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市町村税について気をつけたいこと及びその他の細かい話

市町村税は賦課徴収方式が多い

 税金の種類の分け方として、申告納税方式の税金と賦課課税方式の税金というものがあります。申告納税方式で代表的なのは個人所得税と法人税でしょう。所得税は毎年確定申告なり年末調整なりをして、自ら税額を計算し、その税額を納めます。サラリーマンだと源泉徴収されるのであんまり意識しないかもしれませんが、保険や医療費を申告して還付金をもらうのも立派な申告納税です。法人税も決算期に決算書を作成し、自ら法人税額を申告してその額を納めます。いずれも国税ですから、国は国民自ら申告してこいやという税金の仕組みを主にとっている訳です。
 一方で、賦課課税方式というのは、役所の側が勝手に税額を計算し、その額を納税者に通知して払えと言って寄越す方式です。代表的なのは固定資産税で、土地建物の価値の見積もりなんかは役所が行い、税額まで計算して毎年通知書を送ってきます。県や市などの地方自治体の税金はほとんどがこの賦課課税方式と言って良いでしょう。
 ここで私がお話したいのは、賦課課税方式の税金についてです。実のところ、税理士の先生なども申告納税については非常に細心の注意を払って申告書などを作成されるんですけど、固定資産税の数字なんかは所与の数字として扱うことが多く、「本当に合ってるの?」というとこまでは見ないこともあります。
 皆さまご承知のとおり、市町村の役所の職員というのは完全無欠とは程遠い(つまりわたしたちと同じ)人間でありますから、ミスは当然あります。賦課課税方式という税額の計算の全ての過程をその人たちに任せてしまっている訳ですから、その結果については一度疑ってみるのも良いでしょう。以下では一番身近な市町村税について、気を付けた方がいいところ、一度は確認した方がいいところなどを述べたいと思います。

