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アタシが離婚した理由 ≪11≫

カサンドラの憂鬱


信号待ちで大型バイクが
通り過ぎたとき
そのライダーが
夫じゃないか?
と思ったことがある。
その勘は当たっていた。
ずいぶん後に、
夫のバイク購入を
人づてに知った。
バイクは高価そうな
アクセサリーが
装備されていた。

深夜の電話は訃報と
決まっているが
早朝のドアチャイムも、
ろくなことがない。

2023年9月某日(月)
午前06時20分
ピンポン!ポンポン!
ドアチャイムが
苛立たし気に鳴った。
尋常じゃない。

インターホンに出ると
受話器の向こうの人が言った。
「東○○警察署の者です。」
はっ!とした。

ドアを開けると5人の男性が
立っている。
大学生風が2人。
30歳代から50歳代の人が3人。
いずれも私服だった。
向かって右側の人が
アタシに令状を見せた。
そんな紙はテレビドラマでしか
見たことが、無い。
確かに裁判所と書いてある。

夫の名前と「窃盗」という文字も。

「着替えていいですか?」
アタシは白地に
チューリップ模様の
ぺらっぺらの寝巻しか着ていない。

一旦閉めてから
急いで着替え、ドアを開けた。

私服刑事達は
ベッドの下や
クローゼット内の郵便物
書類をくまなく調べた。
蒸し暑い朝だった。

「奥さん、旦那は?」
「もう、会社へ行きました。」
「こんな早くに?」
キツい物言い。
疑っている。
アタシが妙に落ち着いているし
庇っていると思ったのだろう。

「電話して帰ってくるように言って。」
「絶対警察がいるとは言わないように。」

でも、かけた電話は
「この電話は現在使用されておりません。」
の、アナウンスを
繰り返すばかりだった。


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