴かれる。

2022年にカードは返し
財布は別々だったこと。
生活費として数万円受け取っていたが、
滞る事が多かったことなど。

こういうとき、必ず言われる。
「奥さんが家計の管理していたんですよね。」
暗に責任の一端は妻にあると言いたいのだ。
いや、
責任は全て妻にあると決めつける言い方だ。
「私が管理していたとしても、
できることは限られています。
夫の口座に私は何の権限もありません。」

刑事は一瞬沈黙した。

近くで取り調べが行われているのだろうか。
夫がわめき声が、聞こえた。
何をわめく必要があるのだ?
パイプ椅子に腰かけ
腕を組み、脚を広げて
ふんぞり返っているのだろう。
やっぱり夫は頭がオカシイ。

「ご主人はしばらく帰れません。」
「まだわからないことがありますから。」
そこで電話は終わった。

家に夫を絶対入れないと
覚悟したその日の夜、
アタシは夫の所持品整理を始めた。

ギャンブル依存症などで困っている人は、
自ら借金をできなくすることができる。
ただし本人と法定後見人のみ。
家族、配偶者でもできない。

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