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アタシが離婚した理由≪4≫

夫が入院した時、
義父母が見舞いに来たか
来なかったか。
記憶が定かではない。
でも、言われたことは憶えている。
「借金を返したらきれいさっぱりだから」
「全部忘れて仲良く暮らしてね」

起こったことは消えない。
日常の些細なことは忘れることができても、
このことは、忘れないだろう。
でも、「はい」と言うしかなかった。

夫に代わって現金自動預け払い機で
返済する。
心を無にして紙幣を機会に突っ込む。
見返りのない支払いは
ドブに棄てるのと一緒だ。

夫の車いすを押しながら
何度も衝動に駆られた。
このまま、階段から突き落としてやろうか。

その後、見舞いに来てくれた同僚が
こっそり打ち明けてくれた。
夫がポトリと呟いたというのだ。
「俺なんかあのとき、死ねばよかった」

本当に反省しているみたいだから、
許してやってよ、俺からも頼むよ。
友人は、そう言って帰った。

義父母から老後の資金をむしりとった。
結局返すことなど、できなかった。
孝行することも叶わないまま、
二人とも逝ってしまった。



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