固定資産税


 一般的な一戸建てにお住まいの方が確認すべきものは、住宅用地の特例がきちんと適用されているかどうかです。毎年どこかの街でこの特例適用が漏れていたのでで税金を還付したという内容の新聞記事が地方版に載ったりするのを見たことはないでしょうか。つまり、結構往々にして適用漏れがあるということです。この住宅用地の特例は200平米以下の住宅用地(小規模住宅用地)であれば固定資産税を6分の1に、都市計画税を3分の1にするというもので、固定資産税都市計画税をトータルで見ると大体4分の1くらいに税額が収まる感じです。これはかなり大きい金額で、例えば2、3万くらいで済んでいたはずの税金を10万近く請求されることになります。大損です。住宅用地の特例が適用されているかどうか納税通知書に記載があるはずですからどうぞ一度確認してみて下さい。見方が分からなければ電話するなり役場に聞きにいくなりすれば教えてくれるでしょう。
 さて、ここから特殊なケースも見てみます。先ほど200平米以下であればと申しましたが、これは住宅一件あたりということです。そしてアパートやマンションなどの独立した生活環境のある建物の場合、その部屋を住宅一件と数えます。実は二世帯住宅(入口からもう世帯ごとに分かれているような物件)も住宅二件分と数えられます。ですから、200平米以上の土地をお持ちの方で、そこに二世帯住宅を建てている方や、あるいは敷地内にもう一つ家がある場合(例えば自分の家と他に息子夫婦の家を新しく敷地内に建てたとか)は、200平米×件数分、小規模住宅用地が適用になる訳です。ちなみにそこからはみ出た分は一般住宅用地といって固定資産税は3分の1に、都市計画税は3分の2になります。このように小規模住宅用地と一般住宅用地では納める税金も変わってきますから、特に農家のような自宅敷地が広い家などでは、息子夫婦や娘夫婦のために家を建ててあげるということもありましょうから、200平米×件数分小規模住宅用地が適用になっているかどうかについては良く確認しておいた方が良いでしょう。小規模住宅用地の適用「件数」についてまでは、多分納税通知書に書いていない場合が多いようですから、役場に尋ねてみるのが良いでしょう。
 さらに特殊なケースを上げますが、老人ホームに土地を貸している、あるいは土地を取得して老人ホームを経営されている方々にご注意願いたいことがあります。先ほど述べましたとおり、アパートも一部屋を一件と数えますので10部屋あればなんと2,000平米まで小規模住宅用地が適用になります。そして通いではなく完全に住む形の老人ホームなども、このアパートなどのように独立した一部屋とされれば小規模住宅用地の適用を受けられる訳です。これが漏れると、その土地その土地の価額にもよるので一概には言えませんけども、まあ相当な金額を余計に課税されてしまいます。風の噂では、とある市町村は老人ホームを経営する法人に数千万円もの金額を還付したケースがあったとか無かったとか。ご自身が貸している、あるいは経営している老人ホームが小規模住宅用地の適用可能な構造の建物なのかどうか、そしてもしそうなら実際の課税できちんと適用されているかどうか、これはご確認なさった方が良いでしょう。
 ところで、税金の時効は5年というのはご承知だと思いますが、これは徴収権においてのみならず還付の対象としても5年です。民法上の債権と異なり、税の消滅時効は特段の主張や手続きなしに機械的に5年で成立します。ですから、5年以上間違えて多く取られていたにも関わらず、税の還付としては5年分のみ返還となります。ただし、これは自治体によって扱いはまちまちでしょうが、国家賠償法で訴えられた場合を想定し、言ってみれば内規のようなものを作り、それに応じて20年分まで返還するというケースもあります。もういつから間違えていたのか分からないような長期間の案件ですと、自治体によっては裁判が嫌なので最初からバンザイして20年分返してくるところもありますし、税の時効は5年だ文句あるなら裁判上等というところもあるでしょう。
 さて、さらにマニアックな話で恐縮ですが、税の還付金には利息が付きます。税を滞納した場合、延滞金がついてくるのと丁度逆のパターンで、役所の方で延滞金をつけて返してくれるということです。で、還ってきたもとの税金は、払う必要のないものが還ってきたわけですから所得税上収入とはみなされないでしょうが、この延滞金はどうなのか。雑所得とかに計上しなくてはいけないのだろうか。私、税務署にお勤めの方にそのあたり聞いてみたことがあるのですが、お住まいの税務署に確認しないと確固としたことは言えないとのことでした。ですから、還付金に利息がついてきた場合などは確定申告の際どういう扱いになるのか、税理士さんなどを通してもいいので、所轄の税務署に念のため確認しておいた方が良いでしょう。

 これは余談ですが、私が聞いたところでは、固定資産税の土地に関する問い合わせがで特に多いものが二つありまして、一つ目は何の心当たりもない(つまり、買い増し、増築、建替えなど)のに税金がかなりの金額上がっている、というもの。この原因のほぼ99パーセントが、新築住宅に対する減額措置期間が終わったためです。建物の構造によってその期間や条件が異なるので詳しくは市町村のホームページなどでご覧いただきたいのですが、例えば木造一戸建ての建売住宅を買った場合は、買った翌年(買ったその年度は課税されませんので)から3年間建物の固定資産税が半額になります。そして4年目の納税通知書を見て、びっくりする訳です。役所からすれば元の金額に戻したというところですが、払う側からすれば急に税額が上がったように見える訳で、驚くのも無理はありません。ただ、建物の価値というものは年と共に落ちていきますから、税金もまたそれに応じて減っていきます。建て増しや建て替えをしない限りは、その時以上建物分の税金が上がることは無いので安心して良いでしょう。
 二つ目は、何故手放した土地建物の税金を払わなければならないのか、というものです。地方税法にありますとおり、固定資産税は1月1日が賦課期日となっておりまして、要するに1月1日に所有者であった方がその年度分の税金の支払い義務を課されるということです。ということで、年の途中で土地建物を売って手放しても、次の年の1月1日まではは課税上所有者が切り替わらないということを意味します。ですから理不尽な感じはしますが、もう持っていない不動産の税金をその年度分は払う必要があるということなのです。もっとも、不動産屋の仲介なんかが入ると、その年の固定資産税を日割り計算して売り手と買い手で帳尻がつくようお金のやり取りをするそうですが、そうであっても役場の関知するところではないので、請求自体は元の持ち主に行くことになります。

