アタシが離婚した理由 ≪8≫
2020年1月
夫は定年を迎えた。
定年後も嘱託で働いていた。
新型コロナウイルスのニュースが
出始めた頃だった。
退職金が入金されたとき、
アタシは戸惑った。
定年を迎える前に、
退職金のことを話し合う機会があった。
夫から言ってきたのだ。
そのとき、半分は一時金、
残りは年金にすることに決めたはず。
なのに、全額振り込まれていた。
アタシの意見はいつも反故にされる。
相談されたと思っているのは、
自分だけなのだ。
夫は大人しくしているだろうか?
心の底に溜まっている澱が
ざわざわと揺れた。
あればあるだけ使いたい。
無ければ、借りてでも使いたい人なのだ。
このころから、
夫は週末頻繁に
飲みに行くようになった。
金曜日の夕方、
帰宅すると夫はすでに外出している。
バスルームは使用済み。
ムスクとシトラスの残り香が
充満している。
アタシの脳が混乱する。
香りがどうしても、夫と結びつかない。
2度ほど朝帰りした。
3度目は許さなかった。
雨が降っていたが
夫の布団一式と服を
玄関先に放りだし、
ラッチにした。
明け方、がちゃがちゃうるさく
謝っている声が聞こえたが
無視した。
ご近所の目など、どうでもよかった。
不可解なことが、
もう一つあった。
家庭内離婚状態だったのに、
夫から宅急便で
誕生日プレゼントが届いたことがある。
合わない枕と、ツボ押しグッズだった。
年末にも、ハムの詰め合わせが届く。
同じ家に住んでいるのに、
なぜ?
わざわざ?
宅急便で??
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