軽自動車税


 軽自動車税は固定資産税とは違い、4月1日時点で役場に登録のある方が納税義務を負います。3月31日までに廃車の手続きをすればその年の税金はかからない訳です。それで、お気をつけ頂きたいのは、現実にはもう手元にないあるいは物理的に存在していなくとも、登録が残っている以上はその人が所有していると「みなす」ということです。この「みなす」というのは法律上よく出てくる言葉ですけれども、実際のところ行政に非常に強力な権力を与えている言葉です。現実がどうあれ、行政からこうと「みなさ」れてしまえばそちらが真実となってしまうからです。ですから廃車の手続きというものは確実に行わないと、4月1日を過ぎてから「もう知り合いに譲った」とか「事故でぐちゃぐちゃになったから捨てた」とか主張してもまず通らないでしょう。
 余計な出費を避けるためにも面倒でも手続きはしましょうということにつきるのですが、以下余談ながらこういうこともあるという話をしましょう。
軽自動車にも色々ありますのでここでは原付ということで話をします。乗らなくなった原付をそこらのバイク屋とか廃品回収とかに売ったとします。対応した店の人は廃車手続きはこっちでしておくから大丈夫だよ、というので安心してそのままにしておくと、翌年何故か軽自動車税の納税通知書が届く。こういうことはあります。バイク屋だか廃品回収だかの人が廃車手続きなど知ったこっちゃねえとばっくれてしまうというのは、残念ながら実際にある話のようです。この場合は改めて自分で廃車手続きをして来年以降の課税を止めるということになりますが、無論のことながらその年の税金が免除されるということはありません。悪いのは嘘つき業者ですけれども、原付の税額ごときで裁判なんか起こしても現状では馬鹿を見るだけであります。怪しい業者にバイクを渡すのは止めておくか、廃車手続きは自分でするか、きちんとしたバイク屋とだけ付き合うとか、対策を取った方が良いでしょう。
 もう一つ、原付をパクられた時です。言うまでもないのですが、すぐ警察に盗難届を出してください。これは公的な記録になりますので、そのタイミングでの廃車手続きを忘れていて4月1日を迎えてしまっても、ワンチャン話を聞いてくれる可能性があります。課税が取り消されるかどうかまでは無論断言しかねますので、ご承知おき下さい。ただ、ごちゃごちゃ言う前に「盗難届は出したんですけど」、とい言えば恐らく役場の担当者の態度は変わるはずなので、面倒くさいのは理解しますが盗難届だけは出しておきましょう。

市町村民税


 これは余り気を付けても仕方がないです。何故なら、役場の人間は税務署から年末調整や確定申告の書類を借りてきて入力しているだけだからです。何か間違っていたら、それは所得税の申告が間違っているということになりますが、その場合も修正申告を税務署に出せばいいだけです。まあ無理に何か言うならば、課税通知書の所得の部分とかが身に覚えのある数字がどうかだけさっと見ておけばいいような気がします。
 余談ですけども、勤めの方は大抵所得税と一緒に市町村民税も天引きされていると思います。この場合は役場は会社に請求をかけるということになりますが、この会社が滞納していた場合個人の納税証明書はどうなるのでしょうか? 私気になって自分が住んでいる役場に聞いてみたところ、「天引きされている以上会社側が役場に納付していなくても証明書は出す」とのことでした。全国の市町村が同じ対応かどうかは分かりかねますのでご参考に。ま、自分が勤めている会社が税金を滞納しているかどうかなんて会計担当とかでないと分からん話ではありますが、こういう話もあるということで。

 以上賦課課税方式に関して気を付けた方がいいところなどについて余計な話も交えつつお話しました。お手元についた納税通知書について、どんな下らないことでも何か気になったら問い合わせすることを私としてはお勧めしたいです。意外とそこから間違いが判明するということは、現実にあることです。言われたまま払うのでなしに、自分で確認してみるのも大事なことではないでしょうか。以上